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浜田山通信 №286 [雑木林の四季]

全ては脱成長から

        ジャーナリスト  野村勝美

 緊急事態宣言もまん延防止をはさんで三回目となると最初の頃に比べなんとなく緊張感が欠ける。盛り場は若者で溢れ、近くの公園も行き場のなくなった家族連れでいっぱいだ。東京都のコロナ感染者数は今回の第3波で4月28日発表で925人、増加傾向は変わらない。昨年の春頃、新型コロナは老人がかかるといちころだが、若者はカゼ程度で大したことはないと盛んに言われ、新宿歌舞伎町などが話題になった。その後変異ウイルスが発生し、若年層にも患者がふえ重症化するケースも出てきたが、いまも20~30代は新宿、渋谷など盛り場に溢れている。
 全国の感染者は合計4月27日現在577466人、うち死者も10087人。まさに非常事態なのだが、途中少しでも下火になったかのように見せかけようとマンボウなんて気楽なものをはさんだがだめ、あわてて第三次緊急事態を宣言せざるをえなくなった。奈良県などはGoToイート再開を宣言したが、これもひっこめることに。もっとも緊急事態宣言も、東京、大阪、兵庫、京都など4都県だけ。小池都知事などは「大阪で困っているならヘリコプターで東京に運べばいい。2時間で到着する」と。東京は重症患者の病床は、確保病床の37,8%で、余裕しゃくしゃく。
 TVのワイドショーーなどを見ていると、米大リーグ、エンジェルス大谷翔平選手のホームラントップで先発登板、ベーブルースの記録に100年ぶりに並ぶとか、40年を越えた福井県の関西電力美浜・高浜原発の再稼働を決めたとか、ビッグニュースが飛び込む。なんとなく違和感が残るのは、3年ばかり前”紀州のドン・ファン”事件で元妻が加害者として逮捕されたというニュース。新型コロナ、変異型コロナばかりだとうんざり感もあり、TVはこれに飛びついた。
 一方で、私がびっくりしたニュースもある。もっともこれはTVではない。斎藤幸平さんの『人新生の「資本論」』が20万部も売れ、新書大賞を受賞したこと。浜田山のサンブックスという書店では大賞受賞で10部ばかり入荷したが、すぐ売り切れた。坂本龍一、白井聡らに絶賛され、あっという間に時代の寵児になった。1987年生まれだからまだ30代前半、大阪市大の准教授だ。 気候変動、コロナ禍・・・だからこそ読者の気持ちにぴったりはまる。白水社のクセジュ文庫から出たセルジュ・ラトゥーシュ『脱成長』など帯に「『人新生の「資本論」』の斎藤幸平氏推薦!」と、まるでおんぶだっこだ。S.ラトゥーシュはパリ南大学名誉教授。1940年生まれ、フランスの脱成長運動の指導的存在だが、訳者中野佳裕によると「老いはどうにもならない」とひと言返事をうけたそうだ。私と10歳以上違うからよくわかるが、ラトゥーシュ『脱成長』も<持続可能な成長>のインチキ性を暴く論稿としてもっと読まれてよい。

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