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検証 公団居住60年 №94 [雑木林の四季]

ⅩⅣ 住生活基本法は小泉構造改革の総仕上げ
 
   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治 

4.住生活基本法制定に動きだす

 2005年6月18~19日の全国自治協第32回定期総会は、都市公団が都市機構にかわって初めての総会であり、先行き不安な課題が山積していた。公共住宅制度を解体にみちびく住宅関連3法案は全国総会を前後して国会審議、成立をみ、住生活基本法の制定がひかえていた。借地借家法の議員立法による改悪の動きも収まっていなかった。機構は発足してすぐ、旧来の家賃改定ルールを見直す考えはなく、06年4月には継続家賃いっせい改定の意向をしめした。また機構「中期目標」をテコに団地の切り売り、管理サービスの切り下げと団地管理の民間委託拡大に走りはじめていた。
 いわゆる住宅基本法の制定をめぐっては、1969年から93年かけて住宅基本法案、住宅保障法案などの名称で十数回にわたり野党から議員立法で国会に提出されたが、いずれも審議未了に終わった経過がある。住宅宅地審議会も75年と80年に2回答申をしている。この時期の政府答弁はやや前向きだったが、87年以降は「まだ過早」と一貫して消極的な姿勢をとりつづけた。それには「公団住宅の家賃変更問題が議論になったこと等が影響したものと思われる」と住生活基本法案参考資料(06年4月、衆院調査局)は記している。議員提案のほかに、いくどか民間団体から住居の確保を国民の権利として明確にすることを求める「住居法」の提起もあった。
 小泉政権になっての住生活基本法制定への動きは、かつて国民の要求を背景に野党が提起した目的、内容とはまったく逆方向のものであった。経団連が2003年6月に「住宅・街づくり基本法」の制定をよびかけ、住宅3法が成立する直前の05年6月21日にふたたび基本法制定を提言したそのねらいは、財界・政府の緊密な連係プレーのもとで同年9月26日に社会資本整備審議会の答申「新たな住宅政策に対応した制度的枠組みについて」としてまとめられ、基本法制定にむけて動きだした。
 小泉内閣は06年2月6日に住生活基本法案を閣議決定し、第164国会に提出した。この法案は住宅政策における「小泉構造改革」の総仕上げであり、その内容は、業界紙の見出し「住宅・不動産業界の憲法」、業界トップの声「住宅産業界の長年の悲願だった」「業者の価値観に基本的に一致する」が言いあてている。

『検証 公団居住60年』 東信堂


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