猿若句会特選句集 №20 [ことだま五七五]
猿若句会特選句集20(2012年10月13日)
猿若句会会亭 中村 信
一本の石榴古刹を彩れり 柴田弘道
ひとり来て釣瓶落しの山路かな 佐貫千舟
逆らって生きる人生雁渡る 佐竹茂市郎
木には木の水には水の音も秋 伊藤 理
野分過ぐ関八州の丸洗ひ 丸本 武
みざくろの枝垂れを深くして熟るる 千田加代子
もうひとつ旅の楽しみ走り蕎麦 児玉竹子
◆猿若句会・十月例会の特選句集です。特選以外の秀作・佳作については中村信のホームページ《あ》[http://www5.ocn.ne.jp/~d-gerr/]をご覧ください。この電脳版パソコミ誌には俳句・連句・その他、ミニエッセイなど種々掲載しています。例によって一句だけを短評します。
[選評] <一本の石榴古刹を彩れり 弘道> 句意は書くまでもなくお解かりいただけるとおりですから、深読みをします。「古刹」から受けるイメージは何故かモノトーンです。墨絵のような古刹の庭に石榴の巨木が一本あります。石榴の実の先の方が割れた赤い粒の一点にズームインされ、その彩りが心を和ませてくれました。
古刹を彩っているのは実石榴です。彩りが実石榴であって、なぜ石榴の花でなないかというと、季語の「石榴」が実石榴であって中秋だからです。この句は兼題「石榴」から生まれた一句で、誰もが最初からそう解釈します。つまり季語というのは、一つの約束ごとでもあるわけです。石榴の花を読む場合は「石榴の花」または「花石榴」と詠み、季節は(仲)夏になります。
俳句を発表する際一般的にはルビをふりません。そこで贅言ですが、「一本の」の読み方は「いっぽんの」と読まずに「ひともとの」と読んだほうが句が活きてきます。「いっぽん」と撥音になるとなぜか句柄が悪いような気がします。
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