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バルタンの呟き №48 [雑木林の四季]

    「新しい革袋には・・・」

                映画監督  飯島敏弘

明けましておめでとうございます。年号が改まって、なんだか、新しいことが始まる予感に、わくわくしています。昭和に生まれて、平成、そして、新しい皇歴年号を迎えるなどと、想像もしていなかった僕としては、さて、退位される陛下よりも一歳年長の人間として、ここから始まる新しい時代に生きるどんな意義を求めるのか、いささか混迷しています。

平成の天皇としての最後の誕生日に当たるという所為か、皇居の参賀会場に詰めかけた群衆は、新聞報道によれば80万人超だったと言いますから、おそらくこの新年の参賀で皇居に詰めかける群衆は、軽く10万人を超すにちがいありません。単に、これが天皇陛下としての最後の新年讃賀のお立ち台だからというだけではなく、風邪の症状を押してのお立ち台だったと伝えられた、あの、最後の天皇誕生日の際に述べられたお言葉に、多くの方々が感動したからに違いないと信じるからです。

天皇としての立場と、一人の人間としての自らの心情を吐露される真摯なお姿と、一言一言、熟慮しつくしたと思われるお言葉に込められた平和への希求に、決して、普段から人一倍に皇室を敬愛するわけでもない僕でさえ、あのお言葉には、思わず身を正すほどの感銘を受けたのです。先の昭和天皇の時代の戦争責任と被害者、犠牲者に対する贖罪と、恒久平和への献身に、自らの運命と一生を賭けた見事な生きざまに、同世代の人間として圧倒されたのです。そして、その生き方を献身して支え続けられた美智子皇后に対しての感謝の気持ちを、矜持を持ってストレートに述べられたお言葉に、皇室に生まれた一人の人間としての宿命を自覚して、良き伴侶の積年の内助を讃えつつ、ようやく完遂した喜びを感じ取ることが出来たのです。そして、さらにここで特筆したいのは、沖縄への特別な思いと心からの寄り添いの言葉を、特に添えられた配慮に、先の戦争で多大な犠牲を強いた上に、いまだに、明らかに不条理な米軍基地を押しつけ続ける本土の政権では成し得ない率直な謝意が横溢していたことです。

さらに神格化されていた天皇が、全軍の統率者としておかれた昭和の、すでに満州(中国)から始まって支那(中国全土)へと向かう侵略戦争の最中に皇太子として誕生し、次期神格天皇としての教育と実践を重ねるうちに、大東亜戦争(太平洋戦争・第二次世界大戦)の惨憺たる敗戦とともに、神格を喪い、象徴なる未知の存在への転換を迫られて、混迷する皇室を受け継いだ天皇として即位した平成天皇の苦衷は、計り知れないものがあったと思います。現に、人間宣言を行い、国民の安寧の目的で全国行脚を続けた父君、昭和天皇に対する、一般国民の、どちらかと言えば嘲笑とも取れるほど冷ややかな対応を見ておられた(現に、昭和天皇の帽子に対する仕草をあげつらって笑ったり、「あ、そう・・・」と受け応えされる様を、笑いのネタにすることも・・・)のですから。

しかし、お言葉の中で、自らの代を、国民の象徴としての皇室のあり方への繋ぎ、と総括して、見事に、皇室の国民の象徴としての存在を明確に国民に示して、次代、それを荷(にな)負(う)う現皇太子の歩む道を国民に知らしめた親心も、見事でした。

さて、京都清水の御坊が、昨年末に、平成最終の年の纏めと指摘した字「災」の通り、昨年は、地震、大雨、洪水、火事その他、実に災いが積み重なった年でした。しかし、その中で、もっとも憂慮すべき災いは、民主主義政治の糜爛と衰退ではないでしょうか、なかでも、最もも恐るべきものは、トランプ・アメリカに引っ掻き回されて混迷する日本の政党政治です。「オンリー・フォー・アメリカ」の同盟国と、一党独裁の下で「世界ナンバーワン」にのし上がろうとする中国との狭間で、中道の平和攻勢こそが肝要であり最も安全な道であり、それを堂々と標榜し得る「戦争をせざる平和国家」の憲法を持つ国であるにもかかわらず、戦商トランプ政権の言いなりに、膨大な軍事費をかけて超高額な米国製新兵器の購入という愚挙を恥じないばかりか、近隣アジア諸国との平和外交を推し進めようという意欲を、一向に示さない現政権と、それに抗する大同をさえ成し得ない野党、というジレンマにある現在の日本の政情です。

政党政治の失速と、議会政治の衰退から、抗する者なく、遂に軍人を首相と仰ぐ軍事政権の誕生、その独裁に追従する大政翼賛政治が、富国強兵の旗印の下に、植民、侵略、資源掠奪の戦争に突き進んだあの時代の政情と、経済成長を旗印に、多数を頼んだ国会無視の閣議決定を最高の行政とする現在の日本の政情とが全く相似することに、一般国民が、ようやく気づき始めた矢先に、平和への希求を、象徴として許される限り切実に、退位の「おことば」にこめられた事が、人々の心を捉え、その結果、最近の政情に無力感を抱き、恒久平和への漠たる不安を抱き始めた国民が、そのよりどころを皇室に求めて、平成天皇の在位最後の新年祝賀のお立ち台に大挙押しかけるという現象をもたらしたのではないでしょうか。今年の清水さんの文字が、「巻き込まれ戰爭」「滅」でなく、ふたたびの「和」であることをいのりつつ・・・

新年を迎えるにあたって、今年も、バルタンは呟き続けさせていただきます。「新しい革袋には、新しい酒を!慌てず、騒がず、じっくりとこの国の平和を醸し続けよう」と呼びかけるのが、せめて旧い革袋の・・・


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