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雑記帳2021-2-15 [代表・玲子の雑記帳]

2021-2-15
◆「感染症は農耕社会を選んだ人類の宿命」?

オンラインセミナー「パンデミックを生きる指針」に参加しました。
講師の京都大学准教授の藤原辰史さんは、『浜田山通信』で紹介された斎藤幸平さんとならんで、気鋭の若手研究家。ふたりとも関西在住で、対談もしています。パンデミックは今が初めてではなく、それが起きた時代背景を振り返ることは今の私たちが今後どういう社会を望むのかの指針になると思います。

先ず指摘されたのは、感染症は農耕社会を選んだ人類の宿命だということでした。10万規模の都市が形成されることで、感染症は多発することになります。鼠が媒体となるペストの流行は何度もおきましたが、最たるものはヨーロッパ全土を覆った14世紀のペストでした。あまり知られていませんが、その時にもユダヤ人の虐殺がおきています。
その後の大航海時代、コロンブスの新大陸発見はヨーロッパの病原菌を新大陸に運び、植民地政策と相まって感染症はグローバル化していきました。

ちょうど100年前のスペイン風邪はまだ記憶に新しく、その時代の背景や社会の反応を見ると、なんだか身につまされます。
時は第一次世界大戦末期。兵士は世界中から参戦していました。そこでインフルエンザに感染したアメリカ兵が母国に持ち帰ることによって感染が爆発的に広がりました。感染者数は18億人、死者は4000万人から1億人にも上りました。(新型コロナでは感染者数は1月4日現在で77億人、死者は184.3万人。)運び屋が当時は帰還兵だったこと、今はツーリストですから、感染のグローバルな実態がわかるというものです。

感染症は病気の流行だけですむわけではなく、複合禍をともないます。
戦争とスペイン風邪は世界に飢餓や貧困をもたらしました。(第一次大戦は食料戦争だとさえ言われています。)コロナでも同じように貧困が指摘され、周辺では地震や津波、水害などの自然災害が起きています。そして、今また、世界の食糧危機が叫ばれているのです。
また、リスクにさらされやすい対象が、コロナの今は高齢者に対し、当時は元気な若者だったという点こそ違うものの、低所得者、清掃業従事者、ケア労働従事者だった点は今と変わりません。
アメリカではフェイクニュースがはびこり、マスク反対や精神主義が結構広く支持されました。また、アフリカなどの植民地でのずさんな管理ものちに明らかになりました。

遠く離れた日本にもスペイン風邪はやってきました。国内では米騒動が起きた年でした。
当時日本も台湾、挑戦、中国関東州、樺太に植民地をもっていました。植民地のインフルエンザの死亡率は、内地の8%に対し、13~35%というきわめて高い数字を示しています。
残された個人の日記や新聞記事から、右往左往する企業や人々の姿が昔も今も変わらないということがうかびあがってきます。

スペイン風邪から約半世紀後の1970年代に生まれたのが新自由主義の考え方です。
緊縮財政の強制、競争原理の徹底、生命領域(労働力と自然)の商品化をうたった、サッチャー、レーガン、竹中平蔵氏らに代表されるものです。
資本主義の利潤が増えないことから、新たな商売を求めて「規制」を突破しようとしたのでしたが、その結果、気候温暖化とともに起きた様々な問題に直面しています。
日本でも、小さな政府を目指して、中曽根内閣の民営化に始まる構造改革は着々とすすめられてきました。菅内閣の下では、いまも中小企業の再編やベイシックインカムがとりざたされています。政策はコロナ禍に対応できるのでしょうか。

新型コロナウイルスという「抜き打ちテスト」で、様々な問題点が明らかになりました。
1. 大規模自然破壊とそれに由来する気候変動
2. 非正規雇用労働形態の脆弱さ
3 男性中心社会の暴力性
4. 都市と大企業一極集中の脆弱さ
これらはすべて新自由主義の限界を示しているではありませんか。
興味深いことに、藤原さんはさらに言葉や文化の側面もあげていました。
5 言葉の破壊(詭弁に矛盾、「総合的、俯瞰的」の多用、など)
6 人文学・文化の軽視(政治と経済に集約された社会では歴史と批判が希薄)

一方、コロナと期を一にして鳥インフルエンザが猛威をふるっています。
鶏は摂取したエネルギーを肉に持って行きやすいように品種改良され、ゲージに詰め込まれ、免疫力が落ちているので、その結果インフルエンザにかかりやすくなり、抗生物質が与えられ、抗生物質に耐性をもつもっと強烈なウイル スに突然変異する可能性が出てきている 。コロナでも変異種が次々見つかっていますが、鳥インフルの変異にどれほど危機感を抱けているのでしょうか。

藤原さんは. 戦争の兵士と産業の「兵士」の類似的構造や、雇用者と被雇用者の搾取の関係、人間と自然の搾取の関係は、本来同根ではないか、といいます。
そして、 労働に関心をもつ人と、エコロジーに関心をもつ人は、結びつきが弱いけれども、衣食住、特に食べものが蝶番になると見ています。

ファストフードに席巻された食の根源をとらえなおす3つの視点として、藤原さんは植物の思想、分解の思想、縁食の思想を揚げました。①植物の知性に学べ(植物の根はすさまじいほどの知覚を持っているのです!)、②微生物の力を借りたエネルギー革命、③孤食と共食のあいだの縁食(えんしょく)の勧め、です。縁食の例にとりあげたのは、地魚や地場野菜を利用した今治市の学校給食でした。

小規模の共同購入、地産地消をすすめる学校給食、子ども食堂・・・、新自由主義に取り込まれることなく食を取り戻す活動は、今、地道ながら、様々なところに広がっています。
食の根源をとらえなおすことは、食量を他国に頼ることのない、持続可能な農業につながります。類まれな多様性を持つ小農列島、日本が世界をリードしていけるかが問われます。

◆アーノルド・ローベル展が立川で開かれています。
アメリカ生まれの絵本作家アーノルド・ローベルの日本初の展覧会が、立川市の「PLAY! MUSUEM」で開かれました。

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PLAY MUSIUMの正面

ローベルは「がまくんとかえるくん」シリ-ズで知られています。子どもが幼稚園の頃、我が家の本棚にもありました。
「ふたりはいっしょ」、「ふたりはともだち」の、「きみがいてくれてうれしいよ」という言葉にほのぼのとした想い出を持った読者は数しれません。 その「がまくんとかえるくん」のスケッチ約100点と同時に、隠れた名作の版画やスケッチも初公開されていました。

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ローベル展のポスター
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同時開催されていたエリック・カールの「はらぺこあおむし」の看板

PLAY! MUSUEMは絵とことばをテーマに、大人も子どもも楽しめる美術館として生まれました。
ローベル展でも随所にローベルの言葉がかかげられていました。勿論「きみがいてくれてうれしいよ(I'll be glad not to be alone)」もありました。. 
コロナ禍のわたしたちにぴったりのメッセージではありませんか。

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I am on my way!  「ぼくは自分の行く道を見つけたよ。」
幼い頃両親が離婚して母方の祖父母に預けられ、孤独な少年時代を過ごしたローベルが自分の才能にめざめて、絵本作家として立って行く決心をしたときの言葉です。

Don't preach me.  「お説教はまっぴら。」
求められてイソップの絵本を作ったとき、その教訓臭さが嫌だったローベルは、絵本の中で教訓をずらした落としどころを探したといいます。

I am the stage directer, the costume designer, the man who pulls the curtain.
  私は舞台監督、衣装デザイナー、幕を引く者だ。」
高校生の頃から舞台にあこがれていた作家の言葉の端々には、舞台につながる言葉が出てきます。

がまくんシリーズで、人は誰かとつながり、孤独でないことがどんなに大切せかを描くいっぽうで、かえるくんのこんな言葉が紹介されているのも面白いですね。
    しんあいなるがまくん
     ぼくはいません
     でかけています
     ひとりきりに
       なりたいのです

作品が出来上がったとき必ず自分で声に出して読み、作品のリズムを大切にしたというローベルにふさわしく、会場内には朗読のコーナーがありました。丸みをおびた木の壁や緑色の薄いカーテン、段ボールの展示台など、他所にない雰囲気を持つ美術館のスタッフは、みな驚くほど若い人たちでした。新しい形の美術館の今後が楽しみです。

「PLAY! MUSUEM」のある「PLAY!」は、昨年、立川市の一番新しい街、GREEN SPRINGSに誕生しました。子どものための屋内広場「PLAY! PARK」を併設しています。
CAFEではMUSIUMに関連したオリジナルスイーツも提供されます。コロナ下でも子ども連れの若いお母さんたちの姿が絶えませんでした。

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かえるくんのイラストが浮かぶカフェラテ
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同時開催中の「はらぺこあおむし」に因んだプチケーキ
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壁にはローベルの本のコーナーも。客は自由に手に取ることができる。


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