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バルタンの呟き №92 [雑木林の四季]

「2030年の挑戦?」

           映画監督  飯島敏宏

 西暦2021年2月19日、アメリカ合衆国NASAの宇宙船PERSEVERANCEが、約4億7200万キロという旅を終えて火星に到達したというニュースが、僕、バルタンの目に留まりました。でも、歓喜に沸くNASAの光景とは逆に、昭和7年生まれの僕の反応は、「ああ、とうとう火星が・・・」という、嘆きだったのです。少年時代から抱き続けてきた火星という赤い妖星のベールが、また一枚、剥がれてしまった嘆きです。
 僕だけでなく、同じ世代の昭和少年にとっては、当時、地球よりも、遥かに発達した文明を持つ謎の星だった火星が、いまや地球人類の果てしない欲望の対象になり、稀少金属の獲得、宇宙戦略の基地として、植民地化されてしまうのが、さらに現実味を帯びてしまった、という思いがあるのではないでしょうか。

 たしかに、現在では、不撓(サーベイ)不撓不屈(ランス)不屈と名付けられたこの宇宙船が、火星には、かつて水があり、何らかの生命が存在した、という定説を裏付ける物質を、今から10年後、2030年には地球に持ち帰るというのですから、生命の発祥、微生物から動植物、人間への進化を探る上で特筆されるべき出来事かもしれません。
 しかし、すでに、火星の周回軌道には、中国の宇宙船「天問1号」が存在していて、これも又、火星の探索、着陸の先兵として機会を窺っているといいます。最近、急速に、陸、海、空の軍事力を強化してきた一党独裁政権の中国に対抗して、アメリカ合衆国も、トランプ大統領時代に、宇宙軍を創設して、強力な軍事力を宇宙空間に広げようとしているのです。さらに、世界数か国が、月に続いて、火星にも宇宙基地建設を模索している、というのですから、遂に、地球人類は、地上では飽き足らず、自ら宇宙戦争勃発の危機を孕もうとしている、と言っても差し支えない状況ではないでしょうか。それとも、僕、バルタンの杞憂にすぎないのでしょうか。
 西暦2021年現在、地球人は、造物主の禁を冒して、許された物質存在の最小単位である原子核を分裂して、エネルギーを獲得したり、爆弾を製造したりして、自らの住む地球という星でのSDG‘sをほとんど不可能にしつつあります。それらが招いた環境破壊、恒常化した異常気象による災害から逃れるために、月には廃棄物を捨て、火星には稀少物質を求め、さらに、全地球はおろか、宇宙戦争への軍備増強に狂奔する事態です・・・
 今回の、PERSEVERANCE火星着陸成功の情報は、歓声を上げる段階を過ぎて、考えるだに恐ろしい道を突き進み始めた、と、僕、バルタンの目には映ってしまうのです。それとも知らず、ハヤブサⅡの成功に、無邪気に歓声をあげている我が日本の子供たちの、宇宙への夢、憧れを、絶対に裏切ったりしないで欲しいのです。

 今から、55年前、僕、バルタン星人は、SFテレビ映画ウルトラQ「2020年の挑戦」で、当時の近未来であった西暦2020年の地球を擬したケムール星から、環境悪化で肉体が劣化したケムール人が、地球人の健全な肉体を拉致しにやってきたのを引き継いで、次回作ウルトラマン「侵略者を撃て!」で、自らの天体を原子核爆発で損壊、居住不能にしてしまった宇宙流民として登場、地球に漂着して、極く微小なバクテリアほどの生命体として人類との共生を望んで拒否され、やむなく巨大化して地上を破壊、ウルトラマンに撃退される未来の地球人類の反面教師として登場した異星人でした。
 しかし、いま、現実の西暦2020年を迎えてみると、どうでしょう、かつて僕が、文系SFで想像した西暦2020年の地球では想像も出来なかった、遥かにシビアな現実(リアル)現実に直面しているではありませんか。世界中が為すすべもなく苦慮している、新型ウイルス、コロナの災禍です。人類自らが生み出してしまったとも疑われる、奇しくも太陽光(コロナ)太陽光と名付けられた、バクテリアよりはるかに微小なウイルスCovid 19が、地球上にグローバルな病疫と争乱の危機をまき散らし、僕自身がその恐怖に脅かされている・・・まさに、絶句、です。 

 そして、2020東京オリンピック・パラリンピックです。すでに、延期一年間の半ばを経ても、一向に、終息が見通せない国内感染の緊急事態を抱えながら、国民の65パーセントが開催を危ぶむ状況を押して、「人類がコロナウイルスに打ち克った証として、2020年東京オリンピック・パラリンピックを成功させる」という惹句を、まるで鸚鵡返しのように読み上げ、世界に宣言するわが国の宰相が何を根拠に宣言しているのかが、悲しいかな、僕、バルタンには、まったく理解できないのです。
 もともと宇宙からの来訪者ではなく、地球上に存在した、あるいは人類そのものが作り出したとも疑われるCovid19コロナウイルスは、すでに、変異型にまで姿を変えて、人類と共存しはじめているではありませんか。つまり、とっくに、人類は、コロナに「うち克たれて」いるのです! 
 まあ、僕、バルタンとして地球人に提案するとすれば、人類が生み出してしまったウイルスcovid19とは、ワクチンの手を借りてでも、なんとか病変性を抑えて共存を図り、今後、月や火星、そのたの星から、いかなる生命をも持ち帰らない、ということです。
 55年前の2020年に、バルタン星人が、「ウルトラマン」の科学特捜隊員ハヤタに、「セイメイトハナニカ?」と問いかけたように、日本のハヤブサが手をそめたイトカワにも、ハヤブサ2号が砂を持ち帰ったリュウグウにも、宇宙に無限に存在する惑星には、地球人が生命と規定する生命とは異なるセイメイが、存在するに違いないのです。
 まして、陸軍、海軍、空軍だけで飽き足らず、宇宙軍まで組織して、地球はおろか、宇宙までも、大金掛けて戦争を拡げようとする地球人・・・本当に、困った存在です。
西暦2030年、PERSEVERANCEが火星から持ち帰ると言われている火星の岩塊と共に地球に来訪するセイメイが、どうか、侵略者でなく、ウルトラマン、ウルトラセブンのように、子供たちの夢を育む光の国からの平和の使徒であってほしい! というのが切なる願いです。
 その頃、僕のセイメイが、僕の肉体を離れて、何処にあって、見つめているかは分かりませんが・・・


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