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行くも良い良い、行かぬも良い良い……句会物語 №103 [文芸美術の森]

行くも良い良い、行かぬも良い良い……句会物語
こふみ会通信 №103 (コロナ禍による在宅句会 その18)
「御慶」「初鏡「雪蛍」「こ・ふ・み」
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

すかんぽ氏と鬼禿氏との連名にて、≪令和4年1月の句会≫の案内が全会員に届きました。下記のとおりです。

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明けましてお目出度うございます。
こふみ会『新春小網句会』のご案内です。
こふみ会 今年も残念ながら『ネット句会』になりました。
ただ ネット句会だからこその 面白さも感じております。
コロナ禍のお正月。すっきりと気持ちのいい句をお作り頂きたいと思います。
尚末尾に会からお知らせがありますので、当メールは最後までご覧ください。

●兼題【御慶】【初鏡】【雪蛍】
 新年特別兼題【こ・ふ・み」読み込み
 五七五の頭にこの3音を入れて作句する *冬の季語も入れる。
(例)黄金波船は紀州のみかん船(鬼禿)

●上記兼題4句を1月12(日)~14日(火)に投句して下さい(厳守)
投句先=今回は男子・女子送り先が別ですのでご注意ください(C,Cなし)
●女性会員は鬼禿へ
●男性会員はすかんぽへ
●1月20日(木)選句締め切り。鬼禿とすかんぽ両方にメールをお願いいたします。
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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。14名 56句

【御慶】
灯明に遺影も笑ふ御慶かな(弥生)           
巣籠り明け三倍増しの御慶かな(尚哉)
祖父が逝き父母も隠れて御慶失せ(兎子)
昨日の次の日と思えど御慶言う(一遅)           
ひとり居に慣れて今年の御慶かな(玲滴) 
炊出しに両手あわせる御慶かな(下戸)  
天からの御慶か富士に雲もなし(茘子)  
御慶てふ言葉殺して疫疾る(矢太)    
白と赤マスク重ねてハイ御慶(鬼禿)
常の日と変わらぬ日なれど御慶かな(虚視)   
片言のフランス女性の御慶受く(紅螺)
御慶して庭師鉢巻絞め直す(すかんぽ)  
遠く住み御慶の葉書き書いている(孝多) 
知る顔に会へば笑顔の御慶かな(小文)  

【初鏡】 
初鏡いまだ美醜を確かめる(虚視)    
紅を刷く吹き清めたる初鏡(弥生)
途切れたる夢のつづきか初鏡(鬼禿)   
白粉に鼻つまりけり初鏡(下戸)
唇を動かしてみる初鏡(孝多)      
初鏡きのうのわたしはどこに消ゆ(矢太) 
つねよりも紅濃く映ゆる初鏡(小文)   
初鏡さてどの顔で生きようか(すかんぽ) 
皺一本増えてめでたい初鏡(茘子)    
ほろ酔いの目元潤みて初鏡(尚哉)    
初鏡八十路の母は眉を描く(紅螺)    
初鏡決心の紅ひくもう三十路(一遅)
初鏡しわも白髪も増えたねと(玲滴)   
まじまじと目もと口もと初鏡(兎子)    

【雪蛍】
ムービーのラストシーンか雪蛍(茘子)   
鼻唄で帰るほっぺに雪蛍(紅螺)
煙草の火かざす夜空に雪蛍(下戸)     
消息は誰も知らない雪蛍(弥生)      
はかなさや見えつつ消える雪蛍(孝多)
命とはかくも軽ろきか雪蛍(虚視)     
茜空消えつつ雪の蛍とぶ(玲滴)      
人影なきむらを雪蛍覆ひけり(矢太)    
つかの間の命つなげし雪蛍(小文)     
ふらふらり雪虫懐かし藻岩山(尚哉)    
迷い子は雪蛍追うスキップで(兎子)    
雪蛍たいくつさうな人の上(すかんぽ)   
嘘ほんと友切り捨ててしろばんば(鬼禿)  
雪蛍こんやは鍋でも突つこうか(一遅)    

【こ・ふ・み】
来し方を振りかえりつつ晦日蕎麦(紅螺) 
こっそりと文の隠れし蜜柑箱(下戸)    
コロナ禍にふるさと届くみかんの香(玲滴) 
小雪舞いふたりぼっちは見つめ合う(尚哉) 
こふみ入り気づけば指折り春隣(小文)
金色の富士の夜明けや味噌仕込む(すかんぽ)
小粋なる風情詠みたし都鳥(孝多)     
これからはふるさとはここみかんむく(矢太)
声冴ゆる古き山家に滿る月(茘子)
古都の春降り注ぐ慈悲みろく仏(一遅)   
粉雪を踏んで別るるみれん坂(鬼禿)    
コロナ禍にふたたび巡る御代の春(弥生)  
木枯しの吹き行く先や道果てる(虚視)   
小径ぬけ不意のシリウス見つめあう(兎子) 
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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

天からの御慶か富士に雲もなし(茘子)
鑑賞短文=新しい年への希望とめでたさを日本の象徴である富士山と共に詠んだ、正統的な新年にふさわしい句。(弥生)

知る顔に会へば笑顔の御慶かな(小文)
鑑賞短文=新年のほのぼのとした情景が浮かびます(紅螺)

初鏡さてどの顔で生きようか(すかんぽ)
鑑賞短文=鏡に映る自身の顔に一年の計を立てる。365日鏡を見るたびに元旦の計を思い出す。覚悟のあるお方です。(小文)
鑑賞短文=TPOで「顔」を選ぶこと。それもひとつの生きる知恵、かも知れない。
それにしても、郷ひろみの「How Many いい顔」が頭から離れません。(尚哉)

まじまじと目もと口もと初鏡(兎子)
鑑賞短文=「まじまじと」というオノマトペがとても効果的です。オノマトペは、ともすれば押しつけがましくなりやすいものですが、それが無くて、良いですねえ。佳句をお示しいただき、有難うございました。(孝多)

消息は誰も知らない雪蛍(弥生)
鑑賞短文=こんな感傷に日々浸っている。終章を迎える者の胸の奥底が覗けるみごとな心象句です。(矢太)

来し方を振りかえりつつ晦日蕎麦 (紅螺)
鑑賞短文=【こ、ふ、み】を当て込んだとは思えない、見事な自然感。しっとりと一年を締めくくる感慨に満ちていて、うまい!(一遅)
鑑賞短文=脱帽です。うまい。状況が浮かびます。(茘子)

金色の富士の夜明けや味噌仕込む(すかんぽ)
鑑賞短文=濃密な色の多重層。馥郁たる新春を感じます。(兎子)

これからはふるさとはここみかんむく(矢太)
鑑賞短文=長年住み慣れた家を離れ、初めての地「宮崎」に移住する僕にとって、深く心に突き刺さる一句でした。宮崎から新しい虚視として生きる決意が出来ました。ありがとうございます。(虚視)

古都の春降り注ぐ慈悲みろく仏(一遅)
鑑賞短文=古都は奈良でしょうか。春浅い古都に慈雨のように降り注ぐ慈悲を思うだけでしみじみとしました。(玲滴)

粉雪を踏んで別るるみれん坂(鬼禿)
鑑賞短文=僅差だが、この句を推す。こふみの三文字から、輪郭のはっきりした世界を作り上げた。そこが他句を退けたポイントです。(下戸)

命とはかくも軽ろきか雪蛍(虚視)  
雪蛍とは名ばかりただの羽虫。年々自分の命も軽くなって来て中々良い。
ああ 余り大きな命懸けの仕事なんかやらなくて良かったとしみじみ思う。
お陰で雪虫のごとく屁のように終れそうだ 〜プン。(鬼禿)

初鏡しわも白髪も増えたねと(玲滴
自分に語りかけているのでしょうか。新年に新たな気持ちで鏡を見ると、確かに老けてきた事実。それを「増えたね」と自分に声をかけ受け入れてゆく。そのピュアな姿に感銘を受けました。(すかんぽ)
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≪今月の天地人≫
【天】 虚視   45点(天1地4人2客12)
         代表句=命とはかくも軽きか雪蛍
【地】 すかんぽ 35点(天3地1人1客6)
         代表句=黄金の富士の夜明けや味噌仕込む
【人】 紅螺   30点(天2地1人1客8)
         代表句=来し方を振り返りつつ晦日蕎麦
【客】 茘子   28点(天1地3人0客6)
         代表句=天からの御慶か富士に雲もなし
【客】 鬼禿   25点(天1地2人1客5)
         代表句=初雪を踏んで別るるみれん坂

◆上位作の皆さん、おめでとうございました。
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≪幹事より、ひと言≫
皆様の多大なるご協力により、つつがなく新春小網句会の結果をまとめることができました。
天句は13人中9人から選を獲得した〇〇さん。
(こ・ふ・み)を織り込みながらも全くそれを感じさせない、素晴らしい一句を披露してくださいました。
なお今回は、誠に勝手ではありますが、幹事連の独断で全体の形式を揃えるため、「絶対的不可欠」でない限り、(ルビ)と575間の全角空きは省略させて頂きましたのでご了解願います。
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≪幹事よりひと言≫にお応えして。
上記のとおり、今回は、幹事さんの判断により特別なことが無い限り、ルビと5.・7・5間の全角空きは省略となりました。多くの会員諸氏が了承!でしょう。お知らせ有難うございました。でも、でも、万一のことがあります。こうしたことは全会員に及ぶことです。よろず、相談し合い、慎重に、建設的に、事を勧めましょう。よろしくお願い申しあげます。
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◆さあて、さてさて、本年初(と言っても、すでに二月も間近か)のブログ上のご挨拶です。今年も、どうぞ、よろしくお願い申しあげます。
◆コロナ禍が長びく中、ムカシ、ムカシのことなど思い出しておりました。こふみ会としての句集の発行や、短冊の受け渡しや、吟行のようなことなど、かつて愉快であったことの新鮮なよみがえりを、今年は実現させたいものです。
◆皆々様の、ますますの御健勝と一層の御健筆を、心から祈念申しあげて、筆を擱かせて頂きます。御慶。(孝多敬白)

                           令和4年1月吉日
                                         多比羅 孝多

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