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検証 公団居住60年 №116 [雑木林の四季]

XⅦ 第2次安倍内閣の公団住宅「改革」の新シナリオ

    国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

1.都市機構改革の閣議決定(2013年12月24日)
 2012年12月16日の衆院選で民主党は大敗、政権が交代した。第2次安倍内閣は発足早々の翌13年1月24日、前内閣の「公団住宅分割・特殊会社化」方針を当面凍結し、それ以前に決定していた改革案をひきつづき検討し、改革にとりくむことを決めた。それ以前の改革案には、第1次安倍内閣の「税制改革推進3か年計乱にはじまり、つづく福田、麻生両内閣が「改定」「再改定」した計画がある。
 この方針にもとづいて行政改革推進会議に独立行政法大改革等に関する分科会が設置され、そのもとで第4ワーキンググループが都市機構改革の検討にあたった。10月11日の第4WGの初会合で稲田朋美行革担当大臣は、「今回の検討を、第1次安倍内閣で着手して以来の“改革の集大成”としたい」とのべた。会合は8回ひらかれ、12月18日に報告書をまとめた。2013年12月24日に「独立行政法大改革等に関する基本的な方針」が閣議決定され、都市機構については賃貸住宅事業を標的に、第4WGの報告事項をそのまま指示した。
 〇 東京都心部の高額賃貸住宅(約13,000戸)は2014年度から順次、サブリース契約により民間事業者に運営をゆだね、将来的に売却する。
 〇 定期借家契約の活用等により収益性が低い団地の統廃合の加速をめざし、「賃貸住宅ストック再生・再編方針」にもとづく具体的な実施計画を2014年度中に策定する。
  〇 募集家賃は2014年度から機動的かつ柔軟に引下げ・引上げをおこない、継続家賃は引上げ幅の拡大、改定周期の短縮など15年度中に家賃改定ルールの見直しをおこなう。低所得の高齢者等にたいする家賃減額措置は、公費で実施することを検討し、14年度中に結論を得る。
 〇 関係会社がおこなう賃貸住宅の修繕業務について、2014年度からの3年間で13年度比10%のコストの削減を図る。

2.第3期中期目標・計画(2014~18年度)と2016年度決算
 都市機構は設立10年をへ、5年ごとに中期目標、中期計画を見直し、2014年度は第3期の初年度にあたる。それに先だち、都市機構の基本的な方針をさだめる閣議決定がだされ、第3期中期計画は閣議決定を「具現化するもの」となった。

 1.機構の基本目標-財務構造の健全化(繰越欠損金の解消、キャッシュフローの最大化)を実現する。
 2.都市再生事業の目標-東京オリンピックのニーズや老朽化マンションの再生など公的立場を活かして民間事業への支援をおこなう。
 3.賃貸住宅事業の目標と計画-
  〇 団地統廃合の実施計画を2014年度中に策定する。2018年度までに10万戸再編着手、5万戸削減する。
  〇 家賃改定ルールを2015年度中に見直し、引上げ幅を拡大、改定周期を短縮する。管理コストを2014年度から3年間で10%削減する。

 機構は閣議決定を実行する第3期中期計画を立てたうえ、さらに14年3月31目付で「経営改善に向けた取組みについて」を発表し、目標のポイントを強調した。
  機構の最優先課題は財務体質の強化である02033年度末までに有利子負債を3兆円以上削減する。借入金償還や支払利息をまかなうために、賃貸住宅事業の営業キャッシュフローマージン50%を達成する。その柱は家賃収入である。具体には、団地の付加価値向上や家賃収入の確保に努めるとともに、修繕費など管理コストの削減に取り組むほか、賃貸住宅ストック再生・再編の促進により資産の良質化、負債の圧迫につとめる。
 「営業キャッシュフローマージンの確保」を最優先課題とする賃貸住宅部門の2016年度決算をみると、業務収入6,576億円(うち家賃・共益費収入5,698億円、整備敷地等譲渡収入290億円)にたいし経費総額は4,234億円(うち管理業務費3,064億円)だから、収入から経費を差し引き、収入で除した営業キャッシュフローマージン率は35.6%である。目標50%の達成が、家賃値上げと修繕費カット、団地売却に拍車をかけることは目に見えている。
 支払い利息のプレッシャーは依然重くて1,352億円、賃貸住宅部門の借入先はすべて政府資金だが利率は1・21%、民間事業であるリニア新幹線への金利0.6%の2倍以上も高く、家賃収入の24・6%を食っている。ほかに見逃せないのは、空き家の増加等による減損損失を609億円計上しながら、当期純利益を520億円をあげ、その全額を宅地造成等経過勘定の赤字の穴埋めに繰り入れている点である。

『検証 公団居住60年』 東信堂



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