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過激な隠遁~高島野十郎評伝 №68 [文芸美術の森]

ノート 7

    早稲田大学名誉教授  川崎 浹

時間と空間と質量とこう分析した
これは皆なプラスの符号つきのように見込んでしまってゐる、これにマイナスの符号をつけて見よ・何もかもに、言葉の名詞、動詞、形容詞にもマイナスをつけて見る・分析といふその事にマイナスをつけて見る.思索、研究そのものにマイナスをつけて見る、マイナスに又マイナスをつけて見る時間が流れて行き、空間が廣がつて居り、質量があるが如くに思ってゐる、皆な馬鹿の迷心飛行機を作る奴は作れ、高楼を建つる奴は建てよ、分析する奴はせよ、それが元来人間、たゞプラスもマイナスもなき - それのみが唯我独尊 - それを假に寫実と名づけるこう思ひ進む事が科学、これが迷心誰がためにこ、には咲くぞ山櫻、又音もなく散りはてし行く、誰がために咲くや山奥山櫻、又音もなく消え散りて行く

『過激な隠遁~高島野十郎評伝』 求龍社


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