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検証 公団居住60年 №114 [雑木林の四季]

XⅥ 規制改革路線をひきつぐ民主党政権、迷走の3年余

   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治 

8.公団住宅分割・株式会社化方針とたたかった2012年

 2012年1月20日に「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」、都市機構については分割・再編、特殊会社化が閣議決定されると、全国自治協は1月24日、国会内で「公団住宅を公共住宅として守れ!緊急国会要請集会」をひらいた。与野党議員20人、代理20人が出席し、自治協支持と激励のあいさつで集会は大いに盛りあがった。この日を皮切りに、衆議院解散の11月まで、全国の自治会、自治協はみごとな団結で民主党内閣の公団住宅解体方針とたたかった。
 閣議決定をうけた都市機構の在り方調査会の最終報告はその年の夏に予定されていたので、12年前半が自治協運動のヤマ場であった。
 2月、3月には各団地自治会で、野田佳彦首相、岡田克也行革大臣、前田武志国交大臣あての「機構貸賃住宅を公共住宅として継続することを求める要請署名」と、地方議会にたいする「公共住宅としての継続と居住の安定を求める意見書」採択の請願・陳情にとりくみ、約260団地の会長署名を提出、55地方議会の意見書、12首長の要望書が送付された。首相および各大臣国会議員には居住者一人ひとりから万を数える要請のはがき・手紙がとどけられた。
 国会内では、自治協の動きに呼応して2月から4月にかけて衆院予算、国土交通の各委員会で質疑がかわされた。とくに4月11日の衆院国土交通委員会では自民、公明、社民の3議員が質問にたち、ミニ集中審議となり、前田国交大臣、中塚一宏行革副大臣から「居住者の居住の安定」「機構賃貸住宅の大きな公的役割」についての積極的な答弁をひきだした。
 全国自治協の第39回定期総会は6月16~17日、公団住宅の「分割、特殊会社化」について内閣府の調査会がまもなく結論をだそうとしていたその最中にひらかれた。総会後ただちに、岡田行革大臣と羽田雄一郎国交大臣あての各団地自治会「会長署名」に再度とりくむとともに、両大臣に面会しての署名提出と、8月9日の「緊急国会要請集会」の開催をきめた。
 民主党内閣の国土交通大臣は3年のあいだに前原、馬渕、大畠、前田、羽田とめまぐるしく変わり、要請相手はそのつど別人、その頼りなさがいっそう不安をかきたてた。
 3月につづく再度の自治会会長署名は、岡田行革大臣にあてに7月26日、羽田国交大臣には翌27日に大臣室にたずねて提出し要請した。この日の午前中には衆院国土交通委員会がひらかれ、公明・共産の各委員が調査会の最終報告をまえに質疑をおこない、羽田大臣は、居住者の居住の安定が最優先、委員の論旨は理解していると答えている。全国自治協の役員9人が大臣に面談したさいも、質問者をふくめ民主、自民、生活、公明、共産の5党から9人の国会議員が同席し、それぞれ熱く要請した。大臣につづき8月7日には吉田おきむ国交副大臣とも面会した。
 わたしが自治協役員として関係各大臣、副大臣に直接会って要請する際しばしば感じたのは、閣議決定がさだめた方向、文書に記された方針と、担当の大臣ないし副大臣が個々にかたる談話の内容との違い、隔たりである。「あなた方の言うことはよく分かる」と対応する。だったらなぜ、当事者たちが懸命に反対しているのに、客観的にみても大義の認められないそんな方針を、党として、または内閣が出してくるのか、と首をかしげたくなる。しかし、引っ込めるとはけっして言わない。ふりかえれば、そんな遣り取りをへて、押されながらも公団住宅を守ってきた。当事者の必死の運動があってこそ、力をゆるめ手を引いたらそうはいくまい、と思うことにしている。
 地元選出の国会議員を中心に要請行動をくりかえし、国会内集会をかさね、党派をこえて国会議員のなかに自治協支援のウイングを広げ、担当大臣にも面会をもとめて要請し、政府の決定、方針に待ったをかけてきた。公団住宅の存廃にかかわる今回の事態では、その行動パターンを徹底的につらぬいたと思う。
 8月9日、国会は内閣不信任案提出で緊迫した情勢を迎えていた。岡田行革大臣は内閣の危機をのりこえるためにも、調査会の議論を打ちきりゴリ押しで結論をだしそうだと伝えられた。この日、衆院第1議員会館多目的ホールでひらいた「緊急国会要請集会」も熱気をおび、盛り上がりをみせた。全国から86自治会の代表167人が参加した。集会には、かつてなく多い8党から26人の国会議員と代理24人が出席した。このあと民主党議連総会がもたれ、全国自治協も同席した。
 機構の在り方調査会は2012年8月28日に報告書を発表。9月14日の閣議後、行政改革実行本部はこれを了承した。
 全国自治協は8月31日、調査会報告書にたいする「反論」を発表し、「抗議と撤回要求」声明をだした。この文書をもとに各地方自治協ではいっせいに学習会をもち、宣伝活動を展開し、地方ごとの総決起集会をひらいて、2012年全国統一行動のスタートをきった。
 11月16日に国会解散、12月4日告示、12月16日の投票日まで国をあげての選挙戦にはいった。東京都は石原都知事が都政を投げ出したため、あわせて都知事選もたたかわれた。
 その選挙戦のさなかに全国自治協は12月6日「公団住宅の分割・売却、民営化に反対!公共住宅として守ろう-2012年全国公団住宅居住者総決起集会」を日本教育会館大ホールで開催、146団地873人が参加した。選挙戦のさなかにもかかわらず民主、自民、公明、共産、社民各党の議員から激励のあいさつ、メッセージがよせられた。全国249団地自治会が2012年統一署名にとりくみ、集会後に要請団を編成して機構理事長と国交大臣に提出した署名数は、それぞれ約12万世帯22万人をかぞえた。
 12月16日、総選挙の結果、自民党が勝利し、第2次安倍内閣が成立した。

『検証 公団居住60年』 東信堂



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