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郷愁の詩人与謝蕪村 №9 [ことだま五七五]

春の部 6

        詩人  萩原朔太郎

菜の花や月は東に日は西に

 これも明るい近代的の俳句であり、万葉集あたりの歌を聯想れんそうされる。万葉の歌に「東の野に陽炎かげろうの立つ見えて顧かえりみすれば月傾きぬ」というのがある。

菜の花や鯨くじらも寄らず海暮くれぬ

 菜種畠なたねばたけの遠く続いてる傾斜の向うに、春昼の光に霞かすんだ海が見え、沖では遠く、鯨が潮しおを噴ふいてるのである。非常に光の強く、色彩の鮮明な南国的漁村風景を描いてる。日本画よりはむしろ油絵の画題であろう。

菜の花や昼ひるひとしきり海の音

 前と同様、南国風景の一であり、閑寂かんじゃくとした漁村の白昼まひる時を思わせる。

『郷愁の詩人与謝蕪村』 青空文庫


           

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