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浜田山通信№3 [アーカイブ]

 エディオン撤退                      ジャーナリスト  野村勝美

 「神は細部に宿り給う」という。浜田山は広い東京、日本、アジア、世界から見れば実に細部だ。井伏鱒二『荻窪風土記』や大岡昇平の『成城だより』の名は誰でも知っている(でもないか)。しかし浜田山がどこにあるかは知らない人が絶対多い。だからここは間違いなく細部であり、細部観察者からすれば、世相を探るには格好の地であると勝手に思っている。

 されど私は細部探求者ではない。逆に極めて大ざっぱで、いいかげんな人間だ。ただ師の戸井田道造先生に世相史をまとめよう、君は浜田山の移り変わりを書けと指示されたのをずっと引きずっているだけである。もはや電車に乗ることはめったになく、近所を散歩するだけだからちょうどよい。

 5月末で井の頭通りの家電量販店エディオンが撤退した。このビルは1階がスーパーのサミットで、平成5年開店時は2,3階は大塚家具だった。エディオンはその後に入り、まだ3年ほどしかたっていない。1フロア500坪ほどの大きさの売り場で街の電器店はたまったものじゃない。私と奥さんが同郷だったT無線も修理や簡単な工事でがんばっていたが、昨年廃業した。

 最盛期家電メーカーの系列店が9店舗あったが、新宿、秋葉原の量販店ができた頃からみんなやめた。お隣のサンエーデンキは昭和28年、力道山のプロレス時代開業の草分けだったが、すぐ家の前に石丸電気の車がとまってテレビがおろされ、そのあとでアンテナの取り付けを頼まれ、頭にきて店をたたんだ。「屋根に上がって落ちても何の保証もないんですよ」と。その石丸電気もとっくにエディオンの傘下である。

 キリンビール倉庫をはさんだ西側に800坪ほどの空地がある。コジマ高井戸東店建築認可の看板。地上3階、地下1階、建築面積延べ5738㎡、20年8月着工、21年3月完成予定とある。エディオンは自分より大きいので撤退したと街のうわさだが、浜田山で1軒だけ残っていたアベ電気の社長によると、大きいところは大きいなりに大変なんですよ、コジマももう出ないでしょうという。環8の甲州街道寄りに最大手ヤマダ電機があって太刀打ちできないらしい。ダメとなるとさっさと引き上げる。少々の損切りは当たり前、エコポイント商戦など眼中にない。

 ところで「神は細部に宿る」を私は西洋の古諺と思っていた。実はユダヤ系のドイツ美術史研究家アビ・ヴァールブルクがボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』論で書いて有名になった。1929年(私の生まれた年)に63歳で死亡。


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