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ペダルを踏んで風になる №49 [雑木林の四季]

みんな最初は初心者

                 バイショップ「マングローブ・バイクス」店主  高橋慎治 

さて、サドル位置とペダルにおけるシューズ(足)の位置関係は、身長差によるクランク長の割合を含む自転車における下半身のセッティングの基本と方向性をお話ししましたが、いよいよ上半身における身体の使い方につなげていきます。
前回までで自転車において皆さんのサドルの位置は概ね決まってきたと思います。
今度は、その【ペダル⇔サドル】からハンドルバーへの関係について掘り下げていきましょう。

自転車には、一般車であれば27吋とか26吋とか車輪の大きさでサイズを表現することが多いですが、スポーツ車においてはサドルの突き出ているシートチューブの長さを【フレームサイズ】という意味で自転車の大きさとして表現します。
ですから、皆さんに「自分に相応しいフレームサイズはどれくらいですか?」と問いかけてみても、スポーツ車の経験がなければ大概は見当もつきません。
サドルの高さからフレームサイズだけを決めてしまうことは実は簡単なことで、今までお話をしてきたサドル高の導き方以前に「両足のつま先が地面に着くサドルの高さ」でも単純に股下を目安にしてしまえば、多少のフレームサイズの違いはサドルが取り付けてあるシートポストの出しろの変化で対応できてしまいます。
しかし、サドルからハンドルバーまでの距離を決定付けるトップチューブとハンドルステムの長さの意味はサドルの上げ下げほど単純にはいきません。
使用用途からセッティングの決まってきたサドル位置におけるフレームサイズを適正とすると、小さ過ぎる場合は必然的にトップチューブが短いのでハンドルステムの長さを伸ばして乗車姿勢のキュウクツ感を払拭しなければならず、逆に大き過ぎる場合は長いトップチューブのおかげでハンドルバーまでの距離感を重視するとハンドルステムが極端に短くなり操縦安定性に問題を生じさせる恐れも出てきます。
それではどういうところからフレームサイズの適性をうかがい知ればいいものでしょうか?

現在のスポーツ車の多くのフレームデザインは【スローピングフレーム】というトップチューブが後ろに向かって下がっているものが多くなっています。
このフレームのデザインは、実は大変考えられた内容を持っていて、あえて先に欠点を言うならば「トップチューブが後ろ下がりで格好が悪い」といわれる主観的な好みの問題でしかありません。
長所と言われる特徴は、トップチューブが水平のフレームよりもフレームとして構成する三角形が小さくなることによる強度・剛性・軽量性・反応性・コスト率が相乗的に向上します。
レース用の自転車フレームの素材の移り変わりも古くはスチールからでしたがその後チタン合金やアルミ合金が利用されるようになり、現在ではカーボン繊維を用いたフレームが大勢を占めています。
このように、素材とデザインの融合によって最新のレース用自転車は生まれ、またそれが現在のスタンダードになっています。
話をフレームサイズに戻していきますが、スチールでレースバイクをあつらえていた時代にはレース用やツーリング用の自転車を問わず「自転車のたたずまいの美しさやバランスとして「ステムとシートポストの出しろとヘッドチューブの長さはほぼ同寸を好しとする」ということが言われていました。
ただし、これはポジションの出来上がったベテランサイクリストに当てはまることで、今回はスポーツ車でドロップハンドルの装着されている自転車において、初級のポジショニングからのフレームサイズの考察をしてみましょう。

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ここでドロップハンドルバーについて少し説明をしていきます。
ロードレーサー等に使われるドロップハンドルバーですが現在ではドロップ部分の形状にいくつかの特徴があり、その特徴を踏まえた上でポジショニングに反映させていきます。
ドロップハンドルバーのドロップ(下側のカーブ)部分の形状には大別してクラシックシャロー、アナトミック、コンパクトシャローと3種類のものがあります。
それぞれに長所・短所がありますので、そのあたりもポジショニングにおいては重要になってきます。

それでは初級のポジショニングにおけるフレームサイズとハンドルバー位置の関係についてです。
まずは完成車の自転車のサドルの高さを今までのセッティング内容で確認して決めてください。
次にドロップハンドルバーとハンドルステムの組み合わさっているハンドルバークランプの上面がセッティングしたサドルの先端部下面と同じ高さになるか確認してください。
このときドロップハンドルバーの種類はハンドルステムの長さや角度との兼ね合いもありますので形状はひとまず問いません。
先程のドロップハンドルバーとサドルとの高さが条件に当てはまるとき,アヘッドステムの場合はハンドルステムの角度が下向きで付属のコラムスペーサーを全て又は多くを下に入れた状態で、クイルステムの場合はハンドルステムのフォークコラムへの差し込みの上限付近でセッティング出来るフレームサイズが目安になります。
また、そのフレームサイズのフレーム上側のトップチューブの長さは、「トップチューブ長+ハンドルステム長」の合計長がハンドルバーとサドルとの距離になりますから、ドロップハンドルバーの形状によってはハンドルステムの長さを後々に変更する必要もあります。
また、フレームサイズの同じ自転車でもメーカーが違うとフレーム上側のトップチューブの長さは多少違うことがありますので、自転車のない方は自転車屋さんで実車を見る前にカタログやウェブサイトから気になる自転車のフレームジオメトリーでご自身のサドル高から各フレームサイズのトップチューブ長を確認してください。
ここでなぜ自転車屋さんで先に実車を見てはいけないのかは、お店のセールストークで「ピッタリですよ!」と「乗れますよ!!」では適したフレームサイズか否かの意味が違いますので、サイズの予習をしていかないと「乗れますよ!!」とお店の大きめか小さめの在庫車を押し付けられてしまいますので注意が必要なのです。
自転車屋さんの店員さんが知識や経験の浅い方でも、お客様にとっては「鶴の一声」になってしまいますからね。


ここで在庫のたくさんある自転車屋さんに行ったときに「このお客さん、知ってるなぁ!!」と思わせる一例を今までの内容を踏まえてミニコントでご披露致します。
※印は双方の「心の声」です。

店員 : 「いらっしゃいませ~! こんにちは~!」
     ※フレンドリーで、明るく難しくない印象でお出迎え~
お客様 : 「ドロップハンドルの自転車を考えているのですが・・・」
     ※少し緊張しているが、平静を装うように。
店員 : 「そうーすると、今だとロードレーサーでしょうか!?」
     ※そうですよねぇ~、そぅ~きますよねぇ~! よしきた!!
お客様 : 「サイズはどれくらいがいいかなぁ?」
     ※とりあえず、今日は確認だからね。落ち着いて。
店員 : 「そうですねー、スポーツ車のご経験はおありですか? この自転車なんかは乗れますよ!」
     ※たぶん初心者だな。量販的なメーカーと価格帯の在庫車で大丈夫だな・・・
お客様 : 「スポーツ車は初めてみたいなんだけど。でも、普段のサドルの高さは695㎜なんだよね。」
     ※やっぱりそうきますか。予習どおり、その①ですね。
店員 : 「そっ、あ、そうですか。」
     ※ええっ~、サドルの高さ決まってんの!? けっこうサドル上げないとダメじゃん!?
お客様 : 「ハンドルバーの高さは少し高めで、サドル先端の下面くらいから始めたいんですが。」
     ※少し態度が変わったぞ。 よし、予習その②だ。
店員 : 「そうするとー・・・(汗)」
     ※ええっー、なんでハンドルの高さまで指定してくるのー!?
お客様 : 「あっ、ステムは上向きにしちゃダメだよ。ハンドルバーの高さはコラムスペーサーで調整して。」
     ※最初からステム上向きで組んであるよw それ、予習その③だぁ!
店員 : 「わかりました~・・・(汗)」
     ※ありゃりゃ~w そうするとこれより大きいサイズでないと・・・
お客様 : 「ついでにサドルをもう少し前に出してくれる?・・・・・」
     ※「フレームサイズが大きくなるとシート角が寝るからサドルは前に出す」ってことだよね。
店員 : 「か、かしこまりました・・・(滝汗)」
     ※ひえぇ~w、もしかして、この人ベテラン? 何かの調査員??・・・
お客様 : 「お手間をおかけしますねぇ・・・( ̄∇ ̄;)ニヤリ」
     ※とりあえず、今日のところはこのくらいで勘弁してやるか・・・

まあ、店員さんとここまでの会話ができる時点で初心者ではないのですが、間違いのない自転車選びには欠かせないやり取りの一例です。

それでは次回は、ドロップハンドルバーの形状によるフレームサイズの解釈を上半身の使い方も交えながらお話していきます。
このところ「ペダルを踏んで風になる」の更新が月一の遅れ気味の入稿で大変申し訳ありません。
最近は少し難しい内容に傾倒していますが、サイクルスポーツを始めたいと思われる方の参考と勇気になればと思っています。
何でも初めは誰でも初心者ですから。

まだまだお話は沢山ネタがありますので、どうぞよろしくお願いいたします。
いつもありがとうございます。
m(_ _;)m店主

マングローブ・バイクス http://mangrovebikes.blogspot.jp/ 

 


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