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地球千鳥足Ⅱ №39 [雑木林の四季]

遺書 (The Last Will)

       小川地球村塾村長  小川律昭

 日本も同じであるが死亡した本人の預貯金は、全部支払い停止となりその人の資産として差し止め、後ほどの遺産相続の対象となる。ところでアメリカでは、遺産相続決定権は死亡した本人にある。だからすべての資産を国が差し押さえ、負債と相殺してから、法律で定められた控除分相応を差し引き、その資産額に応じて、国が相続税を徴収することになる。その後において、残りの資産が遺産相続の対象となる。遺産の分配方法については日本とは異なり、すべて遺書により分配が決定される。遺書のない遺産は相続先まで迷いに迷って、見つからない場合、最後は国に没収される。日本では法定相続人、一等親から二、三等親にその相続権があり、その割合も決まっているから、黙っていても法律が相続人を決めてくれるのだが。

 アメリカに住んでいると、遺書は必ず書いておきなさい、とよく言われる。万一死亡した場合遺産のほとんどがなくなってしまうらしい。遺書が書かれてないと配分までこぎつけるのに、代理人の費用が大変な額で請求されるからだそうだ。もともと死亡した本人が相続税を払うシステムだから、その手配は専門家ロイヤーに任される。国の法律の複雑さをよいことにして、その手続きをすることで色々な手数料を取るようだ。遺書がないと、相続権は誰か、資産の売却管理人がいないからどうするかなど、何かとロイヤーにお願いするしかないというわけだ。ところが、遺産譲渡関連の遺書があれば、手続きが簡単で済むということらしい。遺族が日本から行き来しても様子がわからないので、ロイヤー任せとなる。法定相続人が資産の権利を主張するには、関連の資料を英文で提出しなければならず、これまた期間と経費を積み重ねることになる。

 最近、危険といわれるカラカス(ヴエネズエラ)に行くことになり、ちょうどよい機会であると思いロイヤーを呼んで遺書を残すことにした。遺書には三人の承認と遺産の管理執行人がいるので、隣家のカシュースキー一家にも臨席してもらい無事The Last Willを完成した。ロイヤーは隣家の知人なので気楽なムードだった。日本の遺産はこの遺書には含まれない。
 余談だがこの程度の資産では遺書を必要としないと、はっきりとではないがロイヤーに言われた。遺書を作るにしてはチト資産が少なかったようだ。小さな家と僅かの貯金だけだから。聞くところでは約八〇万ドルまでが控除の対象であって相続税はかからない。ただそれはシティズンであって外国人にはどうかな。まあ、やっておくに越したことはないだろう。

『万年青年のための予防医学』 文芸社


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