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こふみ会・句会物語 №111 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり  
行くも良い良い、行かぬも良い良い……コロナ禍による在宅句会その25 
「涼し」「日盛り」「跣」「草いきれ」  

                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

幹事のすかんぽ氏から、≪令和4年8月の句会≫の案内状が送られました。

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猛暑から打って変わって東京は涼しい週末になりました。
こあみ句会8月の幹事を務めさせていただきます、すかんぽです。
どうぞよろしくお願いします。
●兼題
【涼し】朝涼・夕涼・晩涼・夜涼・涼風など
【日盛】日の盛
【跣足】跣・素足・裸足など
【草いきれ】
●投句締切
8月16日(火)〜8月18日(木)の間に、
すかんぽのこのメールに投句をお願いします。
それでは皆さま、無理無茶をせず健康第一で猛暑&第七波を乗り切りましょう。
●選句は番号と上五を明記、天句には鑑賞コメントを添えてください。
選句締切は8月23日(火)とします。

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。15名 60句

【涼し】
涼ひとつこの菩提樹の下にだけ  (一遅)
骨までも透明となり夜涼し  (虚視)
亡者との踊りも涼し風の盆  (鬼禿)
涼しい所知っているぞと昼寝猫  (弥生)
涼風や風鈴鳴らして吹いて来る  (孝多)
夕涼み父のステテコ遠くなり  (玲滴)
涼しさを握り締め乗る通勤電車  (兎子)
まなうらに残るうなじの風涼し  (なつめ)
包帯のとれた腕の涼しさよ  (矢太)
風涼し 合わせ鏡の 薄化粧  (紅螺)
三十度でも有難き夕涼み  (尚哉)
涼し過ぎ缶ビール残して山下りる  (孑孑)
人生はグリコのおまけ夕涼み  (下戸)
夕涼の空を和し行く鐘の音  (茘子)
湖涼し海賊船に時刻表  (すかんぽ)

【日盛り】
日盛りにハメルンの子ら隠れけり  (尚哉)
日盛りに傘さしてくる友のあり  (玲滴)
日盛りに バイクとばして若い僧  (紅螺)
日盛りのモノクロームを君と駆け  (すかんぽ)
日盛りの故郷つくづく老いを知る  (一遅)
日盛りの校庭のラヂオ十五日  (矢太)
日盛りや住み継ぐ家の深庇 (ふかびさし)  (弥生)
日の盛り影死す街の迷い人  (虚視)
日盛りよこの世の悪を灼きつくせ  (兎子)
日の盛子らの寝息と混ざり合ふ  (なつめ)
日の盛り葦簾の影の二人かな  (茘子)
9対1されど白い歯 日盛る  (鬼禿)
日盛りを歩むや靴紐(くつひも)かたく締(し)めて  (孝多)
日盛はケンウッドで浴びるシベリウス  (孑孑)
日盛や生物絶えて影がゆく  (下戸)

【跣】
どこまでも裸足で雲を蹴散らかし  (なつめ)
丁寧に足洗いおり旅の終わりに  (一遅)
引く波と砂がくすぐる跣かな  (弥生)
焼跡に立つ六歳の裸足なる  (矢太)
沓ぬいで素足で踏む  ペリリューの砂  (鬼禿)
去る背中裸足で追うは恋の闇  (茘子)
沖向きに素足大小海の家  (孝多)
革靴を100足潰した跣なり  (下戸)
波引きて跣足の身体傾かす  (虚視)
跣足踏み地球回してみせませう  (尚哉)
波しぶきまとう素足の白さかな  (玲滴)
素足して裸のこころおーい海  (すかんぽ)
サンダルの足洗われてゲリラ豪雨  (兎子)
赤ちゃんの 柔らかな跣足 講話聴く  (紅螺)
棒読みの笠智衆は素足だった  (孑孑)

【草いきれ】
薄れゆく記憶 あの日の 草いきれ (鬼禿)
誰が夢の跡か廃屋草いきれ  (弥生)
草いきれ道祖神の顔見ず捜索隊  (孑孑)
雑草と呼ばれて強し草いきれ   (孝多)
手つかずのふるさとの庭草いきれ  (なつめ)
ラジコンを犬と見上げし草いきれ  (下戸)
どろどろと遠き太鼓や草いきれ  (虚視)
近道のズボンに残る草いきれ  (すかんぽ)
草いきれ 瀕死の虫を 連れ帰り  (紅螺)
草いきれ私も獣(ケモノ)でありんした  (茘子)
つまづいて掌を見る草いきれ  (兎子)
草いきれ子らは漕ぎゆく獣道  (尚哉)
草いきれあえぐ背中にふりむかれ  (玲滴)
肺いっぱい無縁仏と草いきれ  (一遅)
草いきれの上をゆうゆう爆撃機  (矢太)

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●涼ひとつこの菩提樹の下にだけ(一遅)
鑑賞短文=いの1番・あまりにも出来過ぎの感ありますが、菩提樹の緑陰の涼がお見事。釈迦にあやかって 樹の下で悟りでも開かれたのでしょうか・・  (矢太)

●骨までも透明となり夜涼し(虚視)
鑑賞短文=老いの身の実感です。骨にまで響いた実感句です。(矢太)

●亡者との踊りも涼し風の盆(鬼禿)
鑑賞短文=風の盆を、亡者との踊りと捉えた視点が秀逸だと思いました。確かに盆踊りとは、そうなんですね。(下戸) 
鑑賞短文=緩やかなリズムで人々が踊る夕暮れの風の盆、景が鮮やかです  (紅螺)

●包帯のとれた腕の涼しさよ(矢太)
鑑賞短文=煩わしさ。暑さの季節ならではの開放感。やあ、おめでとう。(孑孑)

●湖涼し海賊船に時刻表(すかんぽ)
鑑賞短文=箱根か琵琶湖か?海賊船に時刻表のあるおかしみが、避暑地でのリラックスを見事に語っています。(一遅)

●日盛りに バイクとばして若い僧(紅螺)
鑑賞短文=かき入れ時のお盆に墨染の衣を膨らませて若い僧が走ります。まさに、今どき、ですね。良句をお示しいただき有難うございました。(孝多)
鑑賞短文=この季節ならではの風景。供養に向かう若い僧の漲る命の輝きを感じました。(兎子)

●日盛りよこの世の悪を灼きつくせ(兎子)
鑑賞短文=この夏も連日の猛暑に辟易する。世間では胡散臭いニュースで溢れかえり益々暑苦し日々。いっそのこと不愉快な事全てを灼きつくしてくれたらいいのにと願わずにはいられません。(なつめ)

●日の盛子らの寝息と混ざり合ふ   (なつめ)
貫主短文=まだ、クーラー等一般的では無かった頃、涼は風鈴の音だけ。
簾越しに時折り吹く風に甘い子どもの匂いが。暑いからとクーラーを強にする、味気ない世界とは無縁の世界が此処にあります。(虚視)

●丁寧に足洗いおり旅の終わりに(一遅)
鑑賞短文=素敵な句です。どんな旅だったのでしょうか、空想が広がります。
作者の思いが暖かく伝わってきます。(茘子)

●焼跡に立つ六歳の裸足なる (矢太)
鑑賞短文=長崎で撮られたという焼き場に立つ少年の写真をおもいだしました。
八月になると思い出すあの少年を詠まれたのでしょうか。(弥生)

●どろどろと遠き太鼓や草いきれ(虚視)
貫主短文=オノマトペ「どろどろ」の勝利です。聴覚と嗅覚全開。ヒトが動物的になった一瞬。(尚哉)

●草いきれ 瀕死の虫を 連れ帰り (紅螺)
貫主短文=炎天下、人が草いきれに溺れそうになるなら、小さな虫はもっとですね。作者のやさしさが伝わってきました。(玲滴)

●跣足踏み地球回してみせませう(尚哉)
鑑賞短文=これは面白い。確かに地球が回っている。素足の季語が生き生きとしています。(すかんぽ)

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≪今月のトータルの天地人≫

【天】鬼禿さん 38点
      代表句=亡者との踊りも涼し風の盆
【地】弥生さん 37点
      代表句=日盛りや住み継ぐ家の深庇
【人】虚視さん 28点
      代表句=どろどろと遠き太鼓や草いきれ
【人】紅螺さん 28点
      代表句=日盛りに バイクとばして若い僧
【人】一遅さん 28点
      代表句=丁寧に足洗いおり旅の終わりに

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≪幹事より、ひと言≫

高得点句は多くの「地選」「人選」を獲得した弥生さんの「日盛り」の句。
「や」で切れる正統的な有季定型の句がダントツで選ばれました。
トータルでの高得点者は、弥生さんを1点差でかわして鬼禿さんに。
虚視さん、紅螺さん、一遅さんが同点で3位。全体的に選の割れた接戦になりました。

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≪孝多より、ひと言≫

前回、私・孝多は、漢字を分かりやすくするために、漢字をルビ付きにする、というハナシを書きました。
作例として、山口誓子氏(男性ですよ!)の俳句を3句ばかり、そえました。面白いじゃないかと、お褒めいただいて、うれしくなり、今回は前回の延長のような「ルビ付き」のハナシです。
さて……
皆さん、よくご存知の女性・黒田杏子さんです。
●軒下に濃きすみれあり深睡(ふかねむり)
次は富沢赤黄男氏で……
●船底を牡蠣(かき)は妖しく繁殖(ふえ)てゆく
次は有馬朗人氏で……
●砂丘の女手袋ぬげば海盤車(ひとで)となる
次は角川春樹氏で……
●あかあかあかあかあかあかとまんじゆさげ
次は坪内捻典氏で……
●春の蛇口は「したむきばかりにあきました」
次は山頭火氏で……
●うしろすがたのしぐれてゆくか
次は尾崎放哉氏で……
●せきをしてもひとり
高柳重信氏も特異です。

111.jpg

素晴らしい方々が素晴らしい表記の工夫・挑戦をされておいでです。私たちも続きましょう。こふみ会という場を大切にしながら。
       令和4年8月吉日  多比羅 孝多

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次ぎの句会も在宅句会になりそうです。この間、地方に転居された会員もいらっしゃいますが、コロナ在宅句会のいいところは、遠方にいても参加できることを発見したことでした。この形はコロナが明けても捨てがたいのではないでしょうか。そうは言いつつ、コロナ禍でもたまには顔をあわせながら、コロナが早く明けることを願っています。
                            編集・横幕玲滴
                    


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