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浜田山通信 №265 [雑木林の四季]

「ポツンと一軒家」と新型コロナ

               ジャーナリスト  野村須美

 テレビ朝日の「ポツンと一軒家」が好きでほとんど毎回見ている。5月10日は、大分県の山の中、あちこちに一軒家が分散していて、放送局はヘリコプターやドローンを飛ばして探し出す。一軒でも家のあるところへは大分危なっかしいが、必ず車が通れる道が通じている。かなり崩れかけていて、倒木や岩石が細い道をふさいでいたりする。もとは何軒かまとまって住んでいた集落に違いなく、山道のほとんどは舗装道路である。林業などがまだ生きていた時代、どんな山道も舗装された。
 私の岳父は自分が父親と植えた山林を実家の婿どのにとられるのがおもしろくなく、毎日のように四里ほど離れた山を見に行った。それも5、60年ほど前にはアメリカなどから安い材木が入ってくるようになり、内地の山は見むきもされなくなった。同時に田畑まで潰して工場が建つようになり、山間部では食っていけなくなった。過疎からとうとうポツンと一軒家になり、私のような昔人間が懐旧の情とともにTVを見ることになる。
 一軒家の住人はどちらかというと一人暮らしが多く、それもおばあちゃんが残っている。この間見た大分県のおばあちゃんはありがたいことにこの地区に昔から伝わる神楽の舞を伝承していて、祭りの日は近くの村に出て行った元住民が神社に集まり舞うのだった。この地区には昔は小学校まであり、何十人かの生徒もいて、当時の写真も残っていた。小学校跡はおばあちゃんが畑にしている。こんな一軒家もいまの住民がいなくなれば、町やふもとの集落に出て行った子や孫が戻ることはないだろう。猿や猪が我が物顔に荒らし回り、日本全体で見れば東京一極集中がますます進むはずだ。
 私はこのところコロナうつだ。岩手県をはじめ東北や四国、九州など過疎県のコロナ発生はもう何日もゼロが続いている。私は子供が3人いて、娘は福井、長男は四国松山にいる。もう何日も新規発生はない。東京や大阪から人が行かなければコロナもないのだ。5月14日、北海道と首都圏、京阪神圏を覗く39県の緊急事態宣言が解除されたが、まだまだ安心はできない。
 1918年世界的にスペインかぜが大流行し、当時世界の人口20億人中5000万人が死去した。日本では人口5500万人、感染率42%、死者45万人。新型コロナの国内での感染者15862人死者678人と比べるとものすごい勢いだ。スペインかぜはインフルエンザだったが、それでもペストやコレラと比べると軽いので「スペインかぜ」とされたのだ。同時代に北陸では米騒動がおこった。私の祖母は米騒動に参加した話はしてくれたが、スペイン風邪の話はしなかった。たぶん当時も流行は都会に多く、地方では少なかったのだろう。こんどの新型コロナも緊急事態宣言で不要不急の旅行、外出を止めたら、東京、大阪より遠いところの感染はぴたり止まった。旅行、観光、飲食業界は大打撃をうけたが、人間の行動が新型コロナウイルスの感染拡大の要因であることははっきりしたわけだ。がまんするより仕方がない。


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