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浦安の風 №56 [雑木林の四季]

昨日、今日、明日・・・そして「?」

                                     ソーシャル・オブザーヴァー  横山貞利

 夏の猛暑がいつまでもつづき、秋らしい秋がないまま、寒波が襲来し一気の真冬になってしまった。そして、新しい年を迎えた。しかし、70代後半の年齢になったためか、元日といっても昨日の続きであり、明日に続く一日にすぎない。子どもの頃のような心新な日として祝う晴ればれした気持ちにはなりようもない。1945年(昭和20)8月15日の敗戦体験を経て「ものごころ」ついた世代の一人として「この国のかたち」をみていると確実に変化してきていることに気が滅入り、どう対応したらいいのか迷いつづけている自分に気づいて困惑するばかりである。

 さて、わたしたちが拠り所としてきたのは「日本国憲法」を基礎にした戦後体制である。民主党政権は“オウン・ゴール(own・goal=自殺点)”で自滅して自公政権に戻ったが、安倍晋三首相は、戦後体制を「戦後レジューム」と称して「日本国憲法」を変えて、自主憲法と称する国家主義的な憲法に変えようとする動きを声高に唱えている。そうした意図は「国民主権」を主体とした「戦後レジューム」を切り捨てて1945年以前への回帰であって“アンシャン・レジューム”と言ってもいいように思う。
 確かに、安倍首相が敬愛する外祖父の故岸信介元首相を中心にした人たちは、毎年2月11日の「建国記念日(紀元節)」や5月3日の「憲法記念日」には、自主憲法制定を声高に喧伝してきた。安倍首相や石破茂幹事長の発言を聞いていると、故岸元首相の改憲理念を更に押し進めようとしているとしか思えない。
 岸信介という人は、「満州の三スケ(鮎川義助、松岡洋右)」と言われた“革新官僚”と言われた秀才であり、旧満州時代には当時の関東軍(カントン軍)の参謀長であった東條英機元首相とは「肝胆相照らす仲」として親交を深め、1941年(昭和16)に東條内閣が成立すると、岸は商工大臣に就いた。そして、東條内閣が「米英開戦」を決定し、天皇の「開戦の詔書」に副署している。また岸は、戦後には「60年安保改定」を策し、国民の間に“60年安保反対”の大抗議運動を引き起こしている。
 安倍首相は、そうした外祖父の政治的立場を受け継いで、再び内閣総理大臣になったが、少なくも7月の参議員選挙が終わるまで「改憲」を口にすることはないだろう。

  安倍内閣は、いま大型の2012年度補正予算を編成する作業を進めているが、問題は原資をどうするかである。更に来年度予算と合わせて15ヵ月予算にするということだ。どちらにしても原資がない以上赤字国債に頼らざるを得ない。しかし、12月27日の市場では投資機関が一斉に国債売りに出て、国債の利回りは8.0%にまで上昇した。また、外資相場は1ドル当たり85円前後の円安になった。円安は輸出には都合がいいが輸入には不利にはたらく。原発推進意向の安陪内閣ではあるが、そう簡単に再稼働できるものではないから、電力各社は当面石油や天然ガスに頼らざるを得ない。結局、円安分は消費者に負担が回ってくるだろう。
  更に安倍内閣は、金融緩和策と同時に日銀法を改正して「建設国債(と言っても赤字国債だが)」を直接買い取らせる“禁じ手”を取る、とも言われているし、インフレ・ターゲットを2%にして一層の金融緩和を日銀に求めているようでもある。確かに、デフレ・スパイダルから抜け出すためには考え得るあらゆる手段を動員する以外に策はないが、大手スーパーを含めて値下げ競争が激化しているうえに消費マインドが冷え込んでいる現状でどうやってデフレを克服できるのだろうか。安倍首相が言うほど容易いことではない。それにしても、GDPの2倍にも達している赤字国債にこれ以上頼るのは徹底的な議論をしてからにしてほしい。ただ、安倍内閣にとっては、ユーロ危機が緩和されつつあるし、米国経済もやや持ち直しつつあるから少しは有利な状況ではある。問題は中国である。

  それにしても、赤字国債を発行して公共事業を進め景気浮揚を図るという手法は、自民党が従来から採用してきた施策法だが、果たして今回も通用するのだろうか。少なくも民・自・公三党合意で決定した「消費税増税」を思い切って延期して消費マインドを回復するここのほうが先決であろう。

  しかし、国内企業は危機に瀕している。パナソニック、シャープ、ソニーなどの3月期決算は大幅な赤字の見通しであるし、機械受注も下げ止まりである。鉱工業指数も一向に改善されない。パナソニックなど優れた技術者が韓国などにヘッド・ハンティングされているということだ。かつて先端技術力でグローバル市場をリードしてきた経済界は、その中核が液状化現象・メルトダウン現象に陥っているのではないか。その上、尖閣諸島を巡る中国との深刻な摩擦は、中国国内に工場移転した中小企業を含む企業群を窮地に陥れている。いずれにしても経済の本格的回復がない限りデフレからの脱却は不可能である。
  安倍政権は、赤字国債による公共事業という“トンプク”を用いるけれども、景気回復の永続的効果を期待できないからデフレ克服など簡単にはいかない。
あまりに7月の参議院議員選挙に囚われすぎていのではないだろうか。

  こうした液状化現象・メルトダウン現象は、政治や経済だけの課題だけではない。教育や社会福祉などをはじめ、もっと大きく捉えれば家庭・家族の在り様や社会的モラルの問題にまで及んでいる。もう一度「日本国憲法」や「教育基本法(旧)」などの精神に戻って考え直し是正しなくては「この国のかたち」はいつまで経っても定まらないだろう。

  それにしても12月16日の総選挙の投票率は60%にも達しなかった。有権者は完全に“シラケ”てしまった。小選挙区制度は欧米のような二大政党制では有効であっても、この国の状況にあっては有効に機能しない。その上、小泉政権以来選挙結果のブレが大きい。特に、マス・メディアの事前予測が大大的に報道されると、それだけで投票意欲を阻害しているだろう。こうした報道はメディアの自殺行為に繋がりかねない。更に最高裁の「違憲状態」判決を今まで放置してきた政権与党だった民主党をはじめ各党の怠慢は許されない。「国民主権」は、「投票の公平性」が担保されなくて、何の“国民主権”か。また、政党交付金(所謂政党助成金)約330億円はすぐ廃止すべきだ。投票権のない赤ちゃんも一人250円を負担した税金で賄われているのだ。企業や組合など団体献金禁止のためという名分はご都合主義でしかない。何が「自らの傷み」などと言えるのか。

  それにしても、55年体制以来自民党政権が築き上げた「この国のかたち」は福島原発大事故という大惨事を招いた。それでも安倍政権は原発から抜け出ようとしていない。もう結構だ。

  しかし、再び同じ政治手法が始まりつつある。


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