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エラワン哀歌 №22 [文芸美術の森]

旅/ロザリオ

     詩人  志田道子

  石造の礼拝堂の中は
  しんと薄暗い
  窓際のショファージユに
  手をかざして見たが
  温湯は止まっていた
  ステンドグラスの外は静か
  無数の純白の羽毛が
  絶えることなく降り積む

  冷たくなった木製の椅子に
  ロザリオが一本
  置き忘れられていた
  誰かの苦悩をやっと逃れて
  そこに滑り落ちたか
  寂しい誰かの指に
  拾い上げられるのを
  じっと待っていたか……

  躯(むくろ)となった子を抱く
  若き母親の涙
  二千年乾くことはなく
  癒されることのなかった
  細い首

  くぐもった鐘の音の下
  今日
  パリは雪

『エラワン哀歌』 素養美術社出版販売


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