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地球千鳥足Ⅱ №43 [雑木林の四季]

マツタケ狩り奥義
       小川地球村塾村長  小川律昭

 毎年八月末にはコロラドにマックケ狩りに行きたくなる。趣味といってしまえはそれまでだが行きつけになって六年に及ぶ。
 降雨量の影響で全然採れない年もある。今までのところ確率は五十%である。にもかかわらず、その時期が来ると行きたい衝動に駆られるのは何故だろう。青年時代、田舎で秋になるとキノコ狩りに行っていた。種々のキノコを採ったがマツタケは一回だけだった、あの見つけた時の快感が今でも脳裡に残っていて、郷愁も含めて忘れられないからだと思う。探ったものを食べることにはそれほど興味はない.

 この地のマックケ狩りの出は、海技二〇〇〇メートルぐらいの唐松林の中である。実際、一人で山に入って探し出すのだが、湿地で別のキノコが生えているような場所にマツタケも生えるのだ。もちろん、コロラド駐在のマックケ狩り大先輩から教わったから言えることだ。時期は八月終わりから。暑かった夏の気温が下がって摂氏一九度ぐらいになってから生え出す。
 山に入れば二時間をめどに探すのだが、ただ下を見て歩いているだけではそう簡単に見つけることは出来ない。まずありそうな場所の選定から始める。直径二五センチぐらいの松ノ木の周辺一・八メートル以内の乾燥した場所か、小さな尾根を形成しているところを地面をなめるようにじっくり探すのだ。日当たり確率四〇%の場所がいい。一本見つかればその周辺四メートルに渡ってリング状に点在して生えている。木の根元にもたまにはある。後はしゃがみ込んで根気よく見つけ山すことである。初めの一本を見つけるのがポイント、それは地面の松葉がこころもち膨れ上がっているところ、その松葉の下をかき分けると鎮座まします。大きく膨れ上がったところは別のキノコだ。よくよく見れば松葉がなくても地面が割れている箇所にもある。地面三~六センチと結構深いところにあるから、キノコの周辺を掘らないとうまく採れない。
 山は下から登って行く方が見つけ易い。下からだと透かすように見上げられるから膨らみもわかり易いし、大きなマックケなら傘の裏が見える。だが大抵虫が入っており、茎も柔らかくて駄目だ。だがその周辺をなめるように探すことに意義がある。一本あればそれが呼び水と思えばよい。必ず沢山あるはず。誰も採っていないところなら一箇所で十~十五本はかたい。
 次のポイントは鹿の糞がかたまってあるところ。松ノ木周辺に彼らが掘った後の穴があいている。ヤツらは匂いで嗅ぎ分けているから間違いはない。その困りを探すことである。最後に人が円周状に採取した後に、遅れて生えたものを前述の要領で狙う。この場合多くは望めぬが二、三本なら探れる。結論として松ノ木の下、この辺で一休みしたいようなところ、キレイで木陰から日もさし、小尾根のある乾燥した斜面に生える確率が大きい。

 いずれにせよマックケ狩りは山をドンドン歩くのではなく、地面を透かし、なめるようにゆっくり歩いて、落ち葉上の膨らみを見つけ出すことである。男性より女性の方がゆっくり歩くし集中力があるから向いているかもしれない。ここにはマツダケが必ず生えているのだ、という信念を持つことが大切である。
                    (二〇〇一年九月)
『万年青年のための予防医学》 文芸社

 

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