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バルタンの呟き №87 [雑木林の四季]


大晦日には月が出る!

                  映画監督  飯島敏宏

 波乱の令和二年がいよいよ歳末を迎えます。天気予報も、冬将軍来襲、今週からは冬型の気圧配置になり、ここ数年続いた雪なしの冬と違い、今冬は全国的に、大雪が降ると告げています。歳末恒例の流行語グランプリがコロナ対策で東京都知事がパネルで掲げた三蜜、清水寺御師の書も蜜、まさに新型コロナウイルスcovid19、コロナの年でした。
今年令和二年の初春、それまでは、新聞記事の片隅に、中国で蝙蝠由来の新型コロナウイルスが流失して、多くの感染者が武漢市街の海鮮市場で発生、というさほど大きくもない記事が出ていた程度の伝染性熱病が、豪華クルーズ巨船「ダイアモンドプリンセス」号に載せられて日本に来寇、船内パンデミックで感染患者が船内に溢れるままに係留、テレビ報道集視の内に行われた水際対策を高見に見物するうちに、すでに感染流行が始まっていた欧州からの帰還者も、春節休暇で訪れた中国主体のインバウンドも、ルーズな規制から内地に忽ち感染が広がって、この夏は、本来、2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催して、全世界に光輝及ぼす栄誉を担う筈だったニッポンが、コロナ禍拡大と、オリパラ大会の延期、インバウンド景気消失に狼狽するうちに、急失速した安倍政権を継いだ新首相が、国会の議決も待たず唐突に打ち出したGo to!経済振興策の混迷の渦に巻かれるままに秋を越えて、遂に、この稿を書き綴っている歳末の今日までに至ってしまったのは、皆さんご承知の通りです。
一時、コロナ対策日本方式などと、安閑と胸を叩いていた頃が、嘘のように、日に日に感染の範囲が広がり感染者数、重症者数、そして死者も増え続けています。
さて、「この三週間が勝負!」と菅政権の唱えたCovid19との闘いは、鬼滅ならぬコロナの刃に斃れて大壊滅です。その元凶は、コロナ感染対策分科会長尾身さんが声をからして訴え続けた通り、Go to!でした。 安いぞ、安いぞ、それ行け、やれ行けで、全国各所にGo to travel! eat! と感染パンデミックがばら撒かれて、いまや自衛隊員までが、敵基地攻撃能力のある武器も持たされぬまま対コロナ専守防衛の決死的出動!という騒ぎに、さしもの民度高い、慎ましやかな、権威に従順な日本国民も、あくまでも失政のそしりを怖れて看板を上げ続ける政権に振り回される現状に、不信の思いに囚われ始めたのです。
次々に各テレビ局に登場する感染医学の専門家の皆さんも、菅政権の唱え続けるコロナ対策と経済振興の両立、ウイズコロナは幻想であり、まず感染の終息に全力を傾け、感染防止が成功した後に、経済復興に本腰を入れるべき、と主張し始めていました。
人間の移動、密接な交流、飲食が感染を広範囲に広げている現状は、すでに政権が拘る科学的エビデンスを俟つまでもなく明白でした。週刊誌が報じるように、選挙対策と政権担当者の見得や情緒で、さらには経済浮揚に腐心する業界の要望や、国民の人気取りで奇異なコロナ対策を講じられては堪りません。
「重症化しやすい高齢者を守る」を標榜して、僕たち高齢者を家に釘付けにしたり、飲食店に、死活にかかわる時短を要請、さらには一家の交流団欒さえ遠のけ、企業には人員の移動を避けるリモート勤務を要請する一方で、コロナ感染未検査で陰性と信じている一般の人々、或いは、重症化の見えない若年保菌者たちまでを、観光事業振興のために全国的に拡散、移動(トラベル)し、パンデミックの最も起こりやすい食事会や宴会(イート)分野で、経済振興を図ろうという政策を停止するに足るエビデンスとは、いったい何だったのでしょうか・・・
新型コロナウイルスに関してマスコミ報道の他にさしたる知見のない僕が、わざわざ呟くまでもなく「国民の命と生活を守るために働く内閣」には、ぜひ「懇切丁寧に」説明していただき、一刻も早く、安心安全な、生活を取り戻したいのが、この年の瀬を迎える、大方の皆さんの望むところだった筈です。コロナ由来の艱難辛苦で不眠不休に陥られているのか、このところ、テレビ画面でも髪のほつれと窶れの見える東京都知事から、「高年齢の方々には不要不急の外出や、不要不急の・・・」と度々口にされると、実は内心では、僕たち高齢者が不要不急だと思ってらっしゃるんじゃあ、と僻みたくなるほど長引く蟄居生活に窒息しそうな超高齢者である僕ですが、このコロナ禍で、生活そのものの危機に見舞われている方たちに比べれば、格段に幸せなのだろうか。そう思っていた矢先に、遂に、ほんとうに遂に、Go to!全面的一時中止!の白旗が、しぶしぶ、掲げられたのです。支持率の急落に狼狽して、与党首脳に迫られての決断だと報じられています。

僕は今朝、ママ(カミさんの事です)に、
「せいぜいこれくらいの事はしなきゃ、罰があたるから・・・」
という自主的な申し出をして、作業衣(普通のジーンズです)に着替え、ブーツ(ゴム長です)を履き、園芸鋏(錆の出た)を握って、猫の額ほどの(狭いのです)庭をうろうろしたのですが、樹齢50年、最早老木になった紅梅、木蓮、満天星など数本の庭木の見苦しい部分にちょこちょこと鋏を当て終わり、腰を伸ばしかけて、
「うっ痛っ!」
そのままストップモーションでした。ギックリ腰か!の恐怖と、筋肉の攣りか?との判別に思い巡らせて冷や汗を流している時も時、
「だめよ!パパ(米寿の僕のことです)水分補給しなきゃ!病院で言われてるでしょう!ちょっと休んだらどう?お茶が入ってるわよ!」
朝方からせっせと動き回り、既に窓ガラスまできれいに拭き上げて、声を掛けてきたママの言葉で呼び込まれて、暖かいDKのテーブルで、何とかいう自家産のハーブの入ったお茶を飲み終わったところでした。
「臨時ニュースです」
あれこれ新型コロナウイルスのワクチン関係の情報を垂れ流していた画面に、GOTO全国一斉に一時停止という字幕が流れて画面が一変、菅内閣総理大臣が、机上に広げたメモから一瞬も視線を上げろことなく、
「全国一斉に、GOTOを一時停止します・・・・」
と読み上げたではありませんか。額には、汗が光っています。
「少々白内障が進み始めていますが、年齢が年齢ですからねえ」
と眼科の先生に言われた通り、やや霞んで見える総理の背後にあるボードが、僕には、無条件降伏の白旗に見えました。
「国民の命と暮らしを守る為に・・・コロナ対策と経済両立」
菅総理は、今日まで、鸚鵡返しの決まり文句でした。
この分では、一向に先が見えない状況のままに迎える大晦日になりそうだ、と思っていました。動かしたのは、民意です。声です。やはり、声は、上げ続けなければいけない、と改めて僕は思いました。

新年特別号だけは本屋さんで完売すると言われる婦人雑誌のお目当て付録らしい家計簿を広げて忙しく記入していたママが、唐突にペンを置いて立ち上がりながら言いました。
「晦日に月が出る・・・大晦日に、なにか思いがけない、有難いことが起こるかもしれない」
確かに、諺にはそうあります。見れば、ママの書き綴る家計簿には太ペンで大きな△が記されています。
「個人事業主の収益が、コロナの影響で去年を大きく下回った場合、事業継続の基金として最大200万円を支給・・・」
という文句が頭に浮かんで、現役でないけれど、著作物が発行できない、関連する各種イベントがコロナで中止に苛まれている僕も該当するのでは、などと考えを巡らせているうちに、防寒コートを羽織ってきたママが言ったのです。
「歳末ジャンボ宝くじ買いに行って来る!年末ジャンボ。一億円当たったらどうしよう、パパ!」
何事にもプラス思考のママは、この大晦日には、月はおろか、ありえないツキが出ると思っているに違いありません。その時、気が付いたのです。僕のカミさんは、丑年の来年、令和三年は歳女なのです。
僕たちの住んでいるこの街は、大手不動産会社が拓いて、大手証券会社が戸建て分譲した住宅地ですから、もと株屋さんが大勢います。今朝、早朝ラジオ体操会でその最高齢である方が、マスク越しにおっしゃいました。
「来年は丑年。牛に引かれて善光寺・・・さきゆき善い事が起こります」
「来るべき令和三年、西暦2021年は、コロナ退散、東京オリンピック・パラリンピック大会成功!インバウンド景気!株価高騰!経済発展!」
証券会社では、十二支が全部良いことづくめの解釈かも知れない・・・のですが。

 

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