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海の見る夢 №66 [雑木林の四季]

     海の見る夢
        ―ピエター
                  澁澤京子

 わたしはあなたの行いを知っている。あなたは、冷たくも熱くもない。むしろ、冷たいか熱いかどちらかであってほしい。熱くもなく冷たくもなくなまぬるいので、わたしはあなたを口から吐き出す。・・ヨハネ黙示録3:15~

 イスラエルの攻撃が始まってから、SNSを毎日見ているが、イラク戦争の時と比べ、会話が成立しない人々が大幅に増加した。イラク攻撃のころはまだ、「私はアメリカを支持する。なぜなら~」の三段論法で自分の立場をきちんと説明できる人間が多かったので会話ができたが、ひたすら「テロリストを擁護しているのか?」とか「中立じゃない、偏っている」などと他人に文句をつけるだけで自分の意見や立場を述べず、会話というものが成り立たない人が増えた。あるいは、「ひっしですね」「頑張ってますね」などと上から目線で茶化してみたり、どういう人だろう?とプロフィールを見ると日の丸や神社の写真などが掲げてある。いずれも「人間のクズ」を連発する日本保守党(百田尚樹代表)及びその支持者の自称保守の人々が多い。AでなければBと決めつける単純な図式しか頭になく、パレスチナの停戦を求めれば、即ハマス=テロリストの擁護と決めつけるのである。(イスラエル政府を批判し、親パレスチナで、かつ反ユダヤではない)という立場が彼らにはどうも理解できないらしい。

「・・熱くもなく冷たくもなくなまぬるいので、わたしはあなたを口から吐き出す」・・かつて一度も何かに夢中になったこともなく、一度も真剣に怒ったり反対したこともない「なまぬるい」人間が増加したような気がする。そうした(何をしたらいいのかわからない)人々が、トランプや日本保守党に、まるでカルト宗教にはまるようにはまってしまうのかもしれない。

居ても立っても居られない気持ちでイスラエル大使館の抗議デモに参加。地下鉄の麹町駅を出たとたん、すごい警備でこの風景は既視感がある、そう、集団的自衛権のデモに参加した時もこのようなものものしい警護だった。デモの参加者より警備の警官の人数のほうが多い。平日の昼間のせいか、参加者は私と同年代の中高年~高齢者か、あるいは学生のような若者。若い女の子が多く、しかも賢そうな美人が多かったことも一言書き添えておく。

国会で、パレスチナ情勢について鋭く突っ込んだ大石あきこ議員(れいわ)といい(この動画はアラビア語、スペイン語、英語などに翻訳されて瞬く間に世界中に拡散され何百万回も再生され称賛されたが、同時に大石あきこ議員にヤジを飛ばした自民党のおじさんも世界中に広がった・・)、イスラエルとの関係を断つバルセロナ市議のアダ・コラウ氏のスピーチといい、国連で見事なスピーチをしたパレスチナ大使の女性、そしてエジプトの女性ジャーナリスト、仕事を失うのを恐れず抗議したアンジェリーナ・ジョリー・ケイト・ブランシェット、スーザン・サランドン・・今回、とにかく勇敢で、頭の切れる女性が目立つのは、やはり圧倒的に子供の犠牲数が多いせいだろうか。

現時点(11月25日)、パレスチナで殺された子供の数は8176人。(欧州ヒューマンライツより)休戦のあと、イスラエルがまたどれだけパレスチナ人を殺戮するのかと思うと本当にやりきれない。

ツイッターにはあらゆる映像が流れてくる。自分の子供を探して瓦礫をトンカチで掘り続ける父親、白い布にくるまれた小さな亡骸を抱いてうつむく母親、亡くなった小さな娘を抱きしめる父親、両親を失い、自分も片足を失った小さな女の子の笑顔、爆撃の衝撃でバラバラになってしまった子供の遺体を抱きしめて病院を夢中になって走る父親・・そうした正視に堪えないガザの映像を次々とみているうちに、不謹慎かもしれないが、人間はなんて気高くて崇高なんだろう・・と一種の感動すら覚えたのである。ミケランジェロの「ピエタ」がなぜあんなに美しいのかやっとわかったのである。

人は「死」が身近な極限状況の時に、最も神に近い崇高な存在となるのだと思う。


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