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検証 公団居住60年 №79 [雑木林の四季]

ⅩⅢ 独立行政法人化して都市再生機構に改組

     国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

7 公団期の財務構造と経営状況―公団から機構へ 1
 都市基盤整備公団が住宅・都市整備公団にかわって設立されたのが1999年10月1日。しかし、翌2000年12月1日には特殊法人改革(「行政改革大綱」)を閣議決定し、2年後の新公団廃止をきめた。03年6月に独立行政法人都市再生機構法が成立し、機構が発足したのは04年7月1日であった。このあわただしさは、小泉「構造改革」のヒステリックな異常さのあらわれであるが、独立行政法人化して都市公団の何を変えようとしたのか。公団の主要業務についてはすでにみた。ここでは機構設立までの財務構造と、賃貸住宅事業の経営状況をふりかえっておく。この財務構造にも繍再編を創成理由があったように思う。
 都市機構の発足にあたって国土交通省の資産評価委員会は、都市公団とこれに統合する地域振興整備公団の地方都市開発整備部門からうけつぐ資産を設立時点(04年7月1日現在)で時価評価をした。賃貸用不動産(建物およびその敷地)は収益価格を標準とし、積算価格を比較考量して決定したという。これにもとづいてその前後のバランスシートを作成し公表している。
 機構は、昭和30~40年代の賃貸住宅資産を中心に含み益があった反面、地価下落の影響をうけ、ニュータウン事業、既成市街地整備等の保有地に含み損が発生したため、全体として債務超過とはなっていないが、約7,300億円の繰越欠損金が生じたと説明している。
 機構の開始バランスシートから分かるとおり、ニュータウン整備、既成市街地整備等の保有地資産に3兆円超の評価損が発生したとして、ほぼ半減させ、それをそのまま貸賃住宅部門にくっつけて資産額を35%もふくらませた。公団の賃貸住宅部門の利益は、以下にみるように、これまでも都市再開発、ニュータウン事業の赤字穴埋めの財源として役割をになってきたが、都市機構への移行によって賃貸住宅の資産額をふくらませ収益源として重点化していく方向をよりいっそう強めた。
 都市公団解散時における財務実績(都市基盤整備勘定)は、2004年度の貸借対照表と財産目録(04年6月30日現在)、03年度損益計算書(03年4月1日~04年3月31日)からみることとする。
   (都市再生機構の開始バランスシートと時価評価図略)

資産
 郁市公団解散時の資産合計は17兆8,948億円であり、固定資産である事業資産17兆2,936億円が96.6%をしめる。うち賃貸住宅資産は8兆2、522(事業資産の47.7%)、市街地整備改善資産2兆6,135億円(15.3%)、市街地整備改善建設仮勘定5兆2,780億円(30・5%)が主なものである。「市街地整備改善」とは、賃貸住宅管理以外の業務で、さきに列記した都市公団の主要業務である再開発、都市整備、居住環境整備等の事業をさし、その資産の多くは整備敷地等として販売され、これら事業の建設・仕掛り中の資産が建設仮勘定に数えられる。
 (2004滋養年度財務諸表―都市公団の解散にともなう決算略)
 (2004年事業年度損益計算書略)
 推移をみるため、2004年度の財産目録を1995年度のそれと対比すると、総資産は15兆2,626億円の1.17倍、うち賃貸住宅資産は5兆6,442億円の1.5倍、市街地資産(宅地および特定再開発資産の計)は7,114億円の3.7倍、市街地建設仮勘定は4兆4,840億円の1.2倍へと増大した。分譲住宅資産は事業の撤退により1兆9,147億円の0.2倍、3,844億円に縮小した。
 市街地整備改善建設仮勘定は、都市機構法案審議にさいし03年4月18日の衆院国土交通委員会において山口不二夫参考人が指摘した公団の膨大な不良土地、その地価下落の問題がかかわっている。財産目録も、都市機能吏新事業(みなとみらい21中央地区ほか13地区)、都市整備事業(南多摩地区ほか136地区、住宅131地区・工業6地区)、居住環境整備事業(仕掛り中の住宅1,705戸、施設7.4ha、用地142.7ha)と摘要に記すのみで、内訳金額は明らかにしていない。建設仮勘定の中身は、まさに「ブラックボックスで、そこにどんどん送り込んで、終わったときに一体どうなるんだろう」と、のちに元理事長小川忠男が語っている(社内報「まち・ルネッサンス」2012年6月号)。
 総務庁行政監察局の99年12月報告によると、公団の保有用地が建設仮勅定の状態から完成資産になるまでの回転期間は年々長期化し、96年に住宅用地は16.3年、分譲用地は18年になっている。また90年までは地価上昇による保有利益が用地の支払い金利である保有経費を上回っていたが、95年を境に逆に地価下落により軒並み保有経費が上回り、売上げが激減した。とくに宅地譲渡は原価割れの状態であった。
 総資産の46%をしめる賃貸住宅資産の内訳は、住宅が75万9.525戸、価格5兆2,538億円、賃貸住宅等の土地は4,812ha、2兆9,710億円、ほかに代貸施設等256億円がある。

『検証 公団居住60年』 東信堂


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