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シニア熱血宣言 №38 [雑木林の四季]

         
    
三ノ輪橋・人情商店街

                                     映像作家  石神 淳

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                             三ノ輪橋電停

    
 
  世の中、イケメンブームなのだろうか。NHKの情報番組までが、何かと言うと出演者をイケメンと囃し立てる。「イケメンとは何ぞや」。女はそんなにイケメンに弱いのか。男から見れば、イケメンと呼ばれている男ほど、ナヨッポイ男が多いのにね。
 個人趣味的なイケメン発言は、愼んでほしいな。男には、ほどほどのアクの強い個性がほしい。『奮起せよ、泥臭く男臭い男たちよ』と言いたいね。
 現代の女どもは、男を見る目が無いと、情けなくなるが、どっこい実のところはそうでもなく、仲間同志で迎合し合っているらしい。パソコンの出会い系やフェイスブックにしても、本当のところ心癒されない。裏返せば、現代の孤独感を象徴している。
 媚びを売るテレビ番組が、お笑い芸人を遊ばせる場になりさがっている昨今。「NHKよお前までもか」と、情けなくなる。テレビが「一億総白痴」化の先導役をやっている現実を謙虚に見つめ、もっと芯のある番組を製作してほしい。こんなことでは、日本の文化・芸能は退廃の一途を辿ることになる。最近では、地デジ5channelの旅番組と、NHKのニース系番組になってしまった。後追い番組が続出、その上、取材が雜で構成が実に下手くそで見るに耐えない番組が多い。とくにBS番組はひどい。理念と根性のある制作者は居ないのか。

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                        三の輪橋商店街入り口
    
 早稲田から荒川区の三ノ輪橋を、チンチン電車が走っている。のんびりと走っている姿を眺めると、物事に動じない中年男を見ているようで、なぜかホッとするよ。イケメンなどは見かけないが、三ノ輪橋の平均年齢はかなり高そうで、こののんびり感が、何とも言えないんだね。若い人には、人生観をいちどリセットして貰わなければね。
 昭和33年、テレビの報道マンになった頃は、銀座・新宿を路面電車が我が物顔で、チンチンと走っていたんだよ。夜、菊政といったか、新宿裏通りの飲み屋で立ちションベンをしようと裏手の木戸をあけたら、チンチン電車が目の前を駆け抜け、腰を抜かしそうになってチビった。
 あの頃はよかったなぁ。街に人が溢れ人情も溢れていた。高度成長期に向け、勝鬨橋の開き納め、そして銀座通りのチンチン電車の最期も取材した。美濃部都知事の頃だが、生涯の思い出を、シッカリと脳裏にたたき込んだ。高度成長期に向け、モノトーンの世の中に色がつき、テレビもカラー化され、モノクロ映像を、あたかもカラーしたように見せる必要がなくなった。
 あの頃の取材は、事件や事故にしても、人との心の出逢いがあり、自分の人生を、その都度に、学ばせてくれる何かがあった。だから、今の自分が此處に存在している。
 遙かなる数々の思い出を脳裏に抱き、定年退職後16年。いつしか下町情緒を残した「三ノ輪橋商店街」の常連になった。なぜだろうか。ひとつひとつの店に対してではなく。街全体が醸しだす雰囲気に引かされ、自然に足が、練馬から三ノ輪橋に向くのだ。

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                   佃煮の安井屋、肉の富士屋、味噌屋の店先

 終点「三ノ輪橋」駅は、商店街(水曜定休の店が多い)と連なっている。
 チンチン電車を降りると、佃煮の「安井屋」がある。ここの海老の佃煮は天下の逸品で、我が家の食卓から消えると、明日にでも安井屋に飛んで行きたくなる。安井屋では、きゃら蕗も合わせて買う。少しずつ味見ができるセットを先ずはお楽しみあれ。私にとっては、佃島の老舗よりも気に入っている。
 ここからアーケードを歩いて左に折れると、広い間口の「肉の富士屋」がある。いわゆる昔風の肉屋さんだ。スーパーに較べて安くはないが、何を買ってもそれだけの価値があるので、牛肉と合い挽きは富士屋で買う。オヤジさんの面構えが、いかにも肉屋然としているのがよく、ちゃんと客の心中を見抜いている。数件先に、作りたての惣菜を商っている威勢のよい店がある。ここでは、揚げたてのデカメンチカツを齧りながらぶらつく。
 もう少し歩くと、左側に「ぱぱのえる」という自家焙煎のコーヒー店があり、5人も座れば満席の丸椅子でコーヒーを啜り、煎り立て豆を挽いてもらう。
 そろそろアーケードが尽きるころ、右手に「味噌専門店」がある。私は「会津味噌」が大のお気に入りで、味噌はこれしか買わなくなった。味噌が無くなると、朝が来てくれないので、切れぬよう冷凍保存している。会津味噌は、大根や茸と合わせると絶品ですよ。
 三ノ輪橋商店街は、老舗の連なるアーケードではない。ごくごく地域の人たちの買い物の場で、シャッターが締まり放しになる店が出ると、また誰かが別の店を始める。
 みんながこの町を愛しているからこそ、人情を肌で感じるのだろう。テレビで紹介されるような下町の商店街とはまた一味違う趣がある。
 「おじさん、まだ病院通い続けているの」「お迎えがくるまで、しょうがないよ」そんな他愛もないやりとりが、どこにでも溢れている町だ。
 現代は、アマゾンなどに注文すれば、明日にでも欲しいものが調達できる便利な時代。私もその(価格コム)の恩恵にあやかっている一人だが、物を買う憧れや満足感が感じられず、無味乾燥的な侘しさを感じているのは私だけだろうか。
 後期高齢者となり、親しく言葉を交わす友人も年々少なくなった。
 だから私は、12年連れ添った老車と旅に出るのが唯一の楽しみになった。人付き合いが煩わしくなったのも事実だ。もし運転が出来なくなって運転免許を返納する日が来たら、憂鬱で死ぬほど寂しい毎日だろうなぁ。
 近日中に『終活』を定め置くため、地域支援センターにアドバイスを求める気持ちになった。意地でも介護法の世話になりたくないがね。
 「おやすみ」と寝て、次の朝目覚めない。在宅で人生の最後を迎えたいと願ってはいるのだが、運命の神様は、はたして我が願いを叶えてくれるだろうか。   


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