SSブログ

コーセーだから №68 [雑木林の四季]

コーセー創業者・小林孝三郎の「50歳 創業の哲学」29

          (株)コーセーOB  北原 保

良心的すぎた商品も
失敗を乗り越えて前進

新製品の開発

 コーセー化粧品は昭和21年(1946年)創業以来1000種ちかい化粧品を開発してきた。その化粧品の中には一品で大変なベストセラーになったものもあれば、優秀な商品なのに売れ行きが悪くて倉庫に眠った化粧品もある。その一品一品にこめられた商品のいのち、成功や失敗が、いわばコーセーの歴史である。
 「とにかく、社長は化粧品の技術研究に大変熱意をもっている。昭和26年(1951年)にはじめて大学生を採ったがみんな研究員だったし、化粧品の研究レベルも高い。化粧品研究に新しい学問のセオリーを導入したのも自分たちだと思っていますからね。この技術の蓄積はコーセー発展の原動力です。これをちゃんと見通していたのは社長だったんですから……」(マーケティング・大野喜通次長)
 コーセー化粧品の歴史は大きく分けて--昭和20年代の創業から技術蓄積の時代、昭和30年代前半の高級化粧品時代、後半からキャンペーンがはじまり昭和40年代の需要創造時代が訪れる。
 創業時代の製品は、クリーム、ポマード、香水、香油、ホオ紅の5品目。原料不足でクリームが1年もたつとかちんかちんに固まった。それでも物が不足でとぶように売れた。
 昭和22年(1947年)にはトンボ鉛筆の工場を買収して粉白粉の製造をはじめた。最新式粉白粉製造機は業界随一だった。そのころコーセーの代表製品は「スキンパール」というクリーム。昭和26年(1951年)8月に八森雄三工場長(当時)が「パーライトスキン」というレモン色をしたクリームを開発して、これが当たりにあたった。
 今でも「パーライトスキン」のファンがいて、まだ製造しているというのだから大変に売ったコーセーのベストセラー商品である。
 昭和26年(1951年)には、大学卒の技術研究員が相当数入社した。が、まだ化粧品業界においては研究といってもこれという研究はなかった。研究員たちは自分で計測器をつくり、クリームのスベリとか伸び、夏冬変わらないやわらかさなど物理的、心理的な研究をした。「化粧品というのはやればやるほど広範囲な応用化学、さかんにコーセーの研究者たちは油脂学会とか社会心理学会で研究発表したが、会社はそれを積極的に援助してくれましたよ」
 この研究の成果は、昭和31年(1956年)からコーセーが一連の高級化粧品を製造する基盤になったといえる。昭和34年(1959年)に「ラボンヌ」という市場に類のない化粧品を開発して、これが大当たりした。次から次に価格差に応じた化粧品を開発するようになった。化粧品といえば、クリーム、化粧水などの基礎化粧品と白粉、口紅、ホオ紅などによる化粧が一般であったが各メーカーは化粧工程を10数工程に分けて、新しい商品開発に乗り出した。
 コーセーは「ラボンヌ」につづいて「デューク」(アルビオン)、「オーリック」を発表して市場の潜在的な欲求を引きだした。
 しかし、研究陣は成功ばかりしたわけではない。肌の弱い人向けに香料ぬきの「フォーテンダースキン」という化粧品を売り出したが、あまりに良心的で、失敗した例もある。
 昭和37年(1962年)にコーセーは、夏用ファンデーション「カラーケーキ」を発売し『汗でくずれない化粧』をうたって、8月の夏枯れ季節に売りまくった。これ以来化粧品はメイキャップ時代を迎え、需要創造期に入った。夏は若い女性をねらって一大キャンペーンに乗り出し、昭和41年(1966年)には『黒い化粧』とさわがれた「クッキールック」が大当たり、
 翌年は「ココルック」、昭和43年(1968年)には「タムタムルック」……「オーマイサン」とヒットを飛ばした。秋は往年のベストセラー商品オーリックコンパクトファンデーションが主役のキャンペーン「雅」、つづいて「麗」が人気を呼んだ。
 コーセーは24年前に、小林社長が竹の棒でクリームをかきまわした時代から、今はトータルマーケッティングで製品をつくりだす企業に発展した。                                            (日本工業新聞 昭和44年11月13日付

*パーライトスキン――1951年発売 200円 感光色素プラバノンを配合した黄色いクリーム。クリームは白という常識を覆した商品で、コーセー最初の大ヒット商品となった。ファンが多く、1976年まで価格を変えずに販売が続けられた。

68クッキールック発表会s.jpg
クッキールックのマスコミ発表会風景


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。