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60年安保闘争から50年 №22 [雑木林の四季]

篠原浩一郎氏の証言 №11

                     早稲田大学国際教養学部教授       森川友義

 ●70年安保以後
――では、70年安保について。
■あの時私は日本精工の工場にいましたね。一度だけ刑事が来て「滝本はどこにいるのだろう」と訊きに来たことがありますね。「田中清玄がかくまっているという噂がありますがどう思われますか」と。そんなこと知りませんがね。唐牛はあの頃、押しかけ女房のような感じで70年安保を手伝っていましたよ。後で話を聞きましたが。清丈や北小路が「もう一度戻ってきてくれ」と頼んだらしいです。私のところへは来なかったけれど。唐牛も何かやったんだろうけど、若い人たちが主体で、もうまさにシニア組になっていましたからね。
 ですから、私は70年安保にはまったく関わっていませんし、知らないんです。後で篠田と付き合うようになって、彼からちょこちょこ話を聞くようになりましたが。
 しかし、血みどろの分派闘争などは私たちの時に種をまいたようなものだし、それを収拾もしないで辞めちゃったので、若い人たちに申し訳ないという気がしています。
――唐牛さんとは亡くなられる前までには。
■無二の親友でしたね。彼が結婚式を挙げたのは何年だったかな。61年だと思います。二度目の結婚の時は連絡がなかったんですが、最初の結婚の時は田中清玄はいなかったかな。草間がいたのかな。草間さんというのは「日刊労働時事通信」というのをやっていて、我々の運動を応援してくれていたんですが。お嫁さんの家で結婚式を挙げました。津坂さんと言って、北大では有名な女性闘士でした。美人でしたね。
――学生結婚されたんですか。
■学生ではないね。唐牛は退学だし、奥さんも卒業してたんじゃないかな。しばらく食えなくて、青木のお袋がやっているニューオータニの焼き物の店を手伝っていました。
――青木さんもいろいろと…。
■青木とも大変馬が合ってよく遊びに来ましたよ。思い出せばくだらない馬鹿話ばかりですね。
 唐牛は84年に死ぬのですが、中野のお寺で密葬をするのです。私が幹事役でしたが、葬式の日に私が責任者の日本精工の営業会議が大阪でありました。お通夜を済ませて、葬儀は篠田に頼んで、大阪に飛んで行き、出られませんでした。当時会長だった今里さんから翌日呼び出されてこっぴどくしかられました。「親友の葬式にも出ない、そんな男と思わなかった。君には失望した」と。唐牛を思う気持ちが溢れていて、一言も無かったですね。
 青山斎場の葬儀は赤字になって足りないお金を当時の社長だった長谷川さんが出してくれました。
――最後に、現在事務局長をなされておられるBHNテレコムに関して教えていただきたいと思います。世界中駆け回っているようですが。
■はい。この団体は92年に創立された団体です。その当時も先進国と途上国の電話の普及率に大きな格差がありました。その格差是正を目指そうということで出来たのがこのBHNテレコム支援協議会です。
 最初設立の時には事務局長は別の人がやっていましたが、この人が大変有能でしっかりWHOから仕事を取ってくるような人でした。
 ところが、脳卒中になって後任が必要になりました。小島氏が頼まれて創立の頃から手伝っていたんですが、その関係で私も時々手伝っていたんです。それで前任者が倒れたということで、私がやることになりました。例のベンチャー企業をやっていましたが、内紛があって追い出されてフラフラしていましたし。また会社に復帰しようと思って、それまでの間手伝おうと思っていたんですが、そのうち会社よりこっちのほうが面白くなってしまいました。
――何か最後にございますか。
■私たちの学生運動というのはレーニン主義、労働者を前衛として暴力的に権力を取るということを考えていました。日本人というのはそういうのが好きですね。議会を使ってやる方法もあり、構造改革と言ってそれを実行している一部共産党もありましたが。そういうことをもっと真剣に考えれば良かったのかなと思います。
 暴力的にやるというのは話は簡単で良いんですけれどもね。しかし後に何も残らない。一歩一歩積み上げていくことが必要だったのかと思います。ドイツなんかはそういう社会民主主義がよく整っています。理論的に非常によい政権だと思っています。元々がレーニン主義の暴力革命にこだわってしまったと言うのが実感ですね。
――大学時代はレーニン主義に傾倒されたと思いますが、それを離れたのはいつ頃になりますか。
■そうですね。日本精工に入って労働運動を始めてからでしょうね。労働者の幸せは一人一人異なっている、それをひとくくりに搾取された階級と規定するのは、政党や組合指導者の自分の都合でしかない。結局、かれらもまた官僚組織になってしまって自分の都合の良いように組織を運営していくだけだと分かりました。

『60年安保 6人の証言』同時代社
同時代社のホームページは、
http://www.doujidaisya.co.jp/


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