SSブログ

郷愁の詩人与謝蕪村 №6 [ことだま五七五]

春の部 3

          詩人  萩原朔太郎

春の海終日(ひねもす)のたりのたりかな

 だれも知ってる名句であるが、のたりのたりという言葉の音韻が、浪なみの長閑(のどか)な印象をよく表現し、ひねもすという語のゆったりとした語韻と合って、音象的に非常に強く利いてるのである。

橋なくて日暮れんとする春の水

 こうした春の郊外野景を描くことで、蕪村は特殊の画才と詩情とを有している。次の句もまたこれと同題同趣である。

春風や堤つつみ長うして家遠し

 この句は「春風馬堤曲(しゅんぷうばていのきょく)」の主題となってる。春風馬堤曲は、蕪村の試みた一種の新しい長詩であって、後に紹介する如く、彼のポエジイの最も純粋な主題的表現である。


『郷愁の詩人与謝蕪村』青空文庫


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。