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住宅団地 記憶と再生 №17 [雑木林の四季]

12.ブリッツの大団地(馬蹄形団地)GroBsiedlung Britz(Hufeisensiedlung)(Britz.Fritz.Reuter-Allee,Husung,Onkel-Braisig-Str.u.a.12359Berlin)


       国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

 アレキサンダー・プラッツ駅からU7で約30分、パルヒマーアレ一駅を地上に出ると眼前にブリッツの大団地(馬蹄形団地)があらわれる。公共交通の駅に近く、歩いてもすぐというのは、ここだけではなく世界遺産の6団地すべてに共通している。アクセスの便もユネスコ評価のポイントの一つであったにちがいない。
 この地はベルリンの南東部にあたる。1924年にベルリン市が大団地の建設にのりだし、資金援助を決定すると、ゲハーグ社はブリッツの旧騎士領の土地を購入し、25年から30年にかけて29ヘクタール余に1,963戸を建設した。設計はブルーノ・タウトとマルテイン・ヴァグナ一、屋外設計はレベレヒト・ミッゲである。ベルリンはもともと沼地に発達した都市であり、タウトはブリッツの原生の地形と自然を活かし、真ん中に池のある大きな窪地をめぐって馬蹄形に住宅建設をし、その特徴を団地名にした。
 まず目につくのは、城塞のような長い建物。パルヒマ一通りと交差して南北にはしるフリッツロイター通りに沿って西側に、屋根裏部屋の見える3階建て、鮮やかな赤褐色の建物が城塞のように、一駅手前のブラシュコアレー駅近くまでつづく。その距離1キロメートルはあろう。その中間に途切れて蹄鉄の開口部にあたるところが団地の入口になっている。入口から見下ろす窪地が大きな中庭となって、両端から白亜の3階建て住棟が馬蹄形に円弧をえがき、団地のシンボルとしての威容をしめす。その西には、団地第3の象徴、「ヒューズング」と呼ばれる東西に長い菱形の庭園を型どって2階建て連続家屋が並んでいる。団地を取り巻く大通り沿いと馬蹄形の建物はすべて平屋根の3階建てアパートあるいは3階建て住宅の連続住棟、その内側を含める2階建て長屋は、出窓のある三角屋根で、各戸に個人専用の庭がついている。
 断っておくが、わたしが見て回ったのは、パルヒマ一通りとフリッツロイター通りにかこまれた、馬蹄形住棟と菱形庭園のある区画だけで、記述もかぎられている。世界遺産には、これら両通りの反対側にある2区画もふくまれる。

 赤いフロント
 フリッツロイター通りに面した3階建てアパート住棟は「赤いフロント」とか「チャイナの城壁」と呼ばれている。建物からは30はどの階段塔が張りだしていて城塞を思わせ、血の色にも似た外壁からも、なにか挑発的な感じをうける。1920年代のドイツでは、さきにシラーバルク団地の平屋根にかんして引用したタウトの証言にあるように、建築の保守とモダニズムをめぐる抗争は激しく、論争の域にとどまらなかった。現にタウト設計の馬蹄形団地とまったく同時期に、しかも通りの反対側に保守派のエルンスト・エンゲルマンとエミール・ファンクマイヤー設計のドイツ住宅設振興協会DeGeWbによる団地建設が進められていた。「赤いフロント」は、タウトのこれに対決する鮮烈なメッセージ、建築近代化のデモンストレーションだったとし痺れると、そうかもと思えるが、学術上の証明はないようだ。

『住宅団地 記憶と再生』 東信堂



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