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検証 公団居住60年 №29 [雑木林の四季]

Ⅶ 公団家賃裁判一提訴から和解解決まで

      国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

1.公団家賃の決定と変更の原則一原価主義


 公団家賃は初めから高く、やがて新旧団地間に家賃格差が生じる仕組み、その格差是正を理由に既存家賃を値上げすることの非理についてはすでに書いたが、あらためて以下に、公団住宅家賃の決定と変更の原則をみておく。
 公団家賃の決定方法は、日本住宅公団法施行規則(建設省令)に定められている。家賃は、「①賃貸住宅の建設(住宅に必要な土地の取得および造成を除く)に要する費用(当該費用のうち借入金に係わる部分にたいする建設期間中の支払利息等を含む)を償却期間(耐火構造の住宅は70年、簡易耐火構造の住宅は45年とする)中利率年5分以下で毎年元利均等に償却するものとして算出した額に、②修繕費、③管理事務費、④地代相当額、⑤損害保険料、⑥貸倒れおよび空家による損失を補てんするための引当金ならびに、⑦公租公課を加えたものの月割額を基準として、公団が定める」(規則9条1項)。「前項の修繕費、管理事務費、地代相当額、損害保険料および引当金の算出方法ならびに償却の利率は、建設大臣の承認を得て、公団が定める。これを変更しようとするときも、また同様とする」(規則9条2項)とし、公団は別に業務方法書、団地管理規定、団地管理業務細則を設け、家賃決定の原本となる建設原価について定めている。
 ここで地代相当額とは、用地の取得・造成等に要する費用(関連公共施設費の負担金をふくむ)の借入金利分(4.5~5.0%)をいい、用地が自分の所有地でも土地利用の対価として家賃に算入する。公租公課は固定資産税、都市計画税をいう。
 ここに1981年度建設予定中層住宅(専用面積65㎡・バルコニー・共用部分あわせて74㎡、3DK~3LDK)の初年度家賃の構成モデルをしめす。5年傾斜で毎年5%ぐらいずつ値上げされ、最終97,000円になる。ちなみに、公団家賃は利潤をふくめず原価積算で算出され、公団は当初、家賃の構成モデルを公開していたが、家賃裁判では裁判長の文書提出命令をも拒むにいたった。
 以上が公団家賃の決定原則であるから、変更にあたってもこの原則は厳守されるべきである。公団家賃の基本原則は、①家賃は規則9条で規定された7要素で構成され、他の要素の介入、利潤の取得はありえない、②団地ごとの建設費と維持管理費は家賃で回収する、つまり個別原価主義をとっている。 
 この原則から、償却費(工事費とその利息分)と地代相当額は将来とも変動することのない固定部分であり、増額は許されない。それ以外は維持管理費であり、家賃決定後に変動することは予定される。だが維持管理費の変動をどういう方式で家賃に算入するかは定めていない。
 公団家賃の変更については、住宅公団法施行規則があり、入居者が公団とむすぶ賃貸借契約書には詳細かつ具体的に規定している。公団との賃貸借契約は、基本的には私法関係であり、民法・借家法の適用をうけるが、しかし同時に公団住宅としての特殊性にかんがみ、施行規則、契約書の規定は優先適用され、その定釧こ反する条項は無効とされるべきと考える。公団はこれらの規定を、賃借人たる国民の権利義務にかかわる事項を定めた法規命令とはみなさず、内部事項をとりきめた行政命令にすぎないと主張して、公団諸法令の適用を逃れようとした。
 たとえば、施行規則10条は「経済事情の変動」あるいは「住宅相互間の均衡上」による家賃の変更を認めている。しかしそれは、あくまで9条が定める家賃決定の基本原則の枠内での調整、変更の容認にすぎず、家賃変更にフリーハンドをあたえたものではない。賃貸借契約書では5条1号に家賃変更の要件をきわめて限定的に明記しており、この要件をみたすかぎり値上げできる。しかし公団は、これら要件は「例示」にすぎず、値上げ根拠は借家法7条1項にあるとして、契約書を無視する。公団は終始、公団諸法令、賃貸借契約書を根拠としては成立しえない主張をくりかえした。


『検証 公団居住60年』 東信堂

                                                        

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