SSブログ

往きは良い良い、帰りは……物語 №97 [文芸美術の森]

往きは良い良い、帰りは……物語
こふみ会通信 №97 (コロナ禍による在宅句会 その12)
「茅の環」「白南風(しろはえ)」「パセリ」「裸」
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

当番幹事(一遅氏&紅螺さん)から連名で、下記のような≪令和3年7月の句会≫の案内が届きました。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
ワクチンだオリンピックだと話題の尽きない日々、皆さまお元気でお過ごしでしょうか。
今年2021年も、早や、折り返して7月です。今月も、恒例こあみ句会に、
ちょっぴりお時間と脳ミソを割いてくださいませ。
【今月の兼題】
1、茅の輪
2、白南風(しろはえ)
3、パセリ
4、裸 ★「裸婦」は季語ではありません。ご注意ください。
・投句締切:14日(水)
・投句一覧の配信:17日(土)
・選句締切:24日(土)
・結果発表:28日(水)
★選んだ天の句に関する鑑賞短文もお忘れなく。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

【上載の通知によって作成・投句された今回の全作品】は下記のとおり  17名  68句

【茅の輪】
海女くぐる 島の茅の輪に 天津風(茘子)
神妙に茅の輪潜りて無信心(可不可)
ワクチンの帰りにくぐる茅の輪かな(すかんぽ)
茅の輪くぐる神さまほんまにいてはるの(矢太)
誰もいぬ日の降る朝の茅の輪かな(小文)
ワクチンも茅の輪くぐりも済ませけり(孝多)
茅の輪くぐる盲導犬の淡々と(一遅)
篝火に誰とくぐらん茅の輪かな(玲滴)
お札受け茅の輪もくぐって よき未来(紅螺)
ワクチンの代わりに茅の輪ちょとくぐり(虚視)
茅の輪くぐりこの疫病を鎮めたし(弥生)
マスクして茅の輪をくぐる銀座ママ(下戸)
茅の輪をくぐるお医者と看護師と(鬼禿)
涙ふき くぐれくぐれよ 夜の茅の輪(兎子)
風一陣茅の輪目がけて吹き来たり(華松)
夕暮れの茅の輪くぐりし遠い恋(尚哉)
神などは信じてないが茅の輪あり(舞蹴)

【白南風(しろはえ)】
白南風や長き昼寝の籐の椅子(可不可)
白い紙ヒコーキ 高く 高く 白南風よ(茘子)
白南風や行方不明の兄帰る(矢太)
白南風にコロナの収束祈ろうよ(孝多)
白南風の吹き起こしたるうねりかな(玲滴)
午睡より覚め白南風の生ぬるき(虚視)
白南風やまとわる髪をかきあげつ(弥生)
白南風や初恋のアルバムに吹く(下戸)
会えぬ日々 白南風望む 彼もまた(兎子)
白南風や洗濯物をつかまえに(華松)
白南風やハバナのラムは棚に在り(尚哉)
白南風の青田撫でゆく掌(たなごころ)(鬼禿)
白南風の夕べは 野外 フェスティバル(紅螺)
白南風を命預けし女(ひと)と抱く(舞蹴)
あの人のワンピース舞う白南風の日(一遅)
白南風や江ノ島の風待つ白帆(小文)
白南風に佇てば島唄聞こえだす(すかんぽ)

【パセリ】
ニコルさんパセリの森を探検す(小文)
あの人の パセリでいいのと 笑ってた(兎子)
肉切りてパセリは少し血に触れる(虚視)
キミの名はパセリ控えめな皿の花(一遅)
食卓の花の代わりのパセリかな(可不可)
パセリつまむ爪桜貝 盲少女(紅螺)
良き水にパセリが育つ秘密あり(舞蹴)
お浸しにパセリが主役になる朝餉(玲滴)
木漏れ日やランチのパセリ小さき森(矢太)
パセリ残すそっとはずして皿(さら)の隅(孝多)
パセリ噛めば 胸に広がる青き花火(茘子)
俺料理もパセリ一枝で様になり(鬼禿)
定食のパセリは残る皿の端(尚哉)
わだかまり千々に刻んでパセリふる(華松)
残されしパセリの孤独じっと見る(下戸)
青き日の悔恨青きパセリ噛む(弥生)
あなたとは青きパセリのやうなもの(すかんぽ)

【裸】
父の撮りし水着の母の写真かな(可不可)
母と子の裸のにほい産湯かな(下戸)
早描きの 妻の裸身の 首の線(紅螺)
夕暮れの湯屋賑わふ裸かな(小文)
墨の絽に 裸 鎮めて忍草(鬼禿)
地獄見てなお美しき裸体かな(舞蹴)
鏡の前 一緒に老(ふ)けし我が裸(茘子)
銭湯の池の鯉みる全裸かな(すかんぽ)
海騒ぐ生まれた時はみな裸(矢太)
したたらせ裸を見せない海女(あま)歩む(孝多)
裸婦の肩陽ざしが踊るルノワール(玲滴)
濡れ光る刺青(しせい)半裸の男衆(虚視)
タオルもて裸の赤子抱きとりぬ(弥生)
其れは嘘 重ね続けて 丸裸(兎子)
東京の夜景にふわり裸のワタシ(一遅)
心ゆくままに夏野の裸馬(華松)
ゴヤ画集 裸のマハと目が合ひぬ(尚哉)

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
 
【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●鏡の前一緒に老けし我が裸(茘子)
★鑑賞短文=この歳になると「鏡の中の醜態」など一番見たくない代物のはず。
 それを作者は「一緒に老けし〜」と優しく私物化しておられる。
 その御身とそれを愛おしむこころ根に『天』。(鬼禿)

●あなたとは青きパセリのやうなもの(すかんぽ)
★鑑賞短文=パセリの存在を言い得て妙。この軽さが絶妙。人をちょっと幸福にする句。
(舞蹴)

●白南風やまとわる髪をかきあげつ(弥生)
★鑑賞短文=青い空に入道雲。待ちわびた夏がやってくる!作者の方の心待ちにしている思いが伝わります。まるでわたせせいぞうの世界ですね。(小文)

●母と子の裸のにほい産湯かな(下戸)
★鑑賞短文=生まれて間もない子どもの匂いは、なんとも言えない良い匂いだ。
 夏の日の夕方なのだろう。向田邦子の短編の世界を彷彿とさせる。(虚視)

●濡れ光る刺青(しせい)半裸の男衆(虚視)
★鑑賞短文=夏祭りでしょうか、神輿を担ぐ男衆の汗に光る刺青。日本の夏の懐かしい風景。(弥生)

●肉切りてパセリは少し血に触れる(虚視)
★鑑賞短文=鮮やかな血の色と濃い緑のコントラスト、不思議で妖しい魅力を感じます。(兎子)

●あの人の パセリでいいのと 笑ってた(兎子)
★鑑賞短文=新味にあふれ、そのうえ、内容・表記・口誦性と、3拍子揃っています。
 口語俳句の傑作です。良い句を示して頂き、有難うございました。(孝多)

●白南風や長き昼寝の籐の椅子(可不可)
★鑑賞短文=一瞬で、遠い日の夏のけだるい昼さがりが思い出されました。(玲滴)

●東京の夜景にふわり裸のワタシ(一遅)
★鑑賞短文=軽やかでお洒落で、優れたポスターを見るようです。(華松)

●早描きの 妻の裸身の 首の線(紅螺)
★鑑賞短文=助詞「の」を4つつづけて使っているのが面白い。
 首の線はきっと、「の」の字そのもの、なんでしょうね。(尚哉)

●わだかまり千々に刻んでパセリふる(華松)
★鑑賞短文=わだかまりを刻む、それも千々に。句意と季語がとても響き合っていると感じました。(すかんぽ)

●白南風の青田撫でゆく掌(たなごころ)(鬼禿)
★鑑賞短文=情景が目に浮かびます。素晴らしい着眼です。そして爽やかです。(茘子

●パセリつまむ 爪桜貝 盲少女(紅螺)
★鑑賞短文=視覚的なイメージを刺激する句。そこに盲少女の意外性。とても上手いですね。(下戸)

●白南風やハバナのラムは棚に在り(尚哉)
★鑑賞短文=いい時間ですね。飲兵衛はこういう句に弱いんですよね。(可不可)

●濡れ光る刺青(しせい)半裸の男衆(虚視)
★鑑賞短文=吉田修一の名作の一場面を見る様です、鮮烈な印象を受けました。(紅螺)

●干睡より覚め白南風の生ぬるき(虚視)
★鑑賞短文=夏の午後のけだるい空気感が記憶の中によみがえりました。(一遅)

●肉切りてパセリは少し血に触れる(虚視)
★鑑賞短文=うまそうで怖い、心象風景である。(矢太)

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
【今月の成績一覧】

◆トータルの天=虚視・49点
代表句=午睡より覚め白南風の生ぬるき
◆トータルの地=すかんぽ・36点
代表句=あなたとは青きパセリのやうなもの 
◆トータルの人=華松・29点
代表句=わだかまり千々に刻んでパセリふる
◆トータルの次点=一遅・26点
代表句=東京の夜景にふわり裸のワタシ

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
<幹事より、ひと言。雑感>
●今回、一遅さんが全てテキパキと的確に運んで下さって 、色々とても勉強になりました。夫々の方の選句を、時間をかけて見せて頂いて、句の趣が深くなりました。幹事、楽しかったです!(紅螺)
●天句が5個。4句中3句が天という虚視さんの圧倒的な勝利で、今月も終えました。
相撲でいうと白鵬状態ですね。今回、幹事をさせていただいて、選句のむずかしさも感じました。
作るも選ぶも、自身の句の好みの方向性をしっかり持たねばいけない。のですね。(一遅)

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

幹事さん、ご苦労さまでした。有難うございました。
得点・成績面では快記録も生まれました。おめでとうございます。各位のますますのご活躍を期待しております。
それにしても、東京オリンピックやら、コロナ禍やら、異常気象やら、在宅ワークやら。もう、うんざりです。早く終りますように。そして、みんなして集まって、わいわいと楽しめる日の、一日も早い再来を祈るばかりです。
来月(8月)もネット句会になりそうで全く残念ですが、皆さん、折角ご自愛のほどを。心も体も大切に。草々
              令和3年7月30日  多比羅 孝多

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。