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地球千鳥足Ⅱ №31 [雑木林の四季]

マグロは渡った世界の架け橋
  ~パナマ共和国~ 

      小川地球村塾塾長  小川彩子  
 

 2012年の春は大変体調が悪く、めまい、転倒、頭痛、腰痛に悩まされていた。心配してくれた人々の中で「1か所に停滞し過ぎたのね。貴女はマグロのように回遊していないと病気になるのよ⊥と言った友人の言葉に暗示をかけられ、体調不良を引っ提げてママヨとパナマへ出かけた。「お前はマグロだ」と自らに言い聞かせて。道中めまいでフラフラ・ダンスをしつつも、頭痛もなく転倒もせず無事帰国できた。
 地球上最大の土木工事だったと言われるパナマ運河は、ご存じ、アメリカによって施工され、1914年に開通、富が流入して米国は潤った。20世紀末に多くの施設と共にパナマに返還され、返還後今年で12年目だ。運河は富を斎し景気は上々、現在拡張工事に忙しく、泥を掻き上げていた。道路も至る所工事中だ。「パナマは世界の架け橋、宇宙の心臓です」とタクシーの運転手フレディー君は胸を張り、「2年後にもう一度来てください。地下鉄が完成し、道路工事もきれいに終わっていますから」と続けた。パナマのタクシーにはメーターがないが、フレディー君は「日本がパナマで色々助けてくれた」と言っていつも安くしてくれた。パナマ運河は、太平洋側と大西洋側の間にあるガトウン湖の海抜が高いため他にも人造湖を造り、閘門(こうもん)を開閉して水位を上下させ船舶を通過させるシステムだ。船が来ると水門を開け、船を誘導して水門を閉め、プール状にして水を入れ水位を高め、船を持ち上げて通過させる。私は観光船に乗って実体験したが、世界の大型船が目の前で運河を通過して行った。この国では米ドルがそのまま使えるので旅行者には便利だ。
 チヤグレス川をモーターボートで遡上し原住民のエンベラ村を訪問した。自給自足の村で、男性はビーズでできた短い腰巻の上にふんどしを着装、男女でダンスを披露してくれた。提供された魚のフライと揚げバナナはとても美味だった。入村料は25ドルと高いが観光には不慣れな様子、観光業者にかなりぼられているのでは?と心配した。奇遇もあった。オハイオ州の中学生(11~15歳)の修学旅行団と一緒になったが、引率の校長先生はシンシナティの住人で、「生徒に国際体験させるのが目的」と語っていた。この村の小学校も訪問した。少人数の2クラスに立派な先生が2人いて、スペイン語で行儀よく授業を受けていた。
 パナマシティの重要な歴史地区、パナマ・ビエホはスペインが太平洋岸で最初に築いた都市の遺跡で壮大な廃墟だ。繁栄した都市を想像しっつ、一人で歩けば楽しかろう。この地をスペインの植民地としたバルボアの名を冠したビールでも飲みながら。このパナマ・ビエホは1519から1671年まで繁栄した都市だったが、海賊ヘンリー・モーガンに襲われ、首都は旧市街、カスコ・ビエホに移った。ここはコロニアル建築が並びまるでスペインだ。近年訪れたコロンビアのカルタヘナと相似のバルコニー付きの家が並ぶ。「ああ、カルタヘナと全く同じだ!」と叫んだらフレディー君、「当たり前ですよ。カルタヘナとほぼ同時に同じスペインが作った街なんですから」。美しい街並みは世界遺産だが、スラム化した地域が隣接しており、フランス広場からパナマ湾を見下ろした後、早々に引き揚げた。ガラス張りの展望デッキから運河沿いの風景やジャングルを楽しめるパナマ運河鉄道にも乗ってコロンまで。この鉄道はパナマ運河着工以前の1855年に開通、太平洋と大西洋を結ぶ連絡路として輸送に役立ったが、運河に役目をとって代わられ今は観光客集めに必死だ。
 暗示で体調不良を治してくれた友人は脳外科医以上の名医だったが、私も「動き続けているほうが健康だ」と自覚した。フラフラと千鳥足でマグロダンスをしながらも、六大陸を繋ぐ七つの海を死ぬまで回遊し続けるぞ!
                   (旅の期間‥2012年 彩子)

『地球千鳥足』 幻冬舎



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