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往きは良い良い、帰りは……物語 №85 [文芸美術の森]

七月のこふみ会通信

     こふみ会文月幹事  岩永矢太・秋元虚視

◆こふみ句会 文月のご案内

俳句は座の文芸なり、と先人の言がありますが。
やはり句座で交じらわずの作句は、つまらない。
今月も、また「網句会」。架空ネットの句会です。
なので、選句のとき、天句に「鑑賞」を記して、せめてものの交歓を。
という仕組みを加えます。

●兼題 
 夕立 仙人掌(さぼてん)  夜光虫

●七月五日までに投句お願い。
●八日までに清記一覧にしてお送りします。
●十日、選句〆切。天句に鑑賞文を添えて、メールかFAXで送って被下度。
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七月十四日、選句結果の発表です。
総合天・地・人句だけでなく、個々の句にも、天と選んだ人の観賞文がついています。

◆成績発表!
総合天句 29点 「夕立や素足の裏の青畳」(鬼禿)
  ★艶っぽさと清々しさの「堆肥が見事ですね。(尚哉・天)
  ★夏の記憶が鮮やかに蘇る名句だと思います。触覚、嗅覚に訴えます。(紅螺・天)
  ★皮膚感が伝わってきます。夕立の湿気にちょっと湿った青畳の感触。(茘子・天)
  ★夏の急な夕立で大慌ての状況が、素足の裏と青畳で。身近で、しかも臨場感あふれる
   描写になっている。(舞蹴・天)
 ★濡れた素足に吸い付く畳の感触、ヤッパリいい。(珍椿・天)

総合地句 15点 「夜光虫たゆたう海の首飾り」(小文)
  ★本当にみたことのある方の感動が素直に現されています。作者は女性でしょうか。
   (鬼禿・天)

総合地句 15点 「夕立や一気に下る神楽坂」(可不可)
  ★流れ下る水の重量がみえるようです。脳に刻まれてしまいました。(華松・天)
  ★駆け足のようにやってくる夕立と、夕立に終われて駆けだす人々のダブルイメージが
    見事。(虚視・天)

総合人句 13点 「サボテンの酒とサルサと昼の月」(鬼禿)
 ★愉快なテンポがサボテンそのもの。(小文・天)

総合人句 13点 「わが胸の奥なる闇の夜光虫」(可不可」
  ★なんともざわざわする、怪しげな景色を感じました。(兎子・天)

以下、句ごとに個々の天鑑賞です。
音のない入り江のパレード夜光虫」(下戸)
 ★音のないパレードという言葉遊びのうまさ。そこから生まれる心象世界に共感しまし
     た。(一遅・天)

雷の落ちるや読経の乱れける」(尚哉)
  ★雷が鳴り、土光が乱れた時の、人々の表情や声音が湧き上がってくる。名句(下戸・
    天)

2020年デジタルの夏の夜光虫」(一遅)
 ★夜光虫でデジタルを逆連想した。どちらも地球の光として堆肥させた完成に脱帽で
     す。(矢太・天)

夜光虫 暑い夏です 別れです」(紅螺)
  ★口調がとても良い句。さらに、この飾らぬ表現によって、平凡にして非凡という傑作
     の域に達しています。有難うございました。(孝多・天)

夜光虫ただ一(ひと)夏の一(ひと)夜を生き」(茘子)
  ★夜光虫のけなげで悩ましいのが思いはかられます。(玲滴・天))

さぼてんの人の背を越え寡黙なり」(一遅)
  ★さぼてんは確かに寡黙だ。背を越えるほどの仙人掌でさえ。(すかんぽ・天)

宗達の雷出(いで)よ東山」(茘子)
  ★風神雷神図と東山のシルエットが目に浮かびます。どことなくユーモラスであり、壮
     大な暗示が好きです。(弥生・天)

夕立の 匂懐かし 佃島」(尚哉)
 ★嗅覚に訴える句は強いですね。(可不可・天)

錆色に化けると見えず夜光虫」(玲滴)
 ★無為に過ごす午後の、、苦戦ととなるような、ちょっと興奮を覚えるような感覚が伝
     わってきます。(美留・天)

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第603回こふみ会全句
◆仙人掌
サボテンの人の背を超え寡黙なり (一遅)
仙人掌を飽かずに見入る真っ金髪 (紅螺)
仙人掌の一鉢ありて夜は静か (孝多)
子供らは海へと駆けるサボテンの深紅(あか)(茘子)
仙人掌の鉢ぴんぴんと東京砂漠 (可不可)
久しぶりに家に帰れば仙人掌の居り(珍椿)
あっけらかんと仙人掌の黄の花開く(弥生)
仙人掌の棘に刺されて真っ赤な血 (舞蹴)
仙人掌の荒野ラスボス待つばかり (美留))
サボテンの酒とサルサと昼の月 (鬼禿)
嘘ついたら針千本よサボテンよ (矢太)
仙人掌の花赤赤と一夜の恋 (小文)
ベランダにぽあんと咲いた仙人掌の花 (下戸)
気をつけて母の声聞く仙人掌に (華松)
話しかけても無言夜の仙人掌 (虚視)
夜の藪見下おろし笑う仙人掌よ (兔子)
花言葉秘めたる情熱仙人掌 (玲滴)
サボテンの放ったらかしの花盛り(すかんぽ)
さやあてに仙人掌贈りたい気分(尚哉)

◆夜光虫
夜光虫の波を分けゆく舳先(へさき)かな(孝多)
2020年デジタルの星の夜光虫(一遅)
夜光虫暑い夜です別れです(紅螺)
夜光虫ただ一(ひと)夏の一(ひと)夜を生き(茘子)
わが胸の奥なる闇の夜光虫(可不可)
マスクアクリル板ででも触れて悲しき夜光虫(珍椿)
濡れた砂踏めば波間に夜光虫(弥生)
私は好きあなたは嫌い夜光虫(舞蹴)
漂ふは運命(さだめ)と決めて夜光虫(美留)
もどかしき青春の青夜光虫(鬼禿)
夜光虫は無口な海の言葉です(矢太)
秘めやかに気持ち交わして夜光虫(華松)
音のない入り江のパレード夜光虫(下戸)
真っ裸で抱き合ふ浜辺夜光虫(すかんぽ)
掌を揺らせば燃えて夜光虫(虚視)
桟橋を 巡りて怪し 夜光虫(尚哉)
埋め立ての入り江の底の夜光虫(兔子)
錆色に化けると見えず夜光虫(玲滴)
夜光虫たゆたう浪の首飾り(小文)

◆夕立
夕立をざる蕎麦食べてやり過ごす(紅螺)
線状降水帯と呼ばれ夕立とまどいて(一遅)
夕立にビーチパラソル待ちぼうけ(茘子)
夕立や一気に下る神楽坂(可不可)
夕立に下駄を鳴らして飛び込んで(珍椿)
夕立に打たれ涙の跡も消ゆ(弥生)
夕立や空から水が全部落ち(舞蹴)
夕立に追はれ神田の甘味処(美留)
夕立や素足のうらの青畳(鬼禿)
夕立や走る子も無き過疎の村(孝多)
夕立が地球の匂い目覚めさす(矢太)
夕立にたたかれ宿はまだ遥か(兔子)
立ち込める土の匂ひや夕立去る(虚視)
夕立に母のカレーを思い出す(下戸)
夕立は迷ひさらりと洗ひけり(華松)
夕立の 匂い懐かし 佃島(尚哉)
夕立や猫の喧嘩も今はなく(玲滴)
夕立去り呼吸する森唄う鳥(小文)
ナポリにはナポリの匂い夕立あと(すかんぽ)

◆雷
そら光る希望の兆しか雷か(兔子)
雷や飛び込む先は父の袖(小文)
別居中雷鳴って猫と目があう(下戸)
中古車の値札原色日かみなり(すかんぽ)
どろどろと野を渡りくる遠き雷(尚哉)
腹の虫雷おこし揺さぶれり(華松)
雷の落ちるや読経も乱れける(尚哉)
遠雷をパソコン切ってかまえたり(玲滴)
遠雷の先に故郷の漁村あり(一遅)
雷が横浜方面狙ってる(紅螺)
宗達の雷出(い)でよ東山(茘子)
雷(らい)去りて二人は顔を見詰め合う(孝多)
鉄塔に雷直撃して胆冷やしたよへぇーそー(珍椿)
雷(らい)遠くひたすら小さき布繋ぐ(弥生)
雷雲や戦は遠くまた近く(可不可)
雷が彼女の恋を通せんぼ(舞蹴)
私怨ある人より封書雷鳴す(美留)
何もない平日の午后の雷(鬼禿)
雷や排卵一日早くなる(矢太)
                                        以上19名76句

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