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私の中の一期一会 №268 [雑木林の四季]

日本中を沸かせたサッカーW杯カタール大会
~クロアチアに敗れた日本代表、折り鶴と「ありがとう」の紙を残して~

           アナウンサー&キャスター  藤田和弘

 今、カタールで行われているサッカーW杯で日本代表は、決勝トーナメント1回戦でクロアチアにPK戦の末に敗れ、目標だったベスト8に一歩及ばなかった。
 1次リーグでコスタリカには敗れたが優勝経験のあるドイツ、スペインを相手に共に逆転勝ちして、グループ1位で難関を突破した。
 この結果を予像できなかった人も多かったに違いない。
 ドイツとスペインに勝利したことで、世界中から集まった報道陣やサポーターたちは口々に「ジャパン・グレイト」とか「ヒストリカル・ウインだ」と日本代表に声を掛けたという。
 長年の間、ドイツ人指導者が数多く来日して日本サッカーを育ててくれただけに、ドイツに勝ったことは「大番狂わせ」であり、恩返しであった。
 技術、経験、ボール支配力に優れるドイツやフランスに“勝とう”と思うなら、日本は守備に重点を置いたサッカーをするしかなかったという。
 だが、堂安律、浅野拓磨、三苫薫という逸材がいたので、後半に勝負をかけることが出来た。
 決勝トーナメントのクロアチア戦も1-1の同点で延長を戦い、PK戦で惜しくも敗退した。
 ベスト8が目前だっただけに悔しい敗戦であった。
 森保監督は「勝たせてあげることが出来なくて申し訳ない」と自身の力不足に触れつつ「ベスト8という新しい景色は見られなかったが、ドイツやスペインという世界のトップの国とも互角に渡り合っていけるという素晴らしい景色を選手たちが見せてくれた。」と振り返った。
 まだまだ世界に学ぶべきものは多いが、「追いつくだけ見上げるだけではない、“追い越すという本気のマインド”に選手たちが変えてくれた」とも語っていた。
 日本代表26人のうち19人が初代表で、多くの選手がヨーロッパ・リーグでプレーしている。
 ビッグチームと対戦しても気後れしないメンタリティの変化があったのは確かだろう。
 キャプテンの吉田麻也、インテルミラノでレギュラー経験のある長友佑都を中心に、守備力の高い富安健洋、攻撃的な堂安律、三苫薫らが持てる力を発揮したのは、日本代表が新たなステージに進んだことを示している。
 強豪国に対してもかなりの程度“守れる”ことは分かったが、勝つためにはもっと点を取る力がなければならない。
 攻撃的なパスを繫いで相手を崩すサッカーが今後の課題なのではないか。
 勝利したドイツ戦のボール保持率は24%、スペイン戦は17%で如何にも少ない。  
 守備で耐えて勝つ戦い方には“もどかしさ”があり、弱者の戦法だと言われる。
 W杯カタール大会で世界の予想を大きく覆したと言われる日本代表だが、勝利も紙一重だった。
 ドイツ戦もスペイン戦も相手に先制を許している。
 前半にもう1点追加されていたら、どうなっていただろうか・・
 森保監督は前半を無失点でというゲームプランだったようだが、いずれもプラン通りにいかなかった。
 日本の粘り強い守備力は評価されたが、今後はボールの保持力を高めことが必要になってくるのではないだろうか。
 FIFA(国際サッカー連盟)が「W杯4日目にドイツに歴史的な勝利を収めた後、日本のサポーターはスタジアムのゴミを掃除した。日本代表もロッカールームをきれいに掃除し,ゴミ一つないようにしてスタジアムを後にした。ロッカールームのテーブルに「ありがとう」と書かれた紙と折り鶴がおかれていた」とツイートして“日本人の素晴らしさ”を話題にしたという。
 2014年のブラジル大会で、日本が1-2でコートジボワールに敗れた時も日本人サポーターはスタジアムのゴミ拾いをしたが、この時は「清掃を職業としている人たちの仕事を奪った」と批判された。
 日本には“飛ぶ鳥後を濁さず”という諺があり、居た場所をきれいにして去ることは美談でもないが、世界中の多くの国には好印象を与えているようだ。
 サッカーW杯ほど国中が熱狂するスポーツが他にあるだろうか
 あまり点が入らないスポーツなのに、サッカーほど多くの国で人気が高いスポーツは他にない。
 バスケット、ベースボール、ラグビー、バレーボール、などのボールゲームは特定の地域や国に人気が片寄っている。
 サッカーはボールさえあれば、男でも女でもすぐ取り組める。
 貧しい国でスパイクが買えなくても裸足でボールを蹴ればいい。
 制約は手を使えないだけ(ゴールキーパー、スローイングは手を使う)
 FIFAには209の国と地域が加盟しているから、必然的に競技人口も多い。
 W杯はサッカーを国同士が高いレベルで戦う大会だ。
 国別の戦いで、4年に1度“世界一”を決める大会としてが開かれる。
 FIFAには209カ国加盟しているが、W杯に出られるのは32カ国に絞られる。
 だから、出場が決まっただけで、国中が大騒ぎになるのだ。
 サッカーは1点を争う競技とも言われているので、往々にして格上を倒すことが起こる。
 今大会の日本がドイツや、スペインに勝ったように・・
 一体誰がこんな結果を予想できたか・・というような事態がW杯では良く起こる。
 現地のスタジアムで熱狂的に応援するサポーターばかりでなく、にわかサッカーファンも加わってテレビの前で勝てば歓声を上げ、負けたら涙を流すのだ。
 1978年、W杯アルゼンチン大会の時、私はブラジルのサンパウロで日系移民の取材していた。
 ブラジルの試合がテレビで中継されると、サンパウロの商店街は開店休業になった。
 取材を中断してレストランに入ったが、誰ひとり注文を取りに来なかった。
「ブラジル、ウン!」(ブラジルが1点入れたぞ!)と店の外に出て絶叫する人があちこちに出現した。
 ブラジルが勝った日の夜は、サンパウロ市内は夜中まで大騒ぎ、車に何人も乗ってプカプカパーパー、狂喜乱舞だった。
 サッカーファンはとにかく“熱い”のである。
 日本のサッカーが世界一になる日はくるのだろうか。
 いつの日か、東京の渋谷交差点や大阪の道頓堀界隈などが狂喜乱舞の人で溢れる。
 かつてサンパウロで見たような光景・・・今はまだ夢だ。


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