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こふみ会・句会物語 №110

こふみ会・句会ものがたり  
行くも良い良い、行かぬも良い良い……コロナ禍による在宅句会その24 
「冷麦」「喜雨」「黄金虫」「片陰」

      俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

幹事のなつめさんから、≪令和4年7月の句会≫の案内状が送られました。

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例年にないほどの酷暑続きの1週間でしたが、皆さまお変わりないでしょうか。
7月の幹事を務めます、なつめです。
スマホ一つでの対応となります故、至らない点が多々あるかと存じますが宜しくお願いいたします。
●兼題 【黄金虫】【片蔭】【冷麦】【喜雨】
●投句締切は7月12日(火)?7月14日(木)です。
●選句の締め切りは20日を予定しています。
●投句先は幹事(なつめ、尚哉)まで
それでは皆さま、エアコンを上手く使い、こまめな水分補給をお忘れなく…

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。14名 56句

【冷麦】
旅の荷もとかず冷麦茹でし日も (弥生)
冷麦や三日に一度は家風かな (下戸)
冷麦を食べきれずにいる暑い夜 (兎子)
薬味無し冷麦喉に流し込み (なつめ)
絵日記のクレヨンの指冷やし麦 (茘子)
冷や麦の喉のすべりが風を呼ぶ (玲滴)
そうめんより冷麦が好きな父なりき (矢太)
冷麦の紅一筋が箸の先 (紅螺)
冷麦畷る銃声2発ひと一生? (鬼禿)
冷麦よ存在意義を述べてみよ (一遅)
冷麦の飛沫もろとも畷リけり(すかんぽ)
せせらぎも冷麦も良し友と居て (孝多)
まあ一応言うけど俺って冷麦派(虚視)
冷麦を二束茹でて嘆息す (尚哉)

【喜雨】
喜雨となり天掴みをリ花芽かな (なつめ)
シンメトリな姿で喜雨は川に降る (矢太)
さし芽した花ありて暮雨を待つ夜かな? (玲滴)
喜雨慈雨に見放されたか熟大陸 (鬼禿)
灼熱の底をたたいて喜雨到る (尚哉)
山一つ大口開けて喜雨受くる (茘子)
牛と鳥ならんで囁くや喜雨の里 (下戸)
喉あけて喜雨のみはすやアスファルト (虚視)
書雨が来て野兎走る婆走る (紅螺)
飛び出して暮雨浴びる子の輝きて (弥生)
打ち付ける喜雨憎らしき帰り道 (兎子)
ポッと来てたちまち激しき喜雨となり (孝多)
芳しきペトリコールや暮雨来たる (すかんぽ)
喜雨という魔物か線状降水帯 (一遅)

【黄金虫】
黄金虫小さく鳴いて外は闇 (紅螺)
時々は君になりたし黄金虫 (なつみ)
夜も更けて電柱に惑うか黄金虫 (玲滴)
黄金虫骸となりても虻の色 (茘子)
黄金虫歩け歩けと肘枕 (一遅)
かなぶんぶん家族だんらん乱入す (すかんぽ)
樹洞(うろ)のそこ黄金虫(おうごんちゅう)の轟けし (虚視)
黄金虫飛んで闇夜に吸われけり (孝多)
黄金虫一寸先の闇知らず (矢太)
黄金虫夜灯の王に君臨す (尚哉)
無自覚にあおりつづけるかなぶんよ (兎子)
何事もなかったように黄金虫 (下戸)
黄金虫お前も比例に出てみるか (鬼禿)
黄金虫羽音が遠き日連れてくる (弥生)

【片陰】
片陰に道譲り合ふ傘ふたつ (尚哉)
片蔭を鳩居堂から伊東屋へ (すかんぽ)
片陰を選びてバス停までの道 (孝多)
片影の無き正午寺町無人 (虚視)
片影を拾って歩く野犬かな (矢太)
片影に一休みする忍者あり (下戸)
駅までの片陰あそぶ街オセロ (鬼禿)
犬や猫虫けらまでも片陰に (なつめ)
片影にステテコの爺過疎の街 (茘子)
片陰を行く老い猫や昼下がり (玲滴)
片蔭のようよう嬉し峠道 (一遅)
片蔭を辿った先に父母の家 (紅螺)
故郷の片影の道かく狭き (弥生)
片蔭の徴かな闇に救われている (兎子)

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●喉あけて喜雨のみほすやアスファルト(虚視)
鑑賞短文=喜雨という本来稲田の季語を、都会人の渇望として見事に生かした。(矢太)

●喉あけて喜雨のみほすやアスファルト(虚視)
鑑賞短文=暖簾に腕押し、糠に釘、そしてアスファルトに喜雨。とてものみほせない量が降ることも。(尚哉)

●山一つ大口開けて喜雨受くる(茘子)
鑑賞短文=火山だろうか、すっぽりと開いた火口に雨を受け入れる。地熱と雨の衝撃。地球活動の壮大なスケールの中で季語が光っています。(すかんぽ)

●山一つ大口開けて喜雨受くる(茘子)
鑑賞短文=スケールの大きさと、文字面の美しさで選びました。喜びがあふれていますね。(下戸)

●冷麦の飛沫もろとも啜りけり(すかんぽ)
繊細な素麺との違いが、見事に表現されています。豪快だなあ!(虚視)

●冷麦の飛沫もろとも啜りけり(すかんぽ)
鑑賞短文=豪快です。ヒマツと呼びましょうか。それともシブキでしょうか。この中七にて勝負アリ!好きなのですね。こう食べられる冷麦のほうも幸せ。良い句をお示しいただき有難うございました。(孝多)

●片影の無き正午寺町無人 (虚視)
鑑賞短文=夏の正午の無人の寺町が私の中に鮮やかに浮かびます。(弥生)

●灼熱の底をたたいて喜雨到る (尚哉)
鑑賞短文=今まで熱く乾ききった地面に叩きつけるような雨足。底を叩いてという表現が斬新で、雨足の強さ、吹き上がる風、情景が浮かぶ秀句です。(茘子)

●片陰のようよううれし峠道(一遅)
鑑賞短文=暑さのなか、ようやっとたどり着いた、浮世絵の峠の茶店を思い起こさせました。(玲滴)

●片影に一休みする忍者あり(下戸)
鑑賞短文=大笑いのお礼の天です。真っ昼間にそれとわかる装束のまま、日陰で休む忍者。およそ手練れの者ではないことがわかります。(一遅)

●喜雨という魔物か線状降水帯 (一遅)
鑑賞短文=いまTVで豪雨の映像を見ながら選句しています。今地球上の大雨突風旱魃落雷大火事・・どれを取っても『喜雨』は出てこない(鬼禿)

●片陰に道譲り合ふ傘ふたつ (尚哉)
鑑賞短文=私も同じ情景を詠みたいと思いましたが下5がでませんでした。
傘ふたつですか素敵です? (紅螺)

●黄金虫骸となりても虹の色(茘子)
鑑賞短文=死してなお、存在感を放つ黄金虫の、美しさと侘しさを感じました。
黄金虫のようになりたい。(兎子)

●何事もなかったように黄金虫(下戸)
鑑賞短文=良い時も悪い時も泰然自若。こんな句のように生きていきたい。(なつめ)

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≪今月の天地人≫

今回は天地人は、兼題『喜雨』の天地人句にも選ばれました。

天:茘子さん(45点)
  代表句=山一つ大口開けて喜雨受くる 
地:虚視さん(41点)
  代表句=喉あけて喜雨のみほすやアスファルト
人:尚哉さん(38点)
  代表句=灼熱の底をたたいて喜雨到る

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≪幹事より、ひと言≫

この度は勝手を申して一人で務めさせていただきました。
集計に間違いが無いよう、家人のPCを拝借しExcelで集計いたしました。
隣りにいる家人から「あなたはまだまだだね」と言われ落ち込み、
皆さまから届く投句に感動し、そしてまた落ち込み(笑)。
楽しく勉強させていただきました。
ありがとうございます。

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≪孝多より、ひと言≫

友人から、言われました。
キミの所属するこふみ会って、変わっているね。
投句した自作がみんなに読めない、分からない、そんなことでは困る。だから、漢字にルビを付けて読みやすくする。そんな普通のことが、こふみ会では“ご法度”な行為と、みなされる。
えっ、ホント? むずかしい漢字にルビ(読み仮名)をつけるのがホントにダメなの? ホントです。
というのですから、変わってる。
こふみ会は「ヨコ書き句会」ですから、ルビを付けるとすれば、たとえば、マルカッコに入れて、下記のような表記になるでしょう。
? 『〇〇〇〇や 〇〇〇〇〇〇に 東風(こち)吹かん』
 『文身(いれずみ)に 〇〇〇〇〇〇の 〇〇〇かな』
 『〇〇〇〇ぞ 〇〇〇〇〇〇に 哭(な)くを聴(き)け』
名調子!!と叫びたくなりました。
それなのに何故ルビはいけないのか。ご法度なのか。
ルビ禁止の『事のおこり』は何だったのか?? いつ頃からなのか? みんなで調べたり、考えたりするのも悪くないと、私・孝多は思っています。皆さん、如何ですか。
勿論、短冊や色紙の室内装飾品や外国の美術品などとの関連性も考えながらです。
投句の世界を広げましょう。

一時代をリードして1994年に亡くなった山口誓子氏には、たくさんの「読み方ルビつき」の句があります。いいですね。
●夏の河赤き鉄鎖のはし浸(ひた)る
●住吉に凧揚げゐたる処女(をとめ)はも
●せりせりと薄氷(うすらひ)杖のなすまヽに

       令和4年7月末日     多比羅 孝多


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