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検証 公団居住60年 №30 [雑木林の四季]

2.家賃格差を生む公団家賃高騰のおもな原因

      国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

 公団は1970年代、初の家賃いっせい値上げをする理由に「新旧家賃聞」だの、「公団住宅相互間」の不均衡是正をあげ、その立証の方策もないまま値上げに踏みきった。しかし、結局その立証は無理とわかるや、公団側はこれまでの主張を棚上げして、借家法のいう「経済事情の変動」一般にすがった。ここで新旧団地間に家賃格差を生んだ異常な家賃高騰の原因を確認しておくと、①地価、建設費の暴騰、②金利負担の増大、③関連公共公益施設負担金の増大などがあり、それらの原価すべてを家賃で回収する公団の「原価主義」の破たんの現われであり、政治的には政府の住宅無策に帰する。
 1)『日本住宅公団20年史』によると、6大都市の市街地価格指数は住宅地で、1955年を基準に65年で約10倍、70年は約18倍、73年になると約35倍にバネ上がった。住宅建設費は地価の高騰によって大きな影響をうけ、73年の戸当たり建設費は55年の約8倍となった。そのうち工事費の騰貴が6倍程度であるのにたいし、用地費の騰貴は約23倍という高率になっている。ちなみに、この建設原価が2年後の家賃設定に反映するとして、56年度を基準に75年度の新設家賃は、傾斜初年度平均で7.7倍、傾斜終了後は.9倍に驚異的は上昇を示した。
 2)公団の住宅事業はほとんど民間または政府資金からの借入れでまかなっている。政府資金とはいえ金利は7.6~8.2%と高利で、うち5%(面開発市街地団地では4.5%)分が家賃にくみこまれて居住者が負担している。それをこえる差額分を利子補給金として一般会計から支出する。建設費が増大すれば借入金はかさむ一方で、金利負担はふくれあがり、家賃の高騰をまねく。.81年建設予定団地の家賃のうち金利分が60.8%を占める。公共住宅の建設資金にたいする高金利、償却費、地代相当額として家賃から60%もの金利分とりたて自体が異常である。
 3)用地建設が自治体財政を圧迫し、「団地お断り」が60年代後半から出 はじめた。70年代にはいると用地費、建設費はさらに高騰して関連公共公益施設の負担金が、ますます原価主義家賃を押しあげた。上下水道、道路はもちろん、義務教育の小中学校の用地費や建設費、保育園、幼稚園、児童館から鉄道建設、あるいは駅前広場・駅舎、バス購入費などの負担金も家賃に含めている。1戸あたり100万円の税外負担であれば、その分だけで家賃は5,000~細0円高くなった。


『検証 公団居住60年』 東信堂

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