エラワン哀歌 №19 [文芸美術の森]
歳末……歌舞伎町裏通り
詩人 志田道子
繁華街の裏道は
かなしいけれども懐かしい
どこかに足を置き忘れ
両ポケットのぬくもりを
頼りに心は冬をさまよう
ばかたれと言ったとか
睨んだとか
どうか責めるの止めとくれ
もうとうに随分昔から
わたしの唇ひからぴて
人の使う言の葉など
吐き出したりはしないから
電信柱の足下に
風を逃れたビニール袋
ああ 人の世の幸せなど
飛んでも落ちても
中身は空っぽ
腹に残るは夢ばかり
潰すか捨てるか夢の泡
『エラワン哀歌』 土曜美術社出版販売
『エラワン哀歌』 土曜美術社出版販売
2022-01-30 12:57
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