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検証 公団居住60年 №112 [雑木林の四季]

XⅥ 規制改革路線をひきつぐ民主党政権、迷走の3年余

   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治 

6.国土交通省「都市機構改革の工程表」

 2010年4月の行政刷新会議による都市機構の事業仕分け評決、それをうけての国交省の機構あり方検討会の10月4日の報告書、この報告書内容を事業仕分け評決の線に巻きかえしをはかる12月7日の閣議決定「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」をならべてみると、方針の実施にむけての進捗、具体化というより、行きつ戻りっの迷走ばかりが目立つ。迷走の背熟こは、消費税増税のまえに「身を切る改革」を演出してみせたい、とくに岡田克也行政刷新担当大臣のあせり、利権を手放したくない国交省官僚たちの思惑、その綱引きが見られる。しかし迷走のなによりの原因は、公団住宅廃止・民営化方針に大義はなく、方針そのものの矛盾、反国民的な本質にあり、くわえて閣僚の一角、与党議員をも巻き込んでの居住者自治会・自治協のねぼりづよい運動が立ちはだかっていたからといえる。
 検討会報告書についてコメントした際、馬渕国交大臣は「都市機構の事業・組織の見直しについては、年度内に工程表を策定し、より具体的な道筋を明らかにしたうえ、機構改革を不可逆的に進めていきたい」と語った。工程表策定は、年度末の3月11日に東日本大震災が起こって延びのびになったせいもあろう。11年7月1日に国交省は「独立行政法人都市再生機構の改革に係わる工程表」を発表した。
 迷走はとどまらない。工程表は、国交省の検討会報告書とその後の閣議決定にもとづくとしながらも、機構の改革は「検討会報告書で示された方向に沿って行うものとする」と言いきり、民主党政権の「政治主導」とは名ばかり、官僚丸投げの実体をうかがわせた。
 機構改革の工程表は、賃貸住宅部門「改革」の基本を「機構の役割はすでに終わった。賃貸住宅ストックは縮小していく。公的部門の役割は民間市場の補完である」におき、既存ストックの活用に民間資本、経営方式を導入し、市場家賃化をすすめるとして、つぎの事項をあげる。

①「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」は着実に実施していく。
 あわせてPPP(公共・民間共同)手法を活用して団地の収益力の維持・向上につとめる。
②都心部の高額家賃物件は、機構財務の改善につながる価格で売却する。
③4大都市圏の地方公共団体について、順次、買い取りや借り上げ等の意向を確認し協議をおこなう。
④家賃は近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないよう定め、家賃減額措置については国 費投入の理由と投入対象を明確化する。
⑤定期借家契約は、建て替え予定の団地以外においても新規入居に導入する。

 この工程表は、居住者を住みなれたコミュニティから追いだす「団地再生・再編」、収入実態を無視した「収益本位の市場家賃化」、居住の権利をうばう「定期借家契約の導入」をならべる。公共住宅としての公団住宅解消の工程表にはかならない。しかし、そう列記したあとでも、具体的な方策は示さないまま、「居住者の居住の安定を害することがないよう配慮するものとする」と書く。団地居住者自身の主張と運動は政府も認めざるをえない存在であることの証しである。

『検証 公団居住60年』 東信堂



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