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台湾・高雄の緑陰で №28 [雑木林の四季]

             2020年後半の台湾を顧みる

        在台湾・コラムニスト  何 聡明

  今年も師走に入った。先回の寄稿より約半年間に台湾で起こった大事をかえり見ながら、その一こま一こまについて私の見解を綴ってみたい。

(1)2018年の地方選挙で台湾最大の港湾都市高雄市長に当選した中国国民党の韓国瑜は職務怠慢を問われて、今年6月に罷免された後、8月に市長選挙が行われ、民進党員で高雄中学出身の高雄人陳其邁医師が当選して市長に就任した。高雄市民の良き選択であった。
(2)長年にわたり台湾最大の国内問題は今でも中国を祖国だと思い続ける者が人口の10%近くあり、その多くは戦後中国大陸より台湾へ亡命して来た人たちである。
   台湾には他に自分は中国人でありまた台湾人だと言う二股膏薬も10%ほどいる。香港生まれで2009年から2016年までの8年間中国国民党員の元総統馬英九は最近「若し台湾と中国が戦えば、<首戦即終戦(台湾は緒戦の日が終戦の日だ、即ち台湾は直ぐ負ける)>と台湾軍の自衛力を蔑ろにした発言をした。米軍は応援に来ないのかと問われると、「来ない」と答えた。馬氏はその執政末期にシンガポールで中国の習近平主席と会談してその親中態度を明らかにし、アメリカとの関係を疎かにしたことを自白した発言であった。輿論は馬元総統を痛烈に批判した。
(3)「アメリカ第一」と「もう一度偉大なアメリカに」と唱えたトランプ大統領は今年の選挙で連任の道を閉ざされたが、選挙に不正があったと訴える法律戦を続けている。
  トランプ政権は2016年以来中華人民共和国政府の猛反対を無視して台湾との交流と支持を高めた。台湾総統蔡英文はドイツ記者とのインタビュで両岸の平和を保つことにはやぶさかではないが、米台の緊密度を上げると発言、また米国国務長官ポンぺオは先月「台湾は中国の一部に非ず」と公言して中共政府を激怒させた。米国内外でトランプ大統領に対する評価は毀誉参半であるが、台湾人の多くはトランプ氏が4年間で野に下る事を残念に思っている。私はトランプ大統領が在任中に実行した親台政策に感謝する一方、彼の欠点はツイターを私見の表示に過度使用したことと、同盟国への思いやりが欠けていたことだと思ている。
(4)1978年12月中国共産党の鄧小平主席は改革開放政策を推進、2001年にWTO(世界貿組織)に加盟すると、日本を含む西側民主諸国は中国が経済発展をすれば民主化に繋がると信じて金融、経済、科学技術などを惜しみなく中国人に伝授したが、豊かになった中国は民主化するどころか、積み上げた莫大な資金を後進国と発展途上国への貸借に利用し、更に経済侵略的な「一帯一路」政策を推し進める一方、急速に陸空海軍の現代化と強化を謀り、2025年にはアメリカの軍事力を凌駕すると息巻いている。私は米国次期大統領のバイデン氏が中国共産党政権が目論む世界制覇に無関心であるはずはないと思う。
(5)米国が西太平洋の要である台湾を安易に中国にゆだねるとは考えられない。中国共産党政権は勝手に東シナ海と南シナ海は中国の固有海域であり、尖閣列島は台湾同様中国の固有の領土であると勝手に考え、台湾と尖閣列島の海域及び空域に侵入を続けているが、尖閣のような無人列島はなくてもよい、中国と戦争にさえならなければよいと考える日本人が多くいるではないかと心配である。中国人が北海道で土地を買い漁っていると聞くが、それが事実であれば日中貿易ではなく日本国土の切り売りである。
  
  結論として、バイデン政権は同盟国との結束に尽力するが、対中政策と対台政策はトランプ政権と大きな変化はないと思う。大多数の台湾人は台湾が共産中国に統一され、その一部になることを全く望んでいない。若し米国が台湾を放棄すれば中国が積極的に太平洋制覇に乗り出すのは明白で、台湾が赤化すれば「唇亡なくなれば歯寒し」の譬えどうり日本の安全にも影響を及ぼすであろう。米民主党政権が安易に中国の世界覇権を許すような政策を取れば、武漢肺炎(COVID-19)の蔓延で最多の死者を出し反中意識が高まっている米国人の更なる反発を買うであろう。
  去る20世紀、中国国民党と中国共産党は不倶戴天の仇敵であったが、今世紀は親密な兄弟党になりつつある。私は中国国民党が台湾から消えなければ台湾は良くならないし、中国共産党が中国から消えなければ世界は良くならないと考える。なお各国で武漢肺炎の蔓延が止まらなければ、
  2021年は2020年に続いて波乱の年になると思う。

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