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住宅団地 記憶と再生 №34 [雑木林の四季]

20.デツサウのツオーバーベルク団地Siedlung Zoberberg (06847 Dessau-Roβlau〕 1

       国立市富士見台団地自治会長 多和田栄治

 2019年はバウハウス設立100周年にあたり、デッサウに「バウハウス美術館デッサウ」が9月9日に開館した。9月初めにベルリンに行くので、デッサウまで足をのばし、新美術館を見学し、近郊のツオーバーベルク田地を訪ねる予定をしていた。開館日の混雑をさけて翌10日に出かけた。ベルリンからマルティン・ルターの町ヴイツテンベルクで乗りかえデッサウまでは約1時間である。
 デッサウは旧東ドイツ、いまはデッサウ・ロシュラウ市、人口8万人をこえザクセン・アンハルト州第3の郡市である。エルベ川とムルデ川の合流点に近く、ベルリンとライブツイヒの中間地点にあたる。デッサウは中世から開け、18世紀の啓蒙君主の治世、「ヴェルリッツ庭園王国」Gartenreich Dessau Worlitzの造営など由緒ある歴史をもっている。20世紀にはいってはユンカース、航空機とエンジン、ガス工業の軋工業が栄えて町は発展し、
1925年にバウハウス造形学校がヴァイてルから移ってくる.。しかしバウハウスは、1931年にナチス党員がデッサウ市長につくと32年に閉鎖された。ナチス政権の戦略的要衝であったデッサウは、第2次大戦で空爆の標的となり、破壊しつくされた。
 戦後、工業の復興は多くの労勧者を必要とし、人口増に対応して住宅建設は最優先の課題となった。1980年代から低コストのプレハプ工法によって、伝統的な建築様式などはかえりみず高層の団地建設がすすめられた。
l80年代末まで工業も人口も上向き値向にあったが、ドイツ統一後は反転、工業は衰退、町の主要企業は倒産、転出がつづき、大量の雇用を失った。雇用の喪失は人口減少をうながし、空き家を生みだしたばかりか、地域コミュニティを崩壊させる,。都市の「縮小」と「再生」という困難な課題に向きあわざるをえずザクセン・アンハルト州は、10ページに書いた1BAエムシャーパークと同様に、2002年にlBAザクセン・アンハルト事業をはじめることを決め、州開発公社とバウハウス・デッサウ協会が協衝した。都市縮小・改造計画の検討と提案がつづけられた。デッサウ・ロシュラウ市の具体的な縮小政策は「東の都市改造」プロジェクトを中心こ展開された。その象徴ともいえるヅオーバーベルク団地の一部撤去は2013年に指定された。
 片やバウハウス美術館デッサウの新設は、市にとっては画期的な「都市再生」のモニュメントといえよう。
 そんな経緯は、デッサウ駅に降り立って感じたわたしの第一印象にはすくには結びついてこない。壮大なアンハルト劇場を右に見てアントアネット通りをすすみ、木立ちにかこまれた市立公園に接して建つ完成したばかりの新美術館に着くまでの短い間、整然とした美しい街並みに目をみはるばかりである。,わたしにとっては文献上の記憶でしかないが、しかしここ15年間の郡市改造の進展に思いをいたすとき、感銘はずっと重いものとなる。
 新美術館は外面すべてガラスのカーテンにおおわれて何の装飾の類もなく、まわりの公園、市街の全景を映し出しているだけである。心おどらせ入ったが、チケットは人手できなかった。入館は1時間に150人のみ、本臼分は売り切れとのことであった。残念、、またいつの日かを期して、つぎの予定、近郊のツオーバーへルク団地にむかった。トラムでユンカース・パーク行き、デッサウ駅から約15分である。l断っておくが、わたしがツオーバーベルク団地に関心をもったのは、もっぱら服部圭郎「ツオーベーベルク団地(デッサウ)の撤去事業の関する研究」(『明治学院大学産業経済研究所年報』第33号/2016年)に〉負っている。以下に書くのも、筆者の許しを得ないで借用し紹介しながら、わたしの見聞をくわえたものである。
 市は2013年に「東の都市改造」プロジェクトの対象地区を数か所指定し、地区ごとの戦略(マスタープラン)を策定した。そのコンセプトは、、A維持優先、B維持、C更新優先、D更新、E経過観察、F安定地区に分類される。A:安定的にこ維持することが重要、さらに改修、近代化すべき地区、H:安定化を図るべき地区、C:撤去を優先させ、跡地はランドスケープ・ゾーンを形成する地区、D:修繕、再開発などをしたが問題は解決されず、将来的に撤去の検討もする地区、E・F:制作的干渉も対策もしない地区である。ツオーバーべ凡クはC地区に指定された。
 このプロジェクトは、さきに書いたとおり、2012年から16年までの時限的な施策でその後とうなっているか調べていないが、空き家率の高い戦後建設団地の撤去にあたっては費用の半分を連邦政府が、軍律半分を州政府が負担する施策メニューである。

『住宅団地 記憶と再生』 東信堂


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