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パリ・くらしと彩りの手帖 №20 [雑木林の四季]

2013年とはどんな年?

                            在パリ・ジャーナリスト  嘉野ミサワ

パリに長い私たちにとって過去何十年の間日本のニュースといえば、遅れて来る日刊紙だけが頼りだったものだが今から20年ほど前にJSTVと言う衛星テレビが誕生し、今はその第2放送というのまであると言うし、そうなるともう日本なつかし、日本恋しやも当時とは全く別なものとなってしまったようだ。あのテレビの始まった頃には、日本のものならば何でも見たいものばかり、民放の広告そのものにまで興味津々だったのを覚えている。それからの数年間は年末になると、このテレビがある家に古い日本人達が集まって、日本的な年越しを楽しんだものだった。パリにある食品店、それもおかず屋さんやレストランがこぞっておせち料理を競う時期もあった。大体が日本にいても食べないお節料理だったり、見ていないテレビ番組を急に見ても聞いてもピンと来る訳もないのだが、ともかくも一度どっぷりと日本的な雰囲気にひたる所がよかったのだろう。今年はそれが何と第63年目の紅白歌合戦“だと云うからには古い歴史そのものともいえるし、それに続く“逝く年、来る年”を持ってばっちりと、あの新しい年を迎える雰囲気にやられてしまっていたわけだろう。つまり、パリにいながらにして年末の日本にどっぷりと浸れるようになったのだ。とにかく、日本のNHKの放送を基軸に、民放を取り入れて、1日24時間番組を第1と第2、料金は現地の番組に比べれば高いけれど、NHKの報道番組は無料だから、時間が余る人たちにはもってこいだ。ロンドンで編集していると聞いている。

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みさわ21JSTV番組.jpg(以下略)
JSTVの番組

この新しい年、2013年に関してはノストラダムスが何と言ったとか、アポカリプスの年だとか散々に聞かされ続けて来たのだったが、更にこの年が、世界の終わりだなどという映画さえ作られているというからいったいどんなことになるのだろうか。それとも毎年の様にこういう事は云われ続けているのだろうか?

ここでちょっと考えを変えてみれば、この年をいかに良い年にするかは実は私たち自身にも多いにかかっているのである。経済危機はそんなに簡単には消えて行く筈はないけれど、個人個人の幸せや、健康、そして仕事の充実などのいくつもの事を考え合わせた時に今までにないほどの良い年になってしまうかも知れないのだ。パリの日本人会も変わったもので、老人ホームの相談会らしき組織も出来て、ここをすみかとして果てようという人々が助け合って寂しくない様にいろいろなプログラムを組んで活動しているようだ。私の母もここで26年間暮らしたことになるが、その母宛に来ていた呼びかけが今やそのままスライドして私に来ている。こちらも年に不足はないのだけれど、不足は“悟り”ということか。幸いいつも自分よりずっと若い人たちと付き合っているからか、何よりも年の自覚が不足していると云えるだろう。かつて自分の学生だった連中と今は親しみあるチュトワイエで会話を交わし、仕事まじりのニュースを交わし、食事をし、フランス以外の外国に住んでいるのが結婚すればそこに集る。こういう事を続けられるのも健康なればこそだろうが、時々ふと、何と幸運なんだろうと気がつく事もある。此れも平均年齢はグンと若くなりそうだが、日本の各社を代表しているホワイトカラー族の多い早稲田会などは近年は顔を出していないが、それもそのはず、1年を交互に、“飲もう会“と”ゴルフ会“にまとめてしまっていたからである。ゴルフの方はやってごらんと手に持たされてもやる気が起きないし、毎日の様にワインの試飲はしていても、とりたてて飲もうという気もないのだ。ただ、飲んだ事のないワインや特別なアルコールがあるとわかると黙っては通れない。ワインのコンクールなどは、フランスの農林省のはもちろん、あちこちで審査員として味わう喜びがあるし、外国でのそれにもいろいろと参加している。最近ではそこに日本酒などが、別種の飲みものとしてではなく、同じ飲み物のひとつとして出てくる事も多いからもう一つ面白くなって来た。今もいろいろなワインの雑誌に首を突っ込んでいるのが実情だ。だが、”知の木々舎“の様なインターネットの雑誌はリズムの早さがきついけれど、長い事付き合って来た、原稿—締め切り−印刷と長い時間をかけて、出来て来ると間違ったものが使われてあり、しかも印刷では手直し不可能とあってあとで歯ぎしりするほかはない。特に編集長よりも秘書の仕事でばっさりやられてしまうと泣きたくなるものだ。そして、日本のきめ細かさとちがって、こういう事がよくあるのがフランスなのである。不注意から来る事も多いし、それに秘書職の知識不足は甚だしい。私が、フランスの国立放送局での最初のラジオ番組を作った時、“12人のフランスの作曲家達”について、それから“フランスの美術について”のテーマでそれぞれ30分番組だったが、フランス人の秘書がそれらの固有名詞を殆ど知らなくて、タイプで打てなかったのはショックだった。それでもここのいい所は、一向に恐縮しないでいるという事かもしれない。おおらかといったらいいのか、そんな事は人生にとって、あまり重要ではないと云った方が当たっているのかもしれない。

さて、2013年の年頭のプログラムを見て行くと、その中には、ノートルダム大寺院の850年祭がふくまれている。1163年に出来た頃にここに住み着いた人も少なくなかったと言う。そしてここは常にパリジャンの祝いの舞台でもあったのだ。勿論暗いパリの舞台であった時期もある。革命やドイツ軍占領下のパリもあったからだ。1864年ごろからは革命によって傷つけられた大聖堂の修復に終始したという。こうして今回、年末にオープンした幾多のプログラムやコンサートは来る年13年の11月24日まで延々と繰り広げられる予定だ。850年前に作られ、今も厳然としかし優しくそびえる大聖堂、1831年に書かれたヴィクトル•ユーゴーの名作あり、此れを巡って今までいくつの物語が描かれて来た事か。そして今もなおパリの中心点として、パリからの距離を数える時にはここまでの距離が語られる。18世紀までパリジャンが聞き慣れていた鐘の音も2月には9つの新しい鐘によって昔通りの音が戻ってくることになっている。5月6日の大オルガンのコンサートは世界中に放送される。その他、数々のコロックや,展覧会など、時期を追ってパリからご報告する事もいろいろあることだろう。

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                              ノートルダム850周年

ところで、数日前日本の衛星テレビで異様な事を放送していた。それは日本の営業とダンスの事である。我が耳を疑って聞いたほどで、今日はまたフランスのダンスの専門記者と会ってその話をしたら眼をむいて驚いていた。つまり、日本の風紀の問題であり、営業権の問題という事らしいが、男女が体を付けて踊る事が出来る場所は何平米以上なければいけないしその営業権のない所では、音楽が始まって、人々の体が自然にリズムに乗り動いて来ると、店の人がお客さんに、動かないで下さいと注意するといった内容であったと思う。日本人の潔癖感もいいところがあるが、リズムに乗って体が動くのは人間の全く正常な反応ではないだろうか。そして、この家族で集るクリスマスや、友人達と過ごす事の多い12月31日のレヴェイヨンの夜においしい食事と団らんの後に踊る機会がなかったらそれは多くの人にとって物足りないことになってしまうに違いないのだ。そして、このような機会にいくつものカップルが誕生して行くのも自然な事である。男女の愛情は、それぞれの思考以上に他人にはわかりにくいアルファの部分があり、それがたった1回のダンスによって決まってしまう事も多いのだ。かくいう私は殆どダンスをしないけれど、ここに長く住み友人達を観察しているとそれを強く感じる。その人間としての自然な、重要な部分を、警察によって全部はがされるとしたら、そこにいる人間はもう自然ではいられないのではないだろうか。

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        仲良し二人(パリの恋人達の写真で名高いのロベール・ドワノーのシリーズから)

いろいろと理屈をこねてしまったようだが、人間としての自然を失わない事は、それは、それをカバーして隠す事よりも重要なことだと私は信じている。

さて、この年末にはもう既に初めてのパリに飛び込んで来てしまったという方もすくなくはないだろう。では一体どこから手をつけたらいいだろうか。パリのオペラ座のガルニエ宮殿の正面左横ではパリ発祥の歴史を秘めた映画を世界の言葉で解説している。たとえば日本語の勿論21世紀のパリも十分語られているし、ちょっと聞きかじりを得意になって他に説明するのも面白いではないか。新しいヴァージョンを選んで1時間鑑賞してから町に繰り出すと、とにかくすべてが違って見える仕組みなのだ。ここを出て、オペラ座を一回りし、正面右横に最近作られたオペラのガラス張りのレストランではなかなか気の利いた料理が出て来る。お値段も手頃で、それで、創造的な工夫もある。そして、この年末から 美味しそうなメニューで誘っている。そしてこれを味わったお客さんには今回そのレシピーをプレゼントしてくれると言うから、試してみてはいかが。Xマスは家族でともに,そして、大晦日の夜の方はレヴェイヨンの夜だから此れと決めた人と一緒に過ごすのが正道ということになるのだろうか。いやそれほどに真剣に考えなくてもよし、元もと自由に振る舞う事が何よりも大事と言うことだろうか。

レストランの部分はすべてガラス張りと深紅のデザインだから、ここに座って、あたりを観察するのもよし、されるのもまたよし、そしてまた、どこにいても我らは天下に二人だけ、というのもいいではないか。こういう時には、みんなそれぞれに、好きな様に過ごす事こそが大事と、パリジャンの様に振る舞ってほしい。大晦日のよるだけは交通機関が一晩中動いているから帰りの心配はない。翌朝まで続くレヴェイヨンも軒並みに違いない。 

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 オペラ座のレストラン

さて2013年がその人の人生にとって大きく変動することに決まったのは、何と言っても年末に選ばれたミス•フランス。何ヶ月もかけてフランス中の県をそれぞれに代表して来た美しい女性達の中で、新しい1年のために選ばれたのはブルゴーニュの美人マリーヌ•ロルフラン。彼女がミス•フランスと決まった瞬間に、アラン•ドロンのキスを受けて泣き出してしまった所。此れからの1年はフランスを代表する女性として、美しさだけではなく、頭の方もしっかりとした人格を持つ女性として世界の舞台でこの新しい仕事をこなして行かなければならず、現代では、かつての美人探しだけのミスとはだいぶ違った選び方になって来ているのだというからそのお手並み世界のあちこちで拝見したいものだ。

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                                ミス・フランス

それでは皆様の2013年、健康に恵まれたよいお年を!


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