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雑記帳2019-5-1 [代表・玲子の雑記帳]

2015-5-1
『知の木々舎』は10周年! 令和の幕開けと同時に11年目にはいります。

ちょうど10年前の5月、武蔵野の地から文化を発信しようとたちあげたのが、時間も空間も自由な、インターネット・マガジン『知の木々舎』でした。
試行錯誤のうち、半年後には、表紙と目次を備えた今の形が出来ました。

著名な執筆者の著書の転載から始まった知の木々舎でしたが、主旨に賛同した無償の寄稿が徐々に増え、これまでに100人を数える執筆者とご縁をいただきました。
多くの示唆をくださって亡くなった執筆者が何人もいる中で、野村勝美さんの「浜田山通信」は、『知の木々舎』の号数と同じ回数のロングラン、まだまだお元気で連載は続きます。

「文芸美術の森」「こころの小路」「雑木林の四季」「ことだま五七五」に分類されたカテゴリーと並んで大切にしてきたものに、「核なき世界を目指して」があります。
峠三吉や原民喜の詩の紹介のあとに、今も続いているのは、ともに広島で被爆した中山士朗さんと関千枝子さんの往復書簡です。
武蔵野からの発信にちなんだ「ふるさと立川、多摩、武蔵」のコーナーでは、次々に多摩の活動家やアーティストを発掘してきました。とだえている「文化としての環境日本学」も復活させたいカテゴリーです。

上質の、他にはないような品ぞろえを心がけてきた知の木々舎は、今、月間の読者は1万人をこえ、掲載した記事数は8,000余、アクセス総数も430万をかぞえます。
これまでにいただいた数々の激励を胸に、様々な知が集う場所として、新たなステージに向かいます。

◆磯沼ミルクファームは未来を変える牧場です。

2015年、国連は、「持続可能な開発サミット」を開催し、人間および地球の繁栄のための行動計画として、未来をかえるための17の目標、SDGs(Sustainable Development Goals)をかかげました。

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そのうちの12番目に、つくる責任、つかう責任がうたわれています。
物を買って消費する私たちにも、実はつかう責任があり、それは他の目標の達成にも深く関わっています。

例えば、つくる人の労賃、労働年齢や性別、労働環境が適正なものを使いたいと思えば、(1)貧困をなくそう、(3)すべての人に健康と福祉を、(5)ジェンダー平等を実現しよう、(8)働きがいも経済成長も、(10)人や国の不平等をなくそう などと、クリ-ンなエネルギーでつくられたものがいいなと思えば、(7)エネルギーをみんなにそしてクリーンに、(11)住み続けられるまちづくりを、(13)気候変動に具体的な対策を などと、また、地球と環境に配慮して生産・収穫した製品を選べば、(13)や(14)海の豊かさを守ろう、(15)陸の「豊かさを守ろう などと・・・。

一方、つくる側にも、SDGsに取り組む生産者がふえてきました、非営利団体のThenk the Earthが出している「未来を変えるSDGs」の中に八王子の磯沼ミルクファームが紹介されています。
牛と人の幸せな牧場をめざして、家畜福祉(アニマルウエルフェア)に取り組んでいる、磯沼ミルクファームを訪ねました。

京王線山田駅から10分ほど歩くと放牧場がみえてきます。牧場の横の坂をおりていった先に磯沼ファームの牛舎があります。

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殆どの牛が牛舎にもどったあとで、牧場の水飲み場に数等だけ残っていた。
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入口近くにある羊者の親子 まもなく毛刈りのシーズンです。
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ファームは今から60年ほど前、シベリアから帰った磯沼正徳さんのお父さんが牛1頭から始めたということです。1年に10頭ずつ増やしながら、今ではちょうど100頭になりました。。
平成1年から牛を放し飼いにして、首輪でつながない飼い方をしています。首輪でつながないのは牛にとってストレスが少なく、牛が自分のことは自分でできるようにするためです。食べる量を自分で決める、食べ過ぎないことでおなかの病気の予防になるそうです。いわば牛の食育です。
ストレスがあると牛は泣いて訴えます。泣かなければストレスはないと判断できるのです。 
幸せに暮らせるようにした結果、牛は気持ちよくお乳を出すようになりました。気持ちよく出した牛乳は甘くなるということです。肉牛ならオレイン酸がふえて柔らかい肉質になるのも同じです。

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餌の量を自分で管理する牛たちは食べ終わったら自然に後ろにいる牛と交替する。

現在、全国の牧場では130万頭の牛が飼育されていますが、99パーセントはホルスタインです。乳質がさわやかで乳量も安定しているので、飼いやすいといいます。
磯沼ファームでは、ホルスタインのほかに、ジャージー、ブラウンスイスなど6種の牛を飼っています。3種をブレンドした低温殺菌のミルクは東京で一番おいしいとの折り紙付きです。
種類の違う牛を同時に買うのは実はとてもむつかしいことすが、干し草を自由に食べられるようにすることで、クリアーしたということです。

正徳さんはさらに種類を増やしたいと言っています。
フランスの、モンペリアルドというチーズをつくるために、その原料となる乳を出す希少種の牛を飼育している農家があるのにならったそうです。決して効率はよくないが、ブランドを残す努力をしていかなければ、それにつながる文化を残すこともきないと正徳さんは考えています。
人工授精で生まれたガンジーという種類の牛にいたっては、牧場にわずか1頭しかいません。

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1頭しかいないガンジー牛のミウ
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4月に生まれたばかりのジャージー牛の赤ちゃんの名前はバンビ。

飼料は干し草のほか、フルーツや人参ジュースの搾りかすなど、植物性のものしか与えていません。動物性のものとしては、微生物を飼料に加えるだけで十分といいます。
かって牛骨粉などの動物性の飼料をあたえたことがBSE(狂牛病)を引き起こしたことは、酪農業界に苦い教訓となっています。
甘いフルーツは牛も大好きです。

すべてのミルクは母乳です。
赤ちゃん牛を丈夫に育てたいかあさん牛の愛情が、栄養たっぷりな甘いミルクになるのです。磯沼牧場では、「かあさん牛のおくりもの」と呼んでいます。
中でも、命がけで人間に奉仕してくれる牛のメッセージの入ったヨーグルトを作ろうと、日本で唯一、1頭のジャージー牛のミルクだけでつくるプレミアムヨーグルトが自慢です。
牛1頭1頭が名前をもっている牧場では、ヨーグルトにもかあさん牛の名前が記されています。

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かあさん牛のプレミアムヨーグルト

都市で酪農を続けるのにまず問題になるのはにおいです。
防臭対策として、近くにあるコーヒー工場ややチョコレート工場から出る、コーヒー豆やカカアのカスを牛舎に敷き詰めました。

そして、1頭の牛から700tでるという牛糞は堆肥になります。コーヒーやカカオの混じった堆肥はいい堆肥になるということで、近隣の農家だけではなく、全国から注文があるそうです。

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コーヒー豆のカスはにおいを消してくれる
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ふかふかの堆肥の山 内部は60度で発酵している

町のなかで共存していくために、牧場では、この他にも、毎週日曜日乳しぼり体験や石窯ピザづくりなど、見学者を受け入れて、様々な工夫をしています。

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ピザを焼く石窯
 
年間12回のカウボーイ・カウガールスクールは、子牛の名前を考えることから始まる、「牛と人のいい関係を作り上げていくプログラム」です。世話した牛が大きくなって、2年後にはかあさん牛になる、乳牛の一生の始まりのプロセスを共有することで、家畜、牧畜の理解を深めようとしているのです。

牧場を去るとき、ひだまりの丘の斜面に、今は珍しい日本タンポポを見つけました。東京といえども、八王子のこの辺りは、まだまだ豊かな自然がのこされています。

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