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私の中の一期一会 №60 [雑木林の四季]

          特定秘密保護法案、衆議院本会議で採決を強行した巨大与党
~急ぐ必要がない法案を、国民の声を無視してまで何故急ぐのだろうか?~

                           アナウンサー&キャスター  藤田和弘

 国家機密を漏らした公務員らに厳罰を科すという「特定秘密保護法案」が26日、衆議院本会議で可決され参議院へ送られた。全野党が束になって「反対!」を叫んでも、圧倒的な数を誇る巨大与党に敵う訳がない。例え、みんなの党の賛成がなくても裁決前から可決されるのは分っていた。
 報道各社の世論調査でも、国民の大多数が慎重に審議して欲しいと願っていた。法案に反対する声も過半数に達していたにも関わらず、強行採決という決着になったのは遺憾である。
菅官房長官は「強行採決ではない。野党も賛同している訳だから・・」と色をなしたそうだが、どう見ても「強行採決」にしか私には見えなかった。メニューは「偽装ではなく、誤表示だ」という苦しい言い逃れに等しい発言に聞こえるのだが。
 砂川浩慶・立教大準教授(メディア論)は「緊急性もないのに数に任せて強行採決するところに安倍政権の本質が見てとれる」と新聞の問いに答えている。さらに、法案が成立したとしても、国民は運用を監視すべきだ。失政のツケを背負うのは国民だからと、法案の必要性は乏しいと主張している。
 政治学が専門の明大教授・西川真一氏は「従来の法制で対応できるのに、国家公務員の守秘義務の“屋上屋を架す”ような法案だし、公聴会では自民、公明推薦の人まで慎重審議を求めていた。民意と国会内のずれは大きい。廃案か審議継続にすべきだ」と、こちらも明快に否定である。
 私が一番分らないのは「何故そう急ぐのか?」ということなのだ。会期末が近いとはいえ、公聴会の翌日に裁決だなんて急ぎ方が異様に思えるではないか。
 専門家だって緊急性はないと言っているのに急いでいるのは、何か急がねばならない“秘密の事情”があるのか?と余計勘繰りたくなるのが人情だ。
 法案の衆院通過を受け、安倍総理は記者団に「40時間以上という大変長い時間をかけて熱心に議論して頂き、一部の野党も賛成した。この法律は国民の安全を守るための法律である。これからもしっかり説明していきたい」と述べ裁決の正当性を強調した。さらに「法案に国民の不安や懸念があることも承知している。これからさらに参議院の審議などを通じて不安を払拭していくように努めたい」と説明した。
 この発言を聞いて「そうかそれならいいや」と納得する人なんているだろうか。
 27日の新聞各紙の朝刊は「巨大与党の暴走が始まった」とか「知る権利の懸念が残る」、「民主主義の土台壊すな」などの見出しで国会に批判的な論調を展開した。
 アメリカのAP通信が「中国の軍事力増強に対抗するために、強い日本を望むアメリカは法案可決を歓迎している」と報じているとインターネットに出ていたが、アメリカ政府は秘密保護の制度が出来れば、日本と共有できる情報が広がるとみているのだ。やはり政権の顔はアメリカを向いていると見て間違いなさそうだ。
 ニューヨークタイムス29日の電子版は「日本の反自由主義的秘密法」というタイトルで幾つかの疑問を列挙している。日本政府が準備している秘密法は「国民の知る権利を壊す」と断じ、「何が秘密なのかガイドラインがなく政府は不都合な情報を何でも秘密に出来る」、「公務員が秘密を漏らすと禁固10年の刑になる可能性があるため、“公開”より“秘密にする”インセンティブが働く」、「日本の新聞は、記者と公務員の間のコミュニケーションが著しく低下すると危惧している」、「世論はこの法律に懐疑的だ」などなど、言わばボロクソだという訳だ。
 APも「当局が報道の自由を制限することで、日本が軍国主義に回帰するかも知れないと市民が懸念している」と伝えていて、総じてアメリカのメディアは法案の中身を評価していない。
 ドイツのDPA通信は「安倍首相は持論の国家主義的な政治課題を、力で推し進めている。国民は報道の自由の弱体化を招くと批判している」と伝えながら、法案成立の背景として「日本は従来の穴だらけの情報管理体制を嘲笑され、スパイ天国と言われてきた。首相はそれを変えようとしている」と日本の情報管理の甘さを指摘している。スパイ天国だなんて初めて聞いたが、そうだとしたら扱う人間の資質に問題があるのであって、法律を作れば解決するという問題ではないと思う。
 知る権利が阻害されると、例えば「原発で1万件の点検漏れがあった」とかJR北海道の「杜撰なレール点検」や「データ改ざん」だって表に出ない恐れがある。国民は知らないうちに事故で命を落とすことになるのだ。ドイツでも過去に機密を報じたジャーナリストが公務員秘密漏洩罪の「ほう助」容疑で捜査を受けたことがあったが、昨年になって報道目的なら刑事罰の対処外とする法改正を実施したという記事がインターネットにあった。日本の法案は、まだまだ議論を重ね、修正する必要があると思う。
 中国では国営新華社通信が「国会周辺で民衆の抗議に包まれるなか法案が採決された」と伝え、政府が任意に「特定秘密」を作れる機会となり、知る権利や報道の自由が侵害されるのではないかと疑問を呈している。
 韓国は北朝鮮と対峙してきたので国家機密の保護を重視してきた歴史があるので、目立つ報道はない。
 28日の毎日新聞朝刊10面に載った投書欄では5編の投書が紹介されていたが、特集でもないのに5人中4人が秘密保護法案に関する意見を述べているのが目立った。国民の関心がいかに高いかが分る。
 大阪市の会社員(45)は「陰鬱な気分にさせた強行採決」と題して概ね次のように言っている。「与党が数の力にものを言わせる強行採決を、これまで幾度となく見てきたが、今回ほど陰鬱な気分に包まれたのは初めてだ。多くの問題が指摘されているのに国会では有効な議論がなされていない。秘密指定の透明化と指定期間が経過したら徹底的な情報開示は不可欠だ。そうでなければ国民は底なしの「秘密」に呑みこまれてしまう」と有無を言わせぬ強行採決を批判している。
 札幌市の男性(79)は「国民の権利を奪う悪法廃案に」というタイトルで法案は必要ないという意見だ。「原案が出て2カ月ほどで拙速な法案の衆院通過に驚く。国民は何が秘密なのか知ることが出来ない。特定秘密の指定期間も60年に後退した。強行採決という暴走までする必要がある法案なのか。良識の府参議院の判断に注目し、廃案へ集会の輪を広げたい」と怒る。
 残念ながら、今の参議院を良識の府だと思う人は少ないのではないか。会期末までに成立を目論んでいる安倍政権は、再び強行採決して突破するかも知れない。伝家の宝刀は、抜かないから効果を発揮するのに、数に目が眩んだ安倍政権はすでに抜いてしまった。国民はバカじゃない、どうでもいいが支持率は下がるだろう。
 福岡の主婦(62)さんは「国会の自己否定では」という見方である。「国が持つ強大な権力を間違った方向に使わせないために司法、立法、行政の3権分立があると中学で習った。国会議員は行政をチェックするのが仕事ではないのか?そのチェック機能をミスミス手放してもいいのですか?自己否定につながる法案成立に手を貸すようなことをしないでいただきたい」と出来の悪い子をタシナメテいる如きである。
 相模原市の男性(62)は「知る権利を奪うな」と政権を批判する。私も殆ど同じ意見なので、チョット長いが全文を読んでみたい。「本来、国が保有する情報は非常に限られたもの以外は主権者たる国民のものだ。特定秘密保護法案には、その根本的なところが否定されて、まるで国家権力がすべての情報を握り、不都合な真実をその妥当性もチェックせずに特定秘密として永久に秘密のベールに覆い隠そうとしているように見える。国民の重要な権利の一つを奪うような悪法には強く反対する。これまでに充分な国会審議が尽くされたと、どれだけの人が思うだろうか。たった1回の公聴会を開催しただけで、しかも法案への反対が噴出した公聴会の翌日の裁決である。強行採決までやって成立させるのは、一体誰のためなのか。そして、なぜ今必要なのか。国民の声に真摯に耳を傾けず、民主主義のルールを踏みにじるような安倍政権のやり方には空恐ろしささえ感じる」
 安倍総理は9月に訪米してシンクタンクで演説をした。その時「私を右翼の軍国主義者と呼びたいなら、どうぞそう呼んでくれ」と言ったのはニュースになった。あの発言でアメリカのリベラル系メディアはますます安倍総理を危険視するようになったようだ。このまま中国を刺激し続けると日中間の戦争になってしまうのではないかと本気で恐れている。
 安倍晋三の危うさは、日本よりアメリカのメディアのほうが余程分っているという話も聞いている。このまま安倍政権でいいのかという問題が、特定秘密保護法案成立後に顕在化してくるような気がしてならない。


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笠井康宏

藤田さん、こんばんは。自民党アブナイカクの暴走が激しくなって来ましたね。結局、日本は「アメリカの言いなり」に過ぎません。こうなることは民主党が惨敗して時間の問題だなと予感してましたよ。ブレーキの効かない独裁政治で「格差社会」もより深刻になるでしょう。JR北海道は素人の私から見ても採算はとれません。分割民営化しても東日本、西日本、東海、九州とは乗車する人口が違いますし、車の移動が主流の北海道ではどうみても「ハンディ」があります。無理に利益を出そうとするJR北海道の歪みが「手抜きの点検」「レールの長さ問題」「後継者が育たない」原因があると思います。社員の努力だけでは無理です。根本から組織の見直しが必要だと思いますが…。
by 笠井康宏 (2013-11-30 23:17) 

笠井康宏

藤田さん、こんばんは。特定秘密保護法案が可決されてしまいましたが、国民の知りたい情報が隠されてしまうのが目に見えています。藤田さんのおっしゃる通り、「原発事故」「JR北海道のレール」に関する事項が国、当事者は揉み消すのに丁度いいと思っていますよ。「食品偽装事件」等、何時から日本はこんな情けない国になってしまったのでしょう?中国の嘘に匹敵します。残念で仕方がありません。
by 笠井康宏 (2013-12-07 22:14) 

笠井康宏

藤田さん、おはようございます。みんなの党が江田氏を中心に離党して、年内に「新党」を立ち上げるそうですね。私は「小沢さん」と同じく、「政党助成金」が目当てではないかと思います。離党して新党を立ち上げれば良いという訳では無いと思うのです。江田新党の「小沢流手法」に私は呆れていますが、期待は極めて薄いのは明らかです。所詮、みんなの党は自民、民主の寄せ集めです。野党が「内輪揉め」して一番喜んでいるのは、自民党の「アブナイカク」ですよ。
by 笠井康宏 (2013-12-14 05:40) 

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