SSブログ

住宅団地 記憶と再生 №30 [雑木林の四季]

18.ベルリン・ヘラースドルフ地区の団地 Berlin-Hellersdorf

      国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

●ヴーレタルWuhletal駅から

 メルキッシェス・フイアテルが旧西ベルリンの大団地の代表とすれば、旧東の代表には「へラースドルフ団地」があげられる。
 2010年の10月15日、団地再生の好例として紹介されている団地をこの目で見たくて、へラースドルフ駅にむかうU5バーンに乗った。外を眺めているともう何駅も手前から緑のなかに高層の住棟が連続して見えはじめたので、あわててヴーレクル駅で下車した。へラースドルフ駅の4駅も手前である。団地の所在を予めよく確かめずに来てしまったのが失敗だった。進行方向にむかって駅の左前方、歩いて数分のところに団地がひろがっていた。団地のなかで「ここはへラースドルフか」と聞くと「そうだ」という。団地の名称を聞いても、けげんな顔をして答えてくれない。行政区はたしかにへラースドルフだが、これが団地名ではなさそうだし、固有の団地名が必ずあるとは限らない、と思えてきた。団地内のすべての通路には通り名があり、玄関ごとに番号があるのだから、それだけで住所表記は十分である。団地名はないのかもしれない。団地の入口近くに「住宅建設組合ヴーレタル」WG Whletal e.Vの建物があった。
 あとで調べたら、この組合は旧東ドイツのベルリン、ケムニッツ、ノイブランデンブルク、シュヴェーリンの建設企業の連合体であり、1980年代に3,000戸余りの住宅をへラースドルフ地区に建設し、企業本社の所在地名を建設した居住地区の名にしている。わたしが歩いたのは、ルートヴィヒスルスター通りとパルヒマ一通りがかこむ「シュヴェーリン住区」であった。近くのヴーレ川沿いは緑の回廊になっている。
 外壁は白色か薄茶色を基調にした、まだ新しく見える、すてきな団地である。駅に近い住棟は5階建て、奥にむかって高層化、といっても6~7階建てである。ベルリンでは団地の計画的なリノベーションが90年代にはじまっている。ここでも玄関口やバルコニーの改修と塗りかえ、エレベーターの追築などの工事が施されている。その後さらに改修、近代化が進められている。
 団地内を歩いていて、どの住棟も長大であることが気になった。その後グーグルマップでみると、内側の何棟かが工事中のようだったし、いまその区画=公園になっている。撤去されたのであろう。
 寮内については知る由もないが、外観上の改修工事を一部この団地でも見ることができた。団地の中央に4階建ての住宅管理事務所があり、管理窓口で喫茶店も経営し、かなり大きな建物のなかは会議室やクラブ活動のための部屋などになっている。
 ここにいても「へラースドルフ団地」行きに気がはやり、早々とこの団地に別れをつげ、へラースドルフ駅にむかった。ただし、ここでは地理的にヴーレタルに接したカオルスドルフ・ノルトへの訪問記を先にしるす。

●カオルスドルフ・ノルトKaulsdorf-Nord駅から

 カオルスドルフ・ノルトもよく聞く地区だから、2019年にベルリンに来たさい9月7日に訪ねてみた。U5バーンのヴーレクル駅のつぎである。駅の両側に5~12階建ての住棟群がせまっている。
 ヴーレタルとカオルスドルフ・ノルトとは、居住地区がつながっていて境界があるわけではなく、歩きはじめた地点はちがうが、9年前と同じところまで足を延ばしていることに気づいた。団地の風景も、思いだせば似ている。そのはずである。この地区とヴーレタルは、旧東ドイツの同じ各都市の建築家たち(おそらく労働者も)が担当し、建物とその配置、空間のデザインに覇をきそったと記されている。住棟ブロックそれぞれに個性的ではあるが、光景は両地区共通の印象をうける。まえに来たときよりも色彩的にいくらか鮮やかに感じるのは、9年のあいだに団地の改修が進んだせいかもしれない。
 カオルスドルフ・ノルトは、ツェツイリエン通りをはさんで南北に、第1区と第2区にわかれ、1979年から86年にかけて、3~5室のアパートがそれぞれ5,486戸、2,050戸建設された。1区には、保育園6、幼稚園11、学校6、ショッピング・センター3、レストラン5のほか社会施設があり、2区にも各種施設が設立されている。建設されてベルリン市区に引き渡され、管理(所有)は複数の半ば公的な組織に託されたのであろう。わたしが歩いたのは、ギュルツオヴェル通りとリリー・ブラウン通り界隈であるが、この辺りはシュタット・ウント・ラント(都市と土地)社Stadt und Land Wohnbauten GmbHが管理している。
  住棟はどこもほぼ5階から、高くて12階建てで、正方の中庭を大きくコの字型、あるいはL字の組み合わせ型にかこむかたちで建てられている。駅近くは11~12階住棟が建ち並ぶ。ある12階建て高層住棟はl階が住宅ではなく事務所、集会所などに共同使用されている。その先には、5~6階建てがつづく。
 5~6階建てには明らかに改修の跡がみられる。エレベーターの付設とバルコニーの拡張である。当初エレベーターはなかったのであろう。いまではすべての住棟の階段ブロックごとに1・5メーター四方の赤褐色のボックスが付設されている。表玄関脇が多いが、裏口側への付設もみかけた。バルコニーの改造はすべての住棟ではなく、おそらく住民合意にたっした階段ブロックごとに施工されているのだろう0バルコニー枠を増築し、張り出させてロッジア風に改造し、居住面積の拡大にもなっている。

『住宅団地 記憶と再生』東信堂



nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。