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こふみ会・句会物語 №109 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり
「行くも良い良い、行かぬも良い良い」…コロナ禍による在宅句会その23 
  「青嵐」「虹」「昼寝」「蝙蝠」

                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

すかんぽ氏から、≪令和4年6月の句会≫の案内状が送られました。下記のとおりです。

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先日のリアル句会の余韻いまだ冷めやらぬ中、
もう6月句会のご案内をする時節になってまいりました。。
わたくし尚哉が担当いたしますので、どうぞよろしく。

●兼題 青嵐(あおあらし、あをあらし)
    虹
    昼寝
    蝙蝠(こうもり、へんぷく)

●投句締め切りは、6月15日(水)といたします。

●18日までには一覧をバックし、 24日ころを選句の締切に、と考えています。

●結果発表は、6月最終週の予定です。

●投句・選句とも、尚哉までお送りください。

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。14名 56句

≪青嵐≫
青嵐と 言えど若葉の 笑う風 (孝多)
自粛明け早稲田の居酒屋青嵐 (兎子)
青あらし大仏いよよ動きさう (すかんぽ)
ヒースクリフの怒りはさめず青嵐 (弥生)
青嵐 試合に負けた 十五歳 (紅螺)
青嵐今日こそ君を抱きとめむ (尚哉)
若駒は野に放たれて青嵐 (茘子)
花嫁のタトゥ露わに青嵐 (下戸)
浅葱 萌 翠 碧 群青 青嵐 (鬼禿)
神々の渡る稜線青嵐 (なつめ)
青嵐おさまりた野に若葉たつ (玲滴)
少年が少年を脱ぐ青嵐 (矢太)
我は何問いし日のあり青嵐 (虚視)
青嵐に胸はって向かう七十路 (一遅)

≪虹≫
虹を見し露台は朽ちて子も遠き (弥生)
虹の海小さな長靴しゃがんでる (一遅)
虹の中に堂々と棲む虫一匹 (矢太)
退院日がんばったねと虹二重 (鬼禿)
都会の空仰ぐ人なく虹消ゆる (茘子)
蓄えど使う術なし古希の虹 (下戸)
ぐしょ濡れの少年ふたり虹の中 (すかんぽ)
虹の橋地球を円く包みをり (なつめ)
またひとり友遠き旅夜の虹 (虚視)
虹が出た上をむかせる呪文のよう (兎子)
ゆび指して 虹見る 現場の労働者 (紅螺)
雨あがる虹の予報もあればいいな (尚哉)
会えぬ友ラインの画像虹の見ゆ (玲滴)
虹立ちて 幾度も我が名 呼ばれけり (孝多)

≪昼寝≫
昼寝より覚めしは吾れを呼ぶ夢の声 (弥生)
大の字は 得意技なり 大昼寝 (孝多)
永き日の昼寝のあとのだるさかな (玲滴)
午睡覚め夢見し人のさらに恋しき(茘子)
いい昼寝 このまま行うか戻ろうか (鬼禿)
重力にもっていかれし昼寝顔 (下戸)
座布団を二つ折りして昼寝顔 (すかんぽ)
夢から醒める夢また見る昼寝かな (矢太)
邯鄲の憂いも無しに我が昼寝 (一遅)
昼寝子の寝息と葉擦れのみ聞こゆ (なつめ)
昼寝覚めうつつも夢の中のごと (虚視)
古代都市 昼寝の夢の 迷い路 (紅螺)
在宅の昼寝の上を熱き風吹く (兎子)
自由業昼寝は我の権利なり (尚哉)

≪蝙蝠≫
夕暮れて こうもり飛び立つ 過疎の村 (孝多)
その善はこちらの悪だよ蝙蝠よ (兎子)
迷翔する嘆きの壁の蝙蝠 (鬼禿)
蝙蝠か 秒8コマで飛び交うは (尚哉)
蝙蝠の飛び交う薄暮いずこやら (玲滴)
血の色の廃市の空舞う蝙蝠 (虚視)
かうもりや人の這い出すマンホール (すかんぽ)
君待てば蝙蝠月より生まれ来る (茘子)
音もなく蝙蝠舞うや安酒場 (下戸)
蝙蝠の慌てる時刻日の名残 (弥生)
夕暮れまで洞に犇めく蝙蝠や (なつめ)
恋に破れ帰路蝙蝠のひとつ吠え (一遅)
蝙蝠は 尖塔かすめて 茜空 (紅螺)
蝙蝠は闇さかさまに睥睨す (矢太)

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●花嫁のタトゥ露わに青嵐(下戸) 
鑑賞短文=花嫁にタトゥの意外性が青嵐の勢いを見事に表現しています。(すかんぽ) 

●浅葱 萌 翠 碧 群青 青嵐(鬼禿) 
鑑賞短文=字面を見てくらくらし、声に出してワクワクしました。青嵐のドキドキするようなときめき感が増しました.。(玲滴)

●神々の渡る稜線青嵐(なつめ) 
鑑賞短文=青嵐の強さと猛々しさが、目の前に広がってきます。(茘子)
●少年が少年を脱ぐ青嵐(矢太) 
鑑賞短文=「青嵐」でこう云うか。青春と朱夏の間の「青嵐」 凄い。新聞の俳壇などでは
抜かれないかも。こふみ会の新しい句会句のかたちを示唆しています。(鬼禿)
鑑賞短文=青嵐のやや強い風が、少年の衣服を吹きなびかせました。少年と思っていた男性は、もうすっかり青年の体格です。良句をお示し下さって有難うございました。(孝多))
鑑賞短文=時代性があってアっと言わされた。秀逸です。(下戸)

●虹を見し露台は朽ちて子も遠き(弥生) 
鑑賞短文=17字の中に、長くて短かい時の流れを感じます。虹に哀愁を見た秀句。(一遅)
鑑賞短文= それは悲しいけれど、虹を見た記憶はしっかりと残っている。遠き子にも。と思いたいです。(兎子)

●邯鄲の憂いも無しに我が昼寝(一遅) 
鑑賞短文=一見ぐうたらに見えるが、実は昼寝ができるこの時間こそが究極の幸せであるとわかっておられる、カッコ良い句です。(なつめ)

●血の色の廃市の空舞う蝙蝠(虚視) 
鑑賞短文=象徴主義の画家ベックリンの「ペスト」を、すぐに思い起こしました。ビジュアルが喚起されてイメージがふくらむ、秀句だと思います。(尚哉)

●かうもりや人の這い出すマンホール(すかんぽ)
鑑賞短文=マリウポリの地下シェルターを想起した。暗い、おぞましい心象風景、と読んだ。(矢太)
鑑賞短文=上五が唐突ですが情景が面白すぎる!思わず笑いがこみあげます!楽しい句!(紅螺)
感想短文=「かうもり」は人なのか、這い出すのは「かうもり」か、謎めくというか、意味が
わからないというか。マンホールから這い出す「ずるずる」という音が頭のなかをこだまし、この句を選ぶのは天しかない。(虚視)

●君待てば蝙蝠月より生まれ来る(茘子) 
鑑賞短文=蝙蝠という難しいお題を無理なく見事に「詩」になさったと思いました。(弥生)

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≪今月の天地人≫

天 すかんぽさん トータルで42点
    代表句=かうもりや人の這い出すマンホール
地 なつめさん トータルで37点
    代表句=神々の渡る稜線青嵐
人 弥生さん トータルで33点
    代表句=虹を見し露台は朽ちて子も遠き
次点 矢太さん トータルで32点
    代表句=少年が少年を脱ぐ青嵐

◆上位作の皆さん、おめでとうございました。

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≪幹事より,ひと言≫
たいへんにレベルが高く、かつ大接戦でした。
幹事も、おおいに楽しませていただきました。
とくに、難題になるだろうと思って(いじわるですね、我ながら)お出しした「蝙蝠」が
秀逸でした。お人によって全く解釈が異なるのも、面白いですね。

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≪孝多より、ひと言≫
或る会社の広報室から頼まれて「言葉と私;というコラムを書くことになりました。
第一回を書き終えて、原稿を読みかえしていましたら、文中で使った「社内恋愛」という表現に目が止まって、動かなくなりました。
「恋愛」は「愛」の前に「恋」を付けて、特別な意味を想わす言葉(表現)になりました。
でしたら、この例のほかに「愛」の前に付けた言葉がいくつもあって、それはどんなカタチを示し、どんな意味を成しているか、急激に知りたくなったという次第です。
そこで、さがしました。考えました。調べました。発見しました。
親愛/激愛/溺愛/相愛/博愛/情愛/最愛/求愛/純愛/人類愛/祖国愛/母性愛/師弟愛/まだまだ、たくさんあります。嬉しくなります。
そこで、はずみをかけて……「文字愛」「言葉愛」……なんてものも跳び出す有りさま。如何ですか。あなたも、なさってみませんか。
なお、これぞと思う表現に出会ったら、〇〇年〇月〇日・朝日・天声人語より、などと明記しておくのが良いでしょう。
       令和4年6月吉日       多比羅孝多
                    


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