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浜田山通信 №273 [雑木林の四季]

アルコール不堪症

           ジャーナリスト  野村勝美

 菅義偉首相が、酒が呑めないと聞いてなんとなく親近感を抱いた。実は私も酒に弱く、新聞社に入ったころは苦労した。人間の集団はどこでも派閥をつくろうとして、学校や地方別に先輩が後輩に働きかける。そのとき連れて行かれるのは、会社の近くの呑み屋だった。私はビールならコップに半分ものまないうちに心臓が機関銃を撃ったようになり、死ぬ思いをした。
 酔っ払いを見ると羨ましくて仕方がなかった。なかには愚痴ばかりいう人もいたが、大部分はすっかりいい気分になり、大言壮語したり踊ったり歌ったり、心底羨ましく思った。
 お医者さんに相談すると、酒が呑めないのは、アルコールを分解する酵素が、日本人や東アジアの人間の2、3割になくて、いくら練習しても呑めるようにはならない。アルコール不堪症とでもいうべき一種の病気だと言われた。昔はよくTVのCMにアルコールが登場したが、酒が呑める薬をつくれば売り上げはグンとふえるだろうにと思った。とにかく酒飲みのあのいい気分、おれは人生の楽しみの半分を知らないで過ごさねばならないと思うと悔しくもあり、情けなくも思った。
 政治家で酒を呑まずに勤まるということが私には理解できない。酒の呑めない首相や有名政治家を思い出せない。TVのうわさ話によると菅首相は、酒どころ秋田の山の中で生まれたが、地元でも一滴も呑まず、高校を出ると上京、授業料の一番安い法政大学に入り、政治を志し、横浜市の市会議員に出て当選した。絵に描いたようなたたき上げだ。明治の初代内閣総理大臣伊藤博文以来、首相になった人間は70人ほどだが、新首相のような文字通りのたたき上げは他にいない。秋田県も初めてだ。
 甘いものに目がなく、ケーキや和菓子をむしゃむしゃ食べるそうで、私としてはつい同類項と思ってしまう。90年生きてきて、甘党で酒が呑めず、気のつよい力持ちに会ったことがない。
 安倍晋三前首相の父親晋太郎氏は、私が毎日新聞社に入った頃、政治部の遊軍みたいなことをしていていつも社内をぶらぶらしていた。同じ頃、いま立憲民主党の長老格になっている海江田四郎氏の父親は労農記者をやっていた。二人ともいい人で、後輩の面倒をよくみてくれた。安倍晋三首相は、母方の祖父岸信介にかわいがられて育ったので、戦争中東條内閣に反対した父方の祖父のことを知らなかったのだろう。どこに「アベ一強」などといわれた力があったのか、私にはわからない。
 とにかく前内閣が積み残した課題の多さには晋三氏ならずとも病気になるしかない。新型コロナはもちろん借金で、ニッチもサッチもいかなくなった国家財政、アベノミクスでうけに入っていた経済もGOTOキャンペーンくらいではどうにもならない。頼りの日米同盟だってどっちが選挙に勝ってももっと金寄こせと言ってくる。中国や韓国に対しても、まして人口減少、異常気象、まともな人間なら首相になどなりたいと思わない。

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