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郷愁の詩人与謝蕪村 №12 [ことだま五七五]

春の部 9

      詩人  萩原朔太郎

うぐひすや家内揃(そろ)ふて飯時分(めしじぶん)

 春の日の遅い朝飯。食卓には朝の光がさし込み、庭には鶯うぐいすが鳴いてる。「揃ふて」という言葉によって、一家団欒だんらんのむつまじい平和さを思わせる。

鶯(うぐいす)のあちこちとするや小家(こいえ)がち

 「籬落(りらく)」という題がつけてある。生垣(いけがき)で囲われた藁わら屋根の家が、閑雅に散在している郊外村落の昼景である。「あちこちとする」という言葉の中に、鶯のチョコチョコした動作が、巧みに音象されていることを見るべきである。同じ蕪村の句で「鶯の鳴くやあち向むきこちら向」という句も、同様に言葉の音象で動作を描いてる。

鶯(うぐいす)の声遠き日も暮れにけり

 春の暮方(くれがた)の物音が、遠くの空から聴きこえて来るような感じがする。古来日本の詩歌には、鶯を歌ったものが非常に多いが、殆(ほとん)ど皆退屈な凡歌凡句であり、独り蕪村だけが卓越している。

『興趣の詩人与謝蕪村』 青空文庫



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