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私の中の一期一会 №200 [雑木林の四季]

  43歳のタイガー・ウッズがPGA史上の最多優勝に並ぶ通算82勝を日本で達成
        ~「ヒデキがチャージしてきて接戦になったが、勝てて良かった」~

          アナウンサー&キャスター  藤田和弘
 
 千葉県の習志野CCで24日に初日を迎えた「ZOZOチャンピオンシップ」は、日本で初めて開催された米男子プロゴルフツアー(PGA)の公式競技であった。
 今年は記念すべき第1回大会だったのに、21号台風の余波による記録的大雨に災いされ、雨天順延、無観客ラウンド、日没サスペンデッドなどがあり、日曜日に消化出来なかった残りホールを28日の月曜日朝に行わなければならないなどスケジュールは大巾に影響を受けた。これも“台風被害だ”と言えるかも知れない。
 日本で13年振りの出場となったタイガー・ウッズが、初日から首位をキープ、激しく追いすがった日本のエース松山英樹に3打差をつけ、通算19アンダーで逃げ切った。
 この優勝は通算で82勝目となり、故サム・スニードが保持してきたツアー通算最多勝記録82に並ぶ歴史的価値の高い優勝であった。
 不倫や離婚、交通事故に逮捕劇など、私生活でも数々のトラブルがあったタイガー・ウッズ。
 4度に及ぶ腰の手術もあって“限界説”もささやかれた過去がある。
 5年近くのブランクがあったにも関わらず、18年シーズンの最終戦ツアーチャンピオンシップで復活優勝を果たしたのは感動的であった。
 オハイオ州アクロンのファイヤ―ストンCC18番で、大ギャラリーが大興奮の歓声と共に通算80勝を祝福したシーンを私は忘れることが出来ない。
 今年4月のマスターズ優勝は通算81勝目、メジャータイトルは15となり、二クラウスの18まであと3勝である。不可能ではない。
 試合後のインタビューでタイガーは、次のようにコメントしている。
 「勝てるチャンスがあれば嬉しいと思っていた。5日間を戦って勝つことが出来て嬉しい。これからも頑張りたい」と語った。
  さらに「16番のヒデキのバーディは結構効いたよ、プレッシャーになった」と争いに絡んだ松山の健闘を称えていた。
 82勝目については「安定して長く結果を残し続けた結果、このようなキャリアを築くことができた。サムは50代だったが、自分は40代で82勝できたのは恵まれている。世界中でプレーしてきたが、アメリカ以外の場所で達成できてうれしい」と質問に答えた。
 この8月に膝の手術をしたばかりのタイガーだが、膝の状態については「高いレベルでプレーできるかどうか分からなかった。数カ月ぶりにしゃがんでラインを読めるようになって良かった。スイングにスピードも戻ってきたし回転も利く。でも痛みはこれからもあるだろう」・・・
 プロゴルファーでアメリカツアー経験のある田中秀道は、「タイガーは“神の領域”にいた。手術明けの実戦にも関わらず初日から首位に立った。3日目は29ホールの長丁場だった。ずっとトップに立ち続ける精神的、身体的負担は相当な筈だ。終わってみれば2位に3打差だ。凄い!というしかない」と恐れ入っていた。
 今のタイガーに若い頃のような圧倒的なパワーは感じられないが、43歳でも5日間競技になっても大丈夫な体力をつくったのは大したものだと思う。
 タイガーには劇的な試合が多くあるように思うが、“タイガーらしさが詰まったラウンド”を「タイガー劇場」と呼ぶことを知った。
 今回、日曜がサスペンデッドになって月曜日に残りホールをプレーした選手は46人だった。
 その中で優勝の可能性があるのは18アンダーで首位のタイガーと3打差の2位で15アンダーの松山英樹の二人だけだった。
 最終組のタイガーは残り7ホール、一組前を回る松山は5ホールでの攻防が焦点になった。
 12番パー4からスタートしたタイガーは、フェアウエーから打った2打目をミスして、3オン2パットのボギー発進となった。松山は13番パーだったから、いきなり2打差に縮まったのである。
 短期決戦の優勝争いの中にタイガーらしさの詰まった「タイガー劇場」の一端があったことを知ったのは、試合後のタイガーのコメントを読んだからである
 14番のセカンド地点から、15番グリーンにいるヒデキの様子を観察していたというタイガーの試合後のコメントだった。
 「ヒデキがピン近くにつけていたので、もし彼が決めれば、差は1打に縮まる。そう考えて彼の結果が分かるまで2打目を打つのを待っていた。彼が外したので、パー5のレイアップが楽になったよ」というもの。
 ここは重要だと思ったら、ショットをしないで松山をじっと観察する冷静さが常にあるということだろう。
 最終日のサンデイバックナインが難しいのは、常に冷静でいられず一喜一憂してしまうものだからだ。
 冷静さを欠くと次の一打に影響することは必至だ。大抵のプレーヤーは、分かっちゃいるけど何とやら・・であろう。
 タイガー劇場は、ギャラリーを含めてあらゆる角度から観察して、“気配”まで察知しようとするのではないだろうか。
 出た結論で熟練の技術を駆使するのだ。それでも、時にはミスが出るのがゴルフである。
 失敗の責任は全て自分が負わなければならない。
 14番パー5、タイガーは3打目をピン左上3メートルにつけていた。
 同じ方向から先にパットする「キーガン・ブラッドリーのパットも参考にした」とも言っている。
 タイガーは3メートルを沈めてバーディ、差はまた3打に戻った。 
 多分、後ろにタイガーがいることは松山英樹にとって重圧だっただろうと思う。
 見られることも覚悟していたに違いない。同じ組のほうがやり易かったかも知れない。
 最終の18番もパー5だ。タイガーを2打差で追う松山のティショットが右に出て、フェアウエイ右のバンカーに入ってしまった、残りは267ヤードだ。
 グリーンを直接狙うには、右前方にせり出している木が邪魔になるので20ヤードほどのスライスが必要だろう。。
 松山はその時「イーグルならワンチャンスだが追いつけると考えて3ウッドを抜いた。でも普通だったら3ウッドは持たない」と思っていた。
 一か八かにかけたショットは思ったほどスライスせず、グリーン左のバンカーへ・・・もう直接カップインしかない。祈るように打った3打目はかなりオーバーして万事休すとなった。
 「ギリギリを狙っていったので仕方がない。技術不足です。また一つ課題が見つかった」とは松山。
 タイガーは17グリーンでもヒデキを観察していた。
 「ヒデキがフェアウエイウッドで18番のティショットしているのが見えた。あまり気に入っていない様子だった」と右に曲げたことまでタイガーは把握していた。
 「18番ティに行くと、ヒデキが2打目を打つのが見えた。ギャラリーが拍手したり、歓声をあげていたので2打目をグリーンに乗せたのかと思った・・・」
 松山は2オンではなかったと知ったタイガーは、18番をバーディで締めくくり通算82勝目を手にしたのである。
 タイガーは「とても長い1週間だった。ヒデキがチャージしてきて、私もミスをしたから接戦になった。13,15番のパットも入ってくれたら・・と思うが、優勝出来て良かった」
 ヒデキとの戦いはタイガーの記憶に残る試合になるかも知れない。
 日本での勝利で世界ランク6位に浮上して、アメリカ勢4番目の五輪圏内に入った。
 史上最多勝82の更新、ジャック・二クラウスの持つメジャー優勝回数18まであと3勝・・
  タイガー劇場は終わらない!


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