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検証 公団居住60年 №120 [雑木林の四季]

 XⅦ どこへ行く住宅政策一公団住宅居住者の生活と要求
 
   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

2.公団住宅居住者の生活と住まいの推移

 第1~10回アンケート調査(1987-2014年)の集計結果から
 公団住宅居住者が団地自治会によせる最大の期待は、家賃値上げ反対と住宅修繕の促進、住環境の整備であり、その実現のためには、まず居住者の生活実態と要望を具体的に把握しておかねばならない。各団地自治会が全世帯を対象に定期的にとりくんだアンケート調査の結果は、自治協活動を進めるうえで貴重な資料、運動の武器となり、この活動自体が居住者の自覚を高め結束を固める役割をはたしてきた。
 公団が継続家賃のいっせい値上げを最初に強行したのは1978年、第2次は83年、第3次も5年後の88年であったが、この回から「家賃改定ルール」なるものを定め、以降は値上げ周期を5年から3年に早めた。値上げ額は上限、第1次一律7,000円、第2,3次は室数により8,000~1万円とする高さであり、家賃値上げ反対運動はもりあがった。全国自治協はこうした状況のなかで1987年に第1回「団地の生活と住まいアンケート調査」を実施し、第10回調査を2014年におこなった。
 さきに第3回調査(1993年)の集計結果をくわしく紹介した。ここでは公団住宅居住者の生活実態の変化と現状をざっとみるために、第1回から第10回調査までの主要項目について全国集計の結果(百分比)とその特徴点をのべる。団地ごと、地域別に、また同じ地域でも団地の建設年代別にこまかく見ていくと、項目によっては集計数値に違い、開きもあるが、言及しない。
 調査実施団地数は初回から、約230団地、23万世帯に調査票を配布して11万世帯から回収、回収率は50%を前後している。

 世帯主の性別と年齢
 世帯主の性別は、1987年の男酎0%、女性10%にはじまって、2014年には63%対34%、10年後には女性世帯主が多数派に転じ、一人暮らしの高齢女性の増加が予想される。世帯主の年齢では、20~30歳代が40%を占め、65歳以上は7%にすぎなかったのにたいし、2014年には50歳未満あわせても15%にも及ばず、65歳以上が64%をしめ、年金世代を60歳以上とすれば74%に達する。

 家族数と人口構成
 家族数を最初にたずねた1993年には、4人、2人、3人の順でそれぞれ23~28%を占めたが、2014年では2人家族が39%、1人住まいはこの間に10%から37%に増え、4人家族は28%から5%に激減している。人口構成では1987~2011年間に、20歳未満が34%から8%に減少、65歳以上が5%から50%へ、70歳以上38%と驚異的な高齢化の進行である。

 世帯収入
 世帯収入は、第6回調査までは総務庁貯蓄動向調査、第7~8回は総務省統計局「家計調査・貯蓄負債編(勤労者世帯)」、第9~10回は同「家計調査・家計収入編(総世帯)」によって所得5分位にわけた。なお、第8回と第10回とでは所得分位の収入額が大きく変わり、百分比では比較できないから、両調査の収入額を併記する。第9回と第10回とでは収入額に大差はないから、第10回の収入額のみを記す。居住者の収入低下がすすみ、実態をよりリアルに把握するため第1分位階層をさらに4区分して設問し回答をえた。
 公団は市場家賃化するまでは建て前として第3分位層中位の月収の、当初は16~17%、のちに概ね20%程度を目安に家賃設定をしていた。自治協がアンケート調査をはじめた1980年代にはすでに第1分位層が30%台、第2分位層をあわせて過半数を占め、90年代末には第1分位層だけで過半数に達していたことが分かる。第2~5の各分位層とも年々減少していくのにたいし、第1分位層は速いテンポで増加し、第1~2分位層の合計はい
まや70%をこえている。
 公団・機構は5年に1回、無作為抽出による居住者定期調査をおこなっているが、とくに世帯収入の集計結果についてはきびしく非公開にしている。ただし世帯全収入についての回答は不明が50%近い。プライバシー保護がいわれているなかで自治協調査の「不明」約7%は、いかに居住者にとって家賃値上げ反対が切実なねがいであるかを語っている。

 現在の家賃額
 2014年調査の全国平均は3~4万円台、5~6万円台、7~9万円台がそれぞれ35%、35%、17%をしめし、5~9万円台が過半数を占める。建て替え団地については、7万円未満40%、7~13万円未満44%、13万円以上14%をしめす。
 家賃額は、建設年次とともに団地の所在地域によってこの数値の偏りは大きい。
 ここには参考までに、圏域別・管理開始年代別の平均家賃(2017年4月1日時点)の一覧表を掲載しておく(表略)。

 世帯収入のおもな内容
 給与所得中心の世帯が全世帯の半数を切ったのは1999年調査以降であった。2002年には38%、05年31%、08年28%、11年23%、14年19%と逓減、これに反し年金世帯は、1999年の「年金が中心」の20%から2014年の「年金だけ」の43%へと増大した。年金と給与、アルバイトと答えた世帯は23%だから、66%は年金受給世帯であり、増加の一途をたどる。

 家賃の負担感
 家賃負担感の「たいへん重い」「やや重い」世帯と「普通」世帯は、90年代をとおして40%台で折半していたが、2000年代には「普通」は20%台に半減し、「やや重い」37%、「たいへん翁い」36%、7割以上が「重い」と答cdえている。

 今後の住まい
 「公団住宅に長く住み続けたい」は90年代まで80%をこえ圧倒的多数であったが、96年調査からやや減退傾向があらわれ、それでも2014年現在も72%、「公営住宅に住み替えたい」10%を合わせると、8割以上が公共住宅を望んでいる。減退の原因は、「公団住宅に住んでいて不安に思うこと」に回答の多かった、家賃値上げや高家賃のこと65%、民営化50%、団地再生で移転強要38%などの不安が、永住希望減退や空き家増加などの原因でもあろう。

 住宅の修繕と居住性向上についての要望
 2014年調査では、従前の調査結果と同じ、たたみ床、ふすまの取り替えが第1の要望項目であることに変わりなく、高齢化や震災を反映して「浴室の段差解消」や「家具転倒防止金具の取り付け」に要望が高い。また「壁紙・クロスの張り替え」「台所等の床のきしみ・防音対策」などの要望からは、住宅設備の劣化の証だけでなく、家賃は上げるのに、何十年住んでいても畳、ふすま一つ取り替えず、市場家賃といいながら民間の大家並みの修繕もしないのかという不満の声が聞こえてくる。

 消費税について
 1989年に消費税が導入され、家賃にも課税されたが、自治協運動で非課税にさせた経緯があり、93年には3%から5%への税率引き上げが論議されていた。その年の第3回調査以来、消費税についてはつねに設問してきた(複数回答)。2014年調査では、家賃課税反対66%、税率引き上げ反対63%、食品など非課税57%、消費税廃止14%が示された。(完)

【検証 公団居住60年』 東信堂



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