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海の見る夢 №14 [雑木林の四季]

            海の見る夢
       -Mercy Mercy Me-
                                          澁澤京子

・・新しいことを学ぶ良いやり方は、抽象概念や一般論よりも、具体例を通して学ぶことです。~「世界はシステムで動く」ドネラ・H・メドウズ
 
子供の頃、夏は祖父母と軽井沢に行った。涼しかったので、夏でもカーディガンはかかせなかった。ところがまだ息子が小さかったから今から30年以上前になるけど、軽井沢がすごく暑いのに驚いたことがあった。軽井沢だけじゃない、軽井沢より標高が高くて、夏でも寒いほどでセーターが必需品だった八ヶ岳でも、最近は夜でもノースリーブで平気で過ごせるようになってきたし、野鳥しかいなかったのにカラスが飛んでくるようになった・・温暖化は確実に進んでいる・・

この間、渋谷駅に着いた途端、激しい雨が降り始めた。マークシティの高架下に避難しても、横殴りの雨と水しぶきで濡れてしまう。ビルの排水溝から滝のように水が排出されて、ハザードマップだと、確か渋谷駅周辺が水没になっている事が思わず頭をよぎる。スコールというより「雨の爆撃」という表現のほうがふさわしい。あまりにすさまじい雨だったので撮影している人が多く、私も思わずガラケーで撮影しました。

毎年の異常気象は、もう当たり前のようになってしまった。今年もカリフォルニア、熱波のギリシャ、南イタリアの山火事、中国河南省の洪水、ドイツの洪水、そして八月に入ってから九州、、広島、長野の大雨と洪水・・同時多発的にあちこちで自然災害が起きるのである。

地球温暖化で、北極の氷が溶け、ジェット気流が変わると、北半球の地域の気候がおかしくなり、あちこちで熱波、干ばつと暴風雨、洪水の異常気象が起こると言われているけど、もうとっくにおかしくなっているし、予想よりずっと早く温暖化は進み、2040年には夏の北極海の氷はすべて溶けるらしい。~「加速する北極融解」J.A.フランシス
南極の氷も崩壊中で、海面は数十年のうちに3.4m上昇する恐れがあるという。海面が上昇すると被害に遭うのはインド、バングラデシュなどの貧しい地域が多く、気候変動の影響が深刻なアフリカであるとか、先進国の人間のツケを、飽食も贅沢もしていない貧しい人たちが支払うって、なんともうしろめたいではないか。(シリア難民の大きな原因は異常気象による干ばつと内戦)

平均2℃の上昇で、すべてのサンゴが死滅すると言われていて(もうすでに半分のサンゴは死滅)自然というのは、私たちが考えているよりずっとデリケートで、予測不可能なふるまいをするのである。

マーヴィン・ゲイの「マーシー・マーシー・ミー」を聴くと80年代バブルの頃を思い出す。あの頃、この環境問題を告発する歌の内容をよく理解できず、軽薄に気分だけで聴いて浮かれていた自分を恥じる・・

クリーニング屋で働くようになってから衣類の品質表示を見るのが癖になった。ファストファッションのTシャツ、セーターは石油が原料の合成繊維が多い。(合成皮革はクリーニング不可でしかも劣化が早い)要するにプラスティックを着ているようなもので、安価なために大量に使い捨てされ、それらが莫大なプラスティックゴミとなって環境破壊につながるのは容易に想像がつく。ファストファッションのTシャツや下着類は安いのでつい買ってしまったのがたくさんあるのだが・・

ファストファッションでは、インドやバングラディッシュなどで、まるで使い捨てのように、雇われた人が低賃金で一日中働かされている。しかも、綿花畑は大量の水を消費するので、大量生産すると環境破壊につながるらしい。

たとえば、「MAKU」という、ガンジーが始めたカディというインドの手織り布やインドシルクを使った高級インドブランドがある。高いので私は買ったことないけど、色も素材の感じもとてもお洒落で美しい。職人の技術、手間賃と材料費を考えるとあれが妥当な値段なのかもしれない・・

あるいは、リサイクル産業にももっと力を入れるとか、今は、ヤフオクやメルカリを利用すれば、いくらでも質のいいものを安く手に入れることができる時代。人を人とも思わないような人間が増えてきたのも、何だか使い捨て文化と関係あるような気がしてならない。

いまだに「CO2犯人説は嘘」と地球温暖化を否定する人(例・トランプやその支持者)もいるけど、仮にCO2が原因じゃないとしても、毎年の異常気象による災害、住む場所を追われる人々、大量のプラスティックゴミ廃棄、海洋生物被害とかの環境破壊、食糧問題、貧困問題はすでに大きな問題なのでは?CO2排出量のトップのほうに中国、インドが必ず上がるのは、工場がそれらの国に集中しているからで、日本の企業は中国、インドに多くの工場を持っている。

ビル・ゲイツの『地球の未来のために僕が決断したこと』による、CO2年間排出量(年間510億トン)の割合
1、 ものをつくる(コンクリート、鋼鉄、プラスティック) 31パーセント
2、 電気使用                     27パーセント
3、 モノを育てる   (植物、動物)         19パーセント
4、 移動(車、トラック、飛行機、貨物船)      16パーセント
5、 冷暖房、冷蔵                  7パーセント

ビル・ゲイツが提案しているのは、炭素税の導入、人口肉の開発など。

私たち個人でできるのは、なるべくプラスティック製品を買わない、使わない、電気使用を節約する、あるいは移動16パーセント・・そのうちの47パーセントが普通の車なので、電気自動車にするとか。(ビル・ゲイツの本によると、移動16パーセントのうち、飛行機が10パーセントで意外と少ない事に驚いた。)

わかっているのは、私たちがライフスタイルや価値観を根本から変えていかない限り、確実に破滅に向かって突き進んでいくだけだろう、ということだけである。
世界はすべて複雑な関係性で成り立っているのであり、政治も大企業も、それを支えているのは私たちであり、今晩のおかずからTシャツ一枚買うにしても私たちは社会に参加しているのである。そのTシャツがどのような工程で作られたものか(インド、中国で安い賃金で働かされている少女が作ったものかも)、あるいはその肉がどういう過程を経たものか(目を覆いたくなるような悲惨な状況で育てられた、牛、豚、鳥かもしれない)

ブラック企業が告発されて久しいけど、私たちが、弱い人間や動物に負担を押し付けている限り、私たちはずっと「使い捨て」のサイクルの中から抜け出せずに生きるのであり、その中では私たち自身も「使い捨て」される商品のようになってしまうのである。

組織のどのポジションにいたとしても、誰でも入れ替え可能なのが「使い捨てシステム」の社会。つまり恋愛のような(取り替えのきかない)関係と違って、条件さえ満たしていれば誰でも取り換えが利くのが「使い捨てシステム」なのである。利用するか、されるかのドライな関係で、そこには「取り替えのきかない個人」なんてものはいらないし、「役に立つ」か「立たない」か、それだけが判断基準の殺伐とした社会。世俗的な価値観にしがみついている人ほど、物や人と「役に立つ・立たない」「利用する・利用される」の関係しか持てないだろう。

本当に大切なのは、個人の記憶であったり、かけがえのない人や対象ではないだろうか。

しかも、捨てられたもの(排出されたCO2,プラスティックゴミ、廃棄物、)がとっくに限界を超えて気候も生態系も狂いはじめているのが今の状況。

・・世界システムにおいて幾何級数的に増加しているもう一つの量が汚染であることも驚くにあたらないだろう・・『成長の限界』ドネラ・H・メドウズ

MITのグループによって研究された『成長の限界』(1972年)では、すでにCO2の著しい増加や原発の排出物の危険性が懸念されているし、自然エネルギーへの移行も提案されている。『成長の限界』から50年近くたった今、警告されていたのにも拘らず、すでに汚染の限界はとっくに閾値を超えて、私たちは後戻りできないような、かなり危険な状況にいる。
なのに、いまだに毎日のコンビニで大量に廃棄される賞味期限の切れた食べ物とか、使い捨てのファストファッション、ファストインテリアなどの大量のゴミ、CO2の排出量のことを考えると、まったく狂気の沙汰だと思う。

家や自動車、衣服など、外側を新しく買い変えたりすれば自分も変わるのではないかと錯覚するのだけど、実際は常に欠乏感を抱えるだけなのである。資本主義の社会にいると、そうした商業トリックに簡単に引っかかってしまうのだ。

私たちが変化を求めて常に欠乏感を抱くのは、変わるのは関係性だけなのであって中身はまったく変わらないからだ・・中身が空虚で不安であればあるほど、変化しようとあくせくしたり、肩書きだの金銭だの外側の虚栄にしがみつくようにできているのかもしれない。

主体性をしっかり持っていれば、外側にふりまわされることはないのじゃないだろうか?

・・直視しましょう。世界はごちゃごちゃだという事を。~「世界はシステムで動く」

重要なのは世界の混沌、人の複雑さ、物事の複雑な関係をそのまま見つめることだろう。(悲惨であっても)その複雑な網の目の中で私たちは生きているのである。

どこかの国では飢餓・干ばつがあり、洪水があり、つまり、足の指の感覚がなくなっているのに他人事として考えて、自分は大丈夫だからとほっとけば、やがて心臓まで回ってきて、全身がおかしくなるだろう・・

私たちに必要なのは、常に全体と複雑な関係性を視る視点を持つことなのかもしれない。そして何よりも大切なのは、地球の裏側でどんなことが起きようと、それは私たちと密接な関係があるという事を常に意識することかもしれない。



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