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地球千鳥足Ⅱ №12 [雑木林の四季]

足元から見たアメリカ文化 その一

      小川地球村塾村長  小川律昭

「家の鍵貸します、ピアノをどうぞ」
 ここシンシナティで、ワイフがピアノを練習したいと隣のスーザンに尋ねたところ、スーザンの友人が「どうぞ家のピアノを使ってください」と申し出たという。ワイフが知らない人でぁる。その友人は留守勝ちなので「留守中にいつでもどうぞ」と家の鍵を貸してくれた次第。
 見知らぬ外国人に、自分の家の鍵を誰が渡すでしょうか。いくら仲の良い友人の紹介でワイフの信用に不安なし、とはいえ、常識では考えられないこと。日本では多分誰も貸さないであろう。まして外国人などに。
 この親切、何が彼女をそうさせるのか。やはり信仰心だろう。困っているものに手を差し伸べる習慣は、宗教に根ざすとしか考えられないではないか。
 お陰でワイフは過三回無償で使わせてもらっている。留守番には犬と猫がいる。犬のココはピアノのそばで寝ながら聞いているが、ワイフがつっかえると、目を開けてジツと見つめるそうだ。「どうしたの?」と言いたそうに。
 それにしても度量の大きい人に巡り会えて幸せであった。

シンシナティで暴動
 このシンシナティが日本のニュースになるのだから驚きである。旧市街、三十八万都市で黒人による暴動が起き、商店の奇襲奪略が始まって夜間外出禁止、非常事態宣言が出された。
 原因は警官による若者の射殺だったそうだ。この国では疑わしきは殺されるようだ。
 過去七年間で十五人の里人が同様な被害に遭ったという。暴動も然るべくして起こった結果なのだろう。ニュースは世界を走る時代、日本からはすぐにEメールで安否や注意を呼びかけてくれた。
 ここはダウン・タウンより北方、車で二十分のところ、平穏で通常と何も変わらなかった。が、EメールでUC(シンシナティ大学)から「午後六時から大学はクローズ」との知らせがあった。万全を期してのことか。このシンシナティ、毎年、全米で住み良い街ベスト3に挙げられる。シアトル、ピッツバーグとトップを競っているというのに。住み良い街の条件は環境、物価、治安なのだ。
 事件の根源はやはりアメリカの悩み、人種差別にありそうだ。警察官の七割は白人だというが、ここの警察官のもの言いは特別だ、ということを我々夫婦も経験している。

ステイタス
 よくアメリカはディグリー社会と言われる。日本人に学歴、学閥による差別意識があるのならアメリカは学位社会、最終ディグリーたる博士号は人の態度をかなり支配する。今回、歯科での一現象を紹介しよう。
 歯医者との会話中になんかの拍子からワイフがドクター・ディグリーを告げたら、途端にゴム手袋をはずして握手を求めてきたのにはビックリした。歯医者と患者の関係にドクターの称号は関係のないこと。にもかかわらず手を差し出すということは、ステイタスを持つ人には敬意を表する態度がとられるということ。
 この現象からディグリー社会のシンボルとでもいえる肩書きの威力、効果を感ぜずにはいられない。力のあるもの、学位を持つものが社会的に信頼され、それらの人たちとの交際も好まれるようだ。一方では身体障害者や老人などマイノリティーの権利拡大にも配慮されている。
 (二〇〇一年六月)

『万年青年のための予防医学』 文芸社



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