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地球千鳥足Ⅱ №4 [雑木林の四季]

バトンタッチの旅とロシア民謡大合唱~ウズベキスタン共和国~

     小川地球村塾塾長  小川彩子

 日本人が好きな国、好かれている国、イスラム、ロシア、モンゴル、中国の文化がミックスした魅力に溢れるウズベキスタンは、中央アジアの歴史遺産が層をなし、訪れた人はシルクロード時代へと容易にタイムスリップできる。この国の古都、夜間でも、子どもたちからさえも明るい声で「こんにちは!」と呼びかけてくれる。友好は
挨拶だけではない。有難いことに1つの街のホテルを出る時、頼まずとも次の街の同クラスのホテルを予約してくれた。気に入ればすぐ入室でき、気に入らなければ他を探せるのでホテル探しの時間が省けた。こうしてヒヴアからブバラ、サマルカンド、シャフリサーブス、タシケントとホテル受付の手から手へバトンタッチされ、便利な場所、安くて朝食が美味しいホテルを利用できたのだった。
 城壁都市、ヒヴァのイチヤンカラは1990年に世界遺産に指定され、ほっと安らぐ博物館のような街並みだ。かつてイスラム教の中心的役割を演じてきたブバラも世界遺産、ここではアルク城を見学したが、お城の受付がドルを現地のお金スムに高いレートで換金してくれたり、中央アジアに現存する最古のイスラム建築、イスマイル・サマニ廟を特別に開けてくれたり、と感動は続いた。ジンギスハ-ンも破壊を止めたというカラーン・ミナレットに登り、麦藁をつぶしアイロンで台紙に張り付ける芸術の製作場も訪問したが、その間夫は近くでビールを飲んで待っていた。
 この街の人々の憩いの場、リヤビハウスは四角形の貯水池の周辺に布敷きの縁台やぼんぼりがあって日本情調に似ており、食事をすれば楽しい。ファティマ・ホテルの若い女性は美人で英語も料理も上手い働き者。「青の都」、サマルカンドも世界遺産、余りにも美しく、レギスタン広場では溜め息ばかりついていた。イスラム神学、数学、哲学などを多くの学生が学んだ、天文学者ウルグベクの作ったメドレセ(神学校)と他の2つのメドレセがコの字に向き合い圧巻だ。
 サマルカンドからシャフリサーブスへは車で峠越えしたが、車窓の奇岩風景は素晴らしく、この奇岩に落ちていく夕日は余りにも現実離れし、帰路運転手と共に暫し見とれた。
 1966年、震度7・5のタシケント地震で建造物がほぼ全壊した中、唯一倒れなかったナヴォイ・オペラ劇場は旧日本兵が強制労働で作り上げ、ジャパン劇場の名で語り草になっていると聞き見に行った。実に立派な建物だった。タシケント郊外の日本人墓地で3代にわたって世話をしてきたフアジルさんとの出会いは格別だ。道路造りをさせられていた日本人捕虜の働きぶりや勤勉さに学び、敬愛の情が芽生えた初代が、日本人捕虜の死者を埋葬したのがこの墓地の始まりだという。
 私たち夫婦は地球の一角での出会いを最大限楽しむ。旅先で出会った人にお世話になることは考えず、食事に招待し一夕の会話を楽しむことが多い。そこでまた面白いことが展開する。今回も全土の観光を終えて夕シケントに戻り、初日に友人になっていたアミールの一家を夕食に招待した。すると義弟フルキャットの誕生会兼婚約者披露宴に招かれ、1泊予定でその街に出かけた。
 タシケントの街はずれから車で南へ1時間半、ベカバードという名の街だった。道中の逸話だが、公衆トイレに入ったら、「日本人ね」と順番をゆずってくれる人や便器の汚れを雑巾で拭いて「どうぞ!」という女性がいて感動した。
 フルキャットはアミールの奥さんの弟で大変な美男、婚約者は17歳でこれもあかぬけた美女だった。レストランを借り切ってのこの披露宴にはホテルの料理に加えて親戚一同が一品持ち寄りしての大ご馳走だった。ピロシキに似たサモサ、炊き込みご飯プロフ、シシカバブーはここではシャシリクという名、うどんに似たラグマン、多種のマヨネーズサラダ、各種のナン、フルーツの山等々。女性たちがウオツカを一気飲みするのには驚いた。
外国人は私たち夫婦だけ、早々に挨拶を促され、ロシア語に英語を混ぜてスピーチをし、その後ロシア民謡を歌った。「カチューシャ」「黒い瞳」「赤いサラファン」と夫と歌ったらなんとフルキャットのおばあちゃん、ノナ、77歳がロシア語で唱和しだした。私の歌うどの歌も彼女は歌え、日本語とロシア語のバイリンガル合唱となった。居並ぶシニアの婦人たち、ライアもゼーラもトーフィツクもフアリダもユーダも大声で唱和、その時思い出した。昔「ボルガの船曳歌」をロシア語で覚えたことを。「エイ・ウツフ・エイ…⊥。今度は全員ロシア語で合唱だ。
 大柄のノナが近寄って来て何度も私を抱き上げ、揺さぶり、キスをした。続いてライアも。舞い込んだ日本からの客による自国の歌に歓び、誰もが私にハグをし、抱き上げ、キスをした。食べて、歌って、踊ってのパーティは延々と続いた。私はいつもディスコダンスに盆踊りをミックスするが、これが受け、「ダンスお上手ですねえ」と。「人の緑は妙なり」と地球の一角での「一期一会」を楽しんでいる私たち夫婦である。
                      (旅の期間‥2010年 彩子)

『地球千鳥足』 幻冬舎



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